【R18】腹黒毒生徒会長様の世界樹クラス転移 〜持ち主によって様々に成長する世界樹の魔法の杖を与えられた高校生達〜

もう書かないって言ったよね?

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第一章

第1話 生徒会長と毒の杖

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「ここは……?」

 生徒会長は掛けている眼鏡の中心を指で持ち上げると、周囲をグルッと見回した。
 さっきまで間違いなく二年A組の教室の中にいた。
 今は見知らぬ森に囲まれた、何も置かれてない丸いグラウンドのような場所に立っている。
 春のような心地良い日差し、爽やかな空気、静寂な空間は東京にはあまりない環境だ。

「おい、何だよここは? 何でこんな所にいるだよ!」
「転移したんだよ! さっき教室の中に魔法陣みたいなのが浮かび上がっただろう! 俺達、異世界に連れて来られたんだよ!」
「えっー! そんなの嫌よ! 私、用事があるんだから帰してよ!」

 ……転移、異世界?
 この状況にクラスメイトは興奮する者と混乱する者に分かれている。
 よくは知らないが、転移とは別世界に召喚されて、無能が凄い力を与えられるという妄想話だったと聞いた事がある。
 俺にはまったく関係ない話だが、正直今の状況は理解できない。

「皆さん、落ち着いてください! 落ち着いてください! まずは警察を呼びましょう。これはきっと何かの事件に巻き込まれたんです。催眠ガスを嗅がされて眠っている間に移動させられたんです!」

 金切り声を上げて、三流大学出の現国のババア教師が、生徒を必死に落ち着かせようとしている。
 生徒二十八人、教師一人、ポケットのスマホは圏外と表示されている。
「まずはお前が落ち着けよ」と言いたい。

「生徒会長、私達、どうなるんですか?」

 女子三人組が不安そうな顔でやって来た。
「そんな事分かるわけがない。少しは自分の頭で考えろ」と言いたい。
 だが、いつものように爽やかな作り笑いを浮かべると、安心する言葉を並べた。

「大丈夫だよ、佐藤さん。一人じゃないんだから、皆んなで力を合わせれば何とかなるよ」
「そうですよね! でも、携帯が圏外になっているから、助けは呼べないんですよね?」
「そうみたいだね。俺の携帯も確かめたけど駄目だった。長谷川さんと高橋さんもそうなの?」
「うん、私達も圏外だった。ほら」

 長い茶髪をポニーテールヘアにしている佐藤が、圏外と表示されたスマホを見せてきた。
 俺のスマホを見せると、長い黒髪の長谷川と高橋にも聞いた。
 俺の中では、この三人組を長髪三姉妹と呼んでいる。いつも三人で行動しているからだ。
 二人はスカートからスマホを取り出すと見せてきた。どちらも圏外と表示されている。

「本当だね。ありがとう、三人のお陰で助かったよ。これで助けが呼べないのは分かったから、次の行動を決められるね。一歩前進かな?」

 スマホをズボンのポケットに仕舞うと三人に向かって微笑んだ。
 助けを呼べない最悪な状況だが、こっちの方がいい。負の感情は伝染しやすい。
 特に恐怖や混乱で集団パニック状態になられると面倒だ。

「もぉー、生徒会長、お気楽過ぎだよ。軽い遭難だよ」
「そうかな? キャンプか、デートだと思えば楽しいと思うけど?」
「えっー、キャンプ道具無いよぉ」
「そこは自給自足だよ。まぁ、すぐ近くに街があったら、すぐに終わってしまうけどね」

 爽やかな作り笑いを崩さずに、どうでもいい話で時間を稼ぐ。
 現在地は分からない。飲み水と食料は無い。着ている服は紺色のブレザー制服とネクタイ。
 靴は上履き。手持ちの物はスマホと財布の中のお金とカードぐらいだ。
 ここが本当に異世界なら金とカードは使えない。状況は最悪だ。

 全員で動いた方が良いのか、少数精鋭で動いた方が良いのか正直分からない。
 そんな的確な判断が出来ない状況下で、静かな声が頭の中に突然聞こえてきた。

『ようこそ異世界の少年少女達よ。私は世界樹と呼ばれる存在です……』
「えっ? 何、この声?」
「馬鹿、静かにしろ! 神様の声だよ!」
「えっ、本当⁉︎ 神様、お願いします! 私達を帰してください!」

 謎の女の声に女達は動揺している。逆に男達は興奮している。
 男達は声が聞こえないと女達を静かにさせようとするが、女達は帰して欲しいとお願いしている。
 だけど無駄なようだ。世界樹と呼ばれる存在は、録音された声のように一方的に話している。

『この世界には魔物と呼ばれる凶悪な生物が満ちています。あなた達一人一人に私の枝から作られた魔法の杖を与えます。倒した魔物から力を吸い取り成長する杖です。持ち主以外には使えず、持ち主によって千差万別に変化する杖です。あなた達の力でこの世界をどうか救ってください……』

 ……これで終わりか?
 政治家並みに説明不足だが終わりらしい。
 胸の高さに長さ三十五センチの指揮棒のような白い杖が縦向きに浮いている。
 明らかに手に取って欲しいと言っているようだが、得体の知れない物を握る馬鹿はいない。
 命知らずの男達が次々に握っているから少し様子を見るか。

「おお! 色が茶色に変わったぞ!」
「嘘だろう⁉︎ 俺のは白いままだぞ!」
「俺も白いままだ! 色が白いと使えないのかよ!」

 杖を握っても身体に異常は現れないようだが、人によって杖の色が変化している。
 騒いでいる男達のほとんどが白いままなので、色が変わる方が珍しいようだ。
 男達十三人の中で色が変わったのは、たった二人だけだった。

 ……そろそろ様子見は終わりにするか。
 触っても問題なさそうなので、杖を右手で掴んだ。白色だった杖が濃い紫色に染まっていく。
 頭の中にパッと『poison』という英単語が浮かんだ。ポイズンは毒を意味する。
 この杖に触れた相手を毒状態にするなら危険な杖だが、人間相手に確かめるわけにもいかない。
 とりあえず俺の身体には、杖を握っても悪影響はないようだ。

「あぁ、私も白色のままだよ」
「嘘ぉー! 私が白なの⁉︎」
「これって、白だとヤバイんじゃないの?」
「あっ、中川先生の杖は赤色になってる!」

 騒いでいる女達の杖を見た。やはり白色が圧倒的に多い。
 四十代のババア教師の杖が変わったので、杖が変化する法則がある程度分かったかもしれない。
 個性や考え方、意思や将来を強く持っている人間に反応するようだ。
 杖が茶色に変わった山田の親は小さな建設会社の社長だ。将来は跡を継ぐと話していた。

 ……魔物を倒して杖を強くする? ゾンビ映画のようなものか。
 状況が分かったので動いた方が良さそうだ。ここが異世界なのは分かった。動かなければ死ぬだけだ。
 体力があるうちに使える人間を連れて、水と食糧の確保、出来れば人里まで辿り着く。

七海ななみさん、ちょっと二人っきりで話したい事があるんだけどいいかな?」
「あっ、生徒会長。何ですか?」

 薄緑色の杖を持った七海しずくに声をかけた。黒髪のセミロングヘアを後頭部で団子状に纏めている。
 活発な明るい性格で、クラスの女子のムードメーカーの一人でもある。
 他にも色が変化した杖を持っている女子はいるが、予想通りなら他は要らない。
 七海は野球部のマネージャーをしていて、母親は看護師をしている。
 高校卒業後は看護学校に行くと話していた。

「杖の事で相談があるんだ。ちょっと危険かもしれないから、皆んなから少し離れたいんだけどいいかな?」
「はい、分かりました」

 紫色の杖を見せて、それらしい答えを言うと、すぐに七海は納得してくれた。
 けれども森の中に入ろとすると、女子の一人に「何処に行くの?」と聞かれてしまった。
「すぐに戻るよ」と言って、笑顔で誤魔化しておく。トイレだと誤解してくれるだろう。

 森の中は乾いた薄茶色の地面で平坦で歩きやすい。
 樹木は尖った針葉樹で落ち葉が少ないのが少し気になる。整備された公園のようだ。

「杖を持った時に何か英単語のようなものが頭に浮かばなかったかな?」
「えーっと、はい、『recovery』って浮かびました」

 森の中を進みながら、一歩後ろを歩く七海に聞いた。すぐに返事が返ってきた。
 リカバリーは回復や治癒を意味する。ほぼ予想通りの答えで、欲しかった能力だ。

「そう。ちょっと杖を貸してもらってもいいかな?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう、七海さん。綺麗な薄緑色だね」

 右手を伸ばして貸して欲しいとお願いする。七海はすぐに杖を渡してくれた。
 クラスメイトというだけで警戒心が無さ過ぎる。お礼を言って微笑んだ。
 ……これで武器は取り上げた。もう抵抗は出来ない。

「七海、パンツを脱ぐんだ」
「えっ?」

 振り返ると真っ直ぐに七海を見て、紫色の杖の先端を向けて命令した。
 七海は呆気に取られた顔をしている。何を言われたのか理解できていない顔だ。
 だから笑顔を消して、もう一度言った。

「七海、パンツを脱ぐんだ」
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