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第10話 カッコ良さ2割増し

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「ここですじゃ。町の守備隊の兵士様にも犯人探しをお願いしましたが、まったくの手掛かり無しで、未だに犯人は捕まっておりません」

 村長さんに連れられて、私達は食糧倉庫にやって来ました。中は冷んやりと涼しく、何か特別な暑さ対策を施しているようです。もしかすると、建物を土で埋めているからでしょうか?

「出入り口は1つだけですか…」

「はい、その通りですじゃ。だからこそ、他所者が倉庫に侵入しようものなら、村人の誰かが気づくはずですじゃ」

 やる気が無いご主人様は建物に入ったそうそうに冷たい床の上で寝転んでいます。元々、ご主人様の頭脳は当てにしていません。ここは私の頭の中の人工知能に頼るしかありません。

(出入り口は1つ、村には他所者は侵入していない……だとしたら、内部の犯行と見るのが自然の流れですね)

 そうなると、守備隊の兵士さんが実際に犯人を見つけられなかった可能性も低いかもしれません。

 村人の誰かが犯人ならば、犯人を捕まえるよりも、『これからは食糧泥棒に気をつけるように』と注意した方が、『他にも犯人が居ないだろうか?』と村人同士で疑心暗鬼にならずに済みそうです。

「なぁ、内部の犯行じゃないのか? 出入り口1つで侵入者がいないなら、村人が犯人だよ。倉庫の見張りを2、3人拷問すれば直ぐに吐いてくれるよ」

 余計な事を余計な人が言います。仕方ないので今すぐにトウモロコシを上と下の口に突っ込んで大人しくしてもらうしかありません。

「そ、そ、そ、そんな村人はこの村には1人もいませんじゃ! 村人全員が皆んな、丹精込めて野菜を作っていますじゃ‼︎ お互いにその苦労を知っている村人の仲間が、泥棒なんて愚かな事をするなんて考えられませんじゃーーーああ‼︎‼︎‼︎」

 ご主人様の言葉を聞いた瞬間に、村長さんはブルブルと怒りに震えながら、持っていた杖を床に叩きつけました。バキィっと折れた杖の先端が寝っ転がっていたご主人様の頭上を越えて飛んで行きました。

「はぁ…はぁ…そんな村人は1人もおり、おり、おりませんじゃ!」

 このまま興奮した村長さんを放置すれば、ご主人様が畑の中に逆さまに埋められてしまいそうです。何とかその前に村長さんを落ち着かせるか、ご主人様に肥溜の中で土下座してもらうしかありません。

「ご主人様…」

 私は急いでご主人様に土下座させようと向かいました。けれども、その前にご主人様は起き上がって何やら訳の分からない事を村長さんに向かって言い始めました。

「村長さん、俺はあんたのその言葉が聞きたかったんだよ。俺もこの村の人が犯人だなんて、これっぽっちも思ってねぇよ。守備隊の奴らにそう言われて悔しかったんだろう? 安心しな。俺らが絶対に犯人見つけやるからよ」

「あっ、あっ、冒険者様……ありがとうございます! ありがとうございますじゃ~!」

(これは一体どういう事でしょうか?)

 村長さんが泣き崩れています。ご主人様の言葉の何処に感動するポイントがあるのか詳しく教えて欲しいです。

「おい、ロボ子! 行くぞ!」

「ご主人様、行くとは何処に行くんですか?」

「はっ、決まっているだろう。犯人を捕まえに行くんだよ」

「そんな⁉︎ ご主人様はもう犯人が分かったんですか‼︎」

 信じられません! ご主人様のような知能指数よりもエロ指数が段違いに高い人間に犯人が分かるなんてショックです。

「当たり前だろう。おっと、俺とした事が、2人で行くと怪しまれる。逃げられると厄介だ。念の為にスペア○○○トを渡しておいてくれ」

 ご主人様に言われた通りにスペア○○○トを渡して、私は村の外で万が一、ご主人様が犯人に逃げられた時のサポートをします。

「ご主人様、相手は泥棒です。くれぐれもお気をつけください」

「分かってる。ロボ子も気をつけるんだぞ! 犯人が5人だけとは限らないんだからな」

「5人もいるんですか⁉︎」

「ああ、少なく見積もってもな。だが、安心しろ。俺には名刀○○丸が付いている。泥棒なんて相手じゃねぇよ」

 今日のご主人様は少しカッコいいです。男は仕事に中に生き甲斐を求めると聞いた事があります。仕事中のご主人様はカッコ良さが2割増しです。

(ご主人様、ご武運を!)

 ❇︎
 

 

 

 

 

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