【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第十三話★ 心の足枷

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「なるほど」

 小石を拾っては輪ゴムで挟んで、引っ張って発射した。前に飛んだり、真下に飛んだりと、飛ぶ方向は安定しない。考えてみれば当たり前の結果だ。いきなり百発百中とはいかない。動かない的に当てるのにも、それなりの練習が必要だ。

 でも、それだけではないようだ。持ち手が安定していないし、輪ゴムも不安定で、威力が分散しているような感じもする。小石もなんでもいい訳じゃないと思う。そもそも幅広の輪ゴムが手に入ったのだ。森の中に落ちているY字の頑丈な枝を手にいれれば、輪ゴムを固定すればいい。

「……いや、これでは本末転倒か。鳥を撃ち殺したい訳じゃないんだ。鳥を捕まえられれば、方法は何でもいいんだ」

 左手で自分の頭を叩きながら、くだらない考えを追い出した。当たらないスリングショットに、こだわり過ぎれば、それだけ時間とチャンスを無駄にしてしまう。小石を真っ直ぐに飛ばす練習をするよりは、鳥籠の罠を作った方がマシだ。

「とりあえず今日はもう寝た方がいい」

 やっぱり寝不足と疲労が溜まっているようだ。冷静じゃない頭で何を考えても上手くはいかない。道具を洞窟の中に片付けると、テントの中の寝袋に入って眠る事にした。すぐに目頭が熱くなっていく。頭の中に心地良い睡魔が広がっていく。これなら直ぐに眠れそうだ。

 ・
 ・
 ・

「……」

 目が覚めたのは午前3時を過ぎた頃だった。もう少し眠れば空も明るくなる。ガサゴソという何かが動く音に、鳥の鳴き声が微かに聞こえる。家の中なら、ゴキブリでもいるのだろうか……ぐらいにしか思わない。けれども、ここは森の中だ。生物の対象が多過ぎて当てるのは難しい。
 
 洞窟の中は真っ暗闇だ。目を閉じても、閉じなくても、見える世界は変わらない。暗闇の中に正体不明の何かがいるのに、私は恐怖を感じていない。感じなくなっている。これは慣れだ。
 慣れとは常識だ。この寝床は暗闇で何も見えないのが当たり前で、得体の知れない昆虫や生物が動いているのが当たり前なんだ。

「今、懐中電灯の明かりをつければ、目の前に怪物の顔が浮かび上がるかもしれないな」

 幽霊に怪物……そんな存在はいないかもしれない。でも、いるかもしれない。

 おそらく孤独と恐怖を感じるようになったら終わりだ。ガサゴソという何者かの存在が私を孤独や恐怖から遠去けている。危険な洞窟には誰も入ったりはしない。それは人間も昆虫も一緒のはずだ。何かがいるという事は、そこは安全だという事だ。

 私はいつの間にか、この森の住人達を友人や家族、仲間と思うようになっているのではないだろうか?

 森の生物を私は食べる。私が死ねば、森の生物が私を食べる。彼らとはそういう対等の関係なんだと思う。それが本物の自然で、それが本当に対等な関係なんだろう。

 でも、日本では弱者は強者に食べられ続ける存在でしかない。文明社会は不自然という格差で回り続けている。強者が絶対に弱者に食べられないように仕組まれた不自然な世界だ。そこには対等という言葉は存在しない。

 身体に鎖が繋がれていなくても、心に鎖が繋がれていれば、それは奴隷と同じだ。

「私は今……やっと心の足枷を外せたのかもしれないな」

 考えるのをやめると目蓋を閉じた。もう一眠りした方が良さそうだ。

 

 
 

 

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