【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第四十話☆ 神林慎吾=相模陽平

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 浜松警察署は松島麻未の捜索願いを受理すると、山下美聡と一緒にマンションに行った。
 そして、神林慎吾と名乗る人物から美聡が受け取った福沢諭吉から指紋を、防犯カメラから神林と旅行鞄を持った麻未が一緒に出掛ける映像を入手した。

「この神林とかいう男、松島麻未の郵便ポストに財布を入れてるよな?」
「ああ、その後、しばらくしてから女と一緒に出て来ている。そして、郵便ポストを開けさせて財布を取り出している。この後に松島麻未は持っていた小さな鞄を大きめの旅行鞄に持ち変えて出て行きている。これが神林の誘い出す手だったんだろう」

 ストーカーやDV(家庭内暴力)などの事件を担当している人身安全対策課の警察官二人が、防犯カメラの映像を見ています。
 そこには郵便ポストから出て来た財布を、神林に何度も頭を下げて返している麻未の姿が映っていました。神林が郵便ポストに入れたのに麻未が謝るのは明らかに不自然な行動でした。

「100万円近くの現金を持っていたんだろ? だったら財布を盗まれた、無くなったとか言って、松島麻未の部屋に行ったんだろう。それなら、山下美聡の部屋が物色されていた理由になる。おそらく脅迫して一緒に出掛けたんだろう。それなら松島麻未から送られて来たメールの内容にも説明がいく」
「えっ…と、反省するまで帰らないか……問題は事件性があるかないかになるが、騙して松島麻未と連れ出して何処に行くかだな。その辺をブラブラ旅行して帰って来るかもしれないんだろ? 今のところは殺人でも誘拐でもないんだ。それに家の地下室とかに閉じ込められていたら見つけきれないぞ」

 神林慎吾という名前は偽名。毛髪、指紋は前科者リストとは一致しない。美聡の部屋から毛髪は採取できたものの、避妊具に残っていた神林の体液は燃えるゴミに出されてしまった後だった。手掛かりは顔写真と指紋、毛髪だけ……あとは聞き込みで二人が何処に向かったか、おおよその見当をつけるだけです。

「山下美聡の話では、神林は現金だけで、身分証や携帯電話は持っていなかったらしい。投資家で三千円ほどの資産を持ち、身体は細く鍛えられていて、三時間近くもセックスしまくったそうだ。そんな投資家がいるか? どこかの組員が盗んだ財布の金の分だけ、松島麻未の身体で払わせようとしているんじゃないのか? この顔なら月に三百万は稼げるんじゃないのか?」

 松島麻未の姿がプリントさせている捜査資料を見て言います。日焼けする前の色白の顔写真ですが、今時のアイドルのような可愛い顔をしています。

「風俗店かアダルト動画か……今ならネットで確かにそういう事も個人で稼げる時代だからな。だが……配信される個人投稿のアダルト動画の中から、松島麻未を探し出すなんて無理に近い」
「画像検索ソフトでコンピューターに任せれば人員はほとんど必要ないんじゃないのか?」
「それも顔にモザイク加工されていたら難しいだろう。とりあえず、マル棒と署内の警察官に、この神林慎吾という男を知らないか聞いてみるしかないだろう。女を物色しているなら、町の何処かで一度ぐらいは見かけているはずだ」

 今のところ出来る事は、聞き込みによる二人の足取りを調べる事と、神林慎吾に声をかけられた海水浴場を調べる事だけです。もしかすると、その海水浴場にまた神林慎吾が現れる可能性があります。
 でも、その必要もないぐらいに神林慎吾の正体はすぐに判明しました。捜査三課に神林慎吾の顔写真が映った捜査資料を持って行くと、複数の捜査員から相模陽平の名前が出てきました。
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