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第2章
第50話⑧プロットポイント②
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棘のような体内を破壊しながら、上を目指して突き進んでいく。
全身を刃で切られ、服を切り刻まれ、折れた刃が身体に突き刺さる。
一つ一つ抜いている時間はない。
抜いたところで新しい刃が刺さるだけだ。
「あ、あれは……?」
どうやら角の生えた頭まで登頂する必要はないらしい。
体内に赤く輝く光が見えた。ゴーレムと同じなら【魔法石】だ。
あれを壊せば、ゴーレムなら倒せる。
「ゔがあああ‼︎」
上ではなく、赤い光を目指して突き進んだ。
血を流し過ぎた所為で幻が見えているだけなのかもしれない。
それでも見えるものは見えてしまう。偽りの希望でも見えたのなら信じたい。
「はぁはぁ‼︎ あと少しだ‼︎」
目蓋に包まれた瞳のような、楕円形の真紅の魔法石が目の前に現れた。
あと一撃で倒せる距離だ。
血だらけの右拳を包み込む紫の輝きが、俺の覚悟に反応して、さらに強く輝いた。
その拳を全力で前に向かって突き出した。
「壊れろおおお‼︎」
『フガアアアッツ……‼︎』
拳に貫かれた真紅の瞳が呆気なく砕け散った。
こんなに苦労したのに、氷の塊を砕くように簡単に砕け散った。
「ははっ。倒したよ、リラ……」
安堵した瞬間、緊張していた身体から力が抜け始めた。
身体に突き刺さっていた折れた刃達が次々に消えていく。
刃達が押さえていた血が傷口から溢れてきた。
俺の身体を支えていた周囲の武器達も消えていく。
今、ウェポンキメラのどの辺にいるのか分からない。
でも、頑張って上に登ったから高そうだ。
上手く着地しないと死ぬかもしれない。
着地する力が残っているなら頑張らないと……
「くっ……」
思ったよりは低かった。ウェポンキメラの上半身のへその位置ぐらいだった。
消えていく武器達を雲を突き抜けるように落ちていく。
このまま地面に叩きつけられても死にはしないだろう。
無傷の状態だったら、自信を持ってそう言えた。
「###‼︎」
「うっ……リラぁ……?」
リラの声が聞こえた。
着地を諦めて閉じていた目を開くと、必死に走ってくるリラの姿が見えた。
落ちてくる俺を受け止めてくれるみたいだ。
「ぐううっ‼︎ お、重っ‼︎」
「ごめん……」
リラのお陰で地面との激突は避けられた。
両手で受け止めると、地面に俺を優しく寝かせてくれた。
「もぉー、馬鹿ぁ‼︎ 死んじゃったと思ったんだからねえ‼︎」
「ごめん……俺も死ぬかと思ったけど、リラがいてくれたから倒せたよ。ありがとう」
俺なんかの為にリラが泣いている。
泣かせてしまったのに、嬉しい気持ちが満ちていく。
やっぱり俺は酷い男だ。
「ううん、私は何もしてない。###が頑張っただけ」
「違うよ。リラのお陰だよ。男は好きな女の子の為なら無敵になれるんだ。リラがいてくれなければ俺はとっくに死んでいる。だから、リラ……ありがと……」
「ちょっ、ちょっと⁉︎ だ、駄目⁉︎ 起きて‼︎ 死なないって言ったでしょ‼︎」
駄目だ。目蓋がどんどん重たくなっていく。
リラの声がどんどん小さくなっていく。
こんな最後だけど、悪くはない人生だったな。
【封印されし古代兵器=ジェノサイドキュラスが倒されました】
【限定職『暗黒騎士』を獲得しました】
【暗黒騎士のスキル『暗黒』『生命力吸収』『影分身』を獲得しました】
【基本職『僧侶』が上級職『達人僧侶』になりました】
【僧侶のスキル『ヒール』が『ウルトラヒール』に進化しました】
【達人僧侶のスキル『神秘の守り』『アンチカース』『アンチダウン』を獲得しました】
頭の中に声ではない、何かが溢れてきた。
前から知っていたものを思い出すような、理解できなかった事が急に理解できるようになった……
そんな不思議な感覚だ。
ずっと前にも同じような経験をした事がある。
あれは妹と初めてダンジョンに入った時だ。
職業を獲得したあの日も同じように突然、僧侶の力が使えると頭が理解した。
そして、実際に使えるようになった。そう、あの日と同じだ。
「ぉ……お……起きて!」
「うっ、くっ……」
急に目蓋が軽くなった。ゆっくり開けると、顔に大量の液体がかけられていた。
「黄金温水……?」
もちろんそんなわけない。傷口が塞がっていくのが分かる。
普通に【回復薬】をぶっかけられているだけだ。
「コラッ! 勝手に死ぬんじゃないわよ! 馬車に帰ったらエッチするんでしょ! 私とエッチしている時しか死なないんでしょ! だったら死なないでよ!」
リラが涙と一緒に回復薬を次々に空瓶にして、全身にかけ続けている。
早く起きないと全部使ってしまいそうだ。
少し痛いけど、ゆっくり起き上がって言った。
「リラ、もういいよ。もう大丈夫だから」
「駄目! 寝てて!」
「いや、本当に大丈夫だから」
これだけかければ、重傷も軽傷になる。
リラが心配して無理矢理寝かせようとするけど……
見てこれ。包丁で指切った程度の傷だよ。
ヒール使わなくても、舐めて治せるレベルだよ。
全身を刃で切られ、服を切り刻まれ、折れた刃が身体に突き刺さる。
一つ一つ抜いている時間はない。
抜いたところで新しい刃が刺さるだけだ。
「あ、あれは……?」
どうやら角の生えた頭まで登頂する必要はないらしい。
体内に赤く輝く光が見えた。ゴーレムと同じなら【魔法石】だ。
あれを壊せば、ゴーレムなら倒せる。
「ゔがあああ‼︎」
上ではなく、赤い光を目指して突き進んだ。
血を流し過ぎた所為で幻が見えているだけなのかもしれない。
それでも見えるものは見えてしまう。偽りの希望でも見えたのなら信じたい。
「はぁはぁ‼︎ あと少しだ‼︎」
目蓋に包まれた瞳のような、楕円形の真紅の魔法石が目の前に現れた。
あと一撃で倒せる距離だ。
血だらけの右拳を包み込む紫の輝きが、俺の覚悟に反応して、さらに強く輝いた。
その拳を全力で前に向かって突き出した。
「壊れろおおお‼︎」
『フガアアアッツ……‼︎』
拳に貫かれた真紅の瞳が呆気なく砕け散った。
こんなに苦労したのに、氷の塊を砕くように簡単に砕け散った。
「ははっ。倒したよ、リラ……」
安堵した瞬間、緊張していた身体から力が抜け始めた。
身体に突き刺さっていた折れた刃達が次々に消えていく。
刃達が押さえていた血が傷口から溢れてきた。
俺の身体を支えていた周囲の武器達も消えていく。
今、ウェポンキメラのどの辺にいるのか分からない。
でも、頑張って上に登ったから高そうだ。
上手く着地しないと死ぬかもしれない。
着地する力が残っているなら頑張らないと……
「くっ……」
思ったよりは低かった。ウェポンキメラの上半身のへその位置ぐらいだった。
消えていく武器達を雲を突き抜けるように落ちていく。
このまま地面に叩きつけられても死にはしないだろう。
無傷の状態だったら、自信を持ってそう言えた。
「###‼︎」
「うっ……リラぁ……?」
リラの声が聞こえた。
着地を諦めて閉じていた目を開くと、必死に走ってくるリラの姿が見えた。
落ちてくる俺を受け止めてくれるみたいだ。
「ぐううっ‼︎ お、重っ‼︎」
「ごめん……」
リラのお陰で地面との激突は避けられた。
両手で受け止めると、地面に俺を優しく寝かせてくれた。
「もぉー、馬鹿ぁ‼︎ 死んじゃったと思ったんだからねえ‼︎」
「ごめん……俺も死ぬかと思ったけど、リラがいてくれたから倒せたよ。ありがとう」
俺なんかの為にリラが泣いている。
泣かせてしまったのに、嬉しい気持ちが満ちていく。
やっぱり俺は酷い男だ。
「ううん、私は何もしてない。###が頑張っただけ」
「違うよ。リラのお陰だよ。男は好きな女の子の為なら無敵になれるんだ。リラがいてくれなければ俺はとっくに死んでいる。だから、リラ……ありがと……」
「ちょっ、ちょっと⁉︎ だ、駄目⁉︎ 起きて‼︎ 死なないって言ったでしょ‼︎」
駄目だ。目蓋がどんどん重たくなっていく。
リラの声がどんどん小さくなっていく。
こんな最後だけど、悪くはない人生だったな。
【封印されし古代兵器=ジェノサイドキュラスが倒されました】
【限定職『暗黒騎士』を獲得しました】
【暗黒騎士のスキル『暗黒』『生命力吸収』『影分身』を獲得しました】
【基本職『僧侶』が上級職『達人僧侶』になりました】
【僧侶のスキル『ヒール』が『ウルトラヒール』に進化しました】
【達人僧侶のスキル『神秘の守り』『アンチカース』『アンチダウン』を獲得しました】
頭の中に声ではない、何かが溢れてきた。
前から知っていたものを思い出すような、理解できなかった事が急に理解できるようになった……
そんな不思議な感覚だ。
ずっと前にも同じような経験をした事がある。
あれは妹と初めてダンジョンに入った時だ。
職業を獲得したあの日も同じように突然、僧侶の力が使えると頭が理解した。
そして、実際に使えるようになった。そう、あの日と同じだ。
「ぉ……お……起きて!」
「うっ、くっ……」
急に目蓋が軽くなった。ゆっくり開けると、顔に大量の液体がかけられていた。
「黄金温水……?」
もちろんそんなわけない。傷口が塞がっていくのが分かる。
普通に【回復薬】をぶっかけられているだけだ。
「コラッ! 勝手に死ぬんじゃないわよ! 馬車に帰ったらエッチするんでしょ! 私とエッチしている時しか死なないんでしょ! だったら死なないでよ!」
リラが涙と一緒に回復薬を次々に空瓶にして、全身にかけ続けている。
早く起きないと全部使ってしまいそうだ。
少し痛いけど、ゆっくり起き上がって言った。
「リラ、もういいよ。もう大丈夫だから」
「駄目! 寝てて!」
「いや、本当に大丈夫だから」
これだけかければ、重傷も軽傷になる。
リラが心配して無理矢理寝かせようとするけど……
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ヒール使わなくても、舐めて治せるレベルだよ。
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