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第3章
第80話⑤ピンチポイント①
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「どこだ、どこにある!」
見て探すんじゃない。感じるんだ。一番魔力が強い場所を探せばいいだけだ。
僧侶は魔法系の職業だ。戦士系なら分からない魔力を敏感に感じ取れるはずだ。
『ガフッ! ボフゥ、ボフゥ!』
「くぅっ!」とロックサイの突進を躱し続ける。
硬い岩盤の地面には、小さな川が血管のように無数に流れている。
パシャパシャと避けるたびに水音が鳴っている。
「やっぱり誰かいるぞ!」
そして、躱し続けていると大勢の水音が近づいてきた。
「待ってろ、今助けてやる!」
洞窟の奥の方から冒険者が五人走ってきた。やっぱり全員男だ。
俺が苦戦していると思ったのか助けてくれるらしい。
余計なお節介だけど、ここでモンスターの取り合いをするほど馬鹿じゃない。
トン娘に騙された冒険者達の実力を見させてもらう。
「オラッ、死ねや!」
『プギャ……‼︎』
大柄な男戦士が振り下ろした巨大ハンマーの一撃で、ロックサイの頭が砕け散った。
俺よりも小さいけど、見た目通りに力はあるようだ。
『ギギギィ……』
けれども、これで終わりじゃない。頭を失っても、四本の脚でロックサイが立ち上がった。
非生物系モンスターは動物とは違う。頭を砕いても動ける。
動けなくするには心臓の魔法石を破壊するしかない。
「しぶといんだよ。一発で大人しく死んでろや!」
『プギャ……‼︎』
だけど、追加の一撃を背中に振り下ろされて、ついに倒れてしまった。
砕かれた胴体から壊れた魔法石が転がり出て、魔法石の赤い光が消えていった。
「あゔっ! テメェー、【歩く回復薬】じゃねえか⁉︎ 何でこんな所に一人って、また新しい女連れてやがる! 何でこんなクソ雑魚ばかりモテんだよ!」
「まあまあ、落ち着けよ。ほら、帰りなよ。ここは僧侶が来る場所じゃないよ」
俺は知らないけど、どっちも俺の事を知っているみたいだ。
一人は脳筋ハンマー戦士、もう一人の優しい口調で追い出そうとしている細身の男は多分魔法使いだ。
残念ながら俺もお仕事とプライベートの両方で来ている。
帰れと言われて、素直に帰れるわけがない。
「すみませんがそれは無理です。俺も調査の仕事で来ました」
「はあ? 何考えてんだよ、研究所は! こんなの戦力になんねえぞ!」
地図と証明書を二人に見せると、ハンマーの方が不満を隠そうともせず言ってきた。
さらに、
「おい、そっちの姉ちゃん! あんたは戦えるのか!」
とエルシア様にも乱暴な口調で聞いている。
この方はいてくれるだけで良い。そんな事も分からないとは大馬鹿だ。
「すみません、私は全然弱くて戦えません」
「チッ、何でこんな二人寄越すんだよ!」
「ですが、役立つ情報を持っています。調査、あまり進んでないんですよね?」
そんな馬鹿にもエルシア様は慈愛のこもった笑みで応えている。
やはり女神様で間違いない。いや、天使様だ。俺の心を射抜いた愛の天使様だ。
「くっ、あのクソ爺の所為だよ。大量のモンスターの瓦礫や魔法石を集めても、何も反応しやがらない」
「それはそれですよ。現に旧市街地にモンスターがまったく出現しなくなったんですよ。トン爺さんの話が本当だという証拠です」
「どこかの馬鹿がモンスター倒し過ぎて、出なくなっただけだろ。放っておいたらまた出るようになるんだよ」
それなのにエルシア様の情報を無視して、トン爺さんの話で冒険者達が盛り上がり始めた。
クソ爺派とそうじゃない派がいるようだ。
そして、水色髪の白い服の細身魔法使いはそうじゃない派らしい。
「それで役立つ情報とは何ですか?」
盛り上がる冒険者達は気にせずに、エルシア様に聞いている。
「それはトン爺さんという方に直接お話しさせてもらいます。奥まで案内してもらっていいですか?」
「うーん、仕方ありませんね。分かりました、俺達に付いて来てください」
「ありがとうございます」
「チッ、面倒くせえな。話したらさっさと帰れよ。回復薬は間に合ってんだよ」
魔法使いとの話は済んだ。トン爺さんの所まで案内してくれるらしい。
短い黒髪の筋肉ムキムキ革鎧ハンマー戦士は納得してない顔だけど、しぶしぶ納得したみたいだ。
これで俺はモンスターの魔法石の魔力を落ち着いて探す事が出来る。
何とかトン爺さんに会うまでに、魔法石の位置を完璧に把握したい。
モンスターの魔法石の位置は一体ずつバラバラだから、ある場所を覚えるなんて無理だ。
案内する冒険者達が戦っている時間に魔力探知の練習をさせてもらう。
俺が役立つ男だと、エルシア様に認めてもらうにはこれしかない。
見て探すんじゃない。感じるんだ。一番魔力が強い場所を探せばいいだけだ。
僧侶は魔法系の職業だ。戦士系なら分からない魔力を敏感に感じ取れるはずだ。
『ガフッ! ボフゥ、ボフゥ!』
「くぅっ!」とロックサイの突進を躱し続ける。
硬い岩盤の地面には、小さな川が血管のように無数に流れている。
パシャパシャと避けるたびに水音が鳴っている。
「やっぱり誰かいるぞ!」
そして、躱し続けていると大勢の水音が近づいてきた。
「待ってろ、今助けてやる!」
洞窟の奥の方から冒険者が五人走ってきた。やっぱり全員男だ。
俺が苦戦していると思ったのか助けてくれるらしい。
余計なお節介だけど、ここでモンスターの取り合いをするほど馬鹿じゃない。
トン娘に騙された冒険者達の実力を見させてもらう。
「オラッ、死ねや!」
『プギャ……‼︎』
大柄な男戦士が振り下ろした巨大ハンマーの一撃で、ロックサイの頭が砕け散った。
俺よりも小さいけど、見た目通りに力はあるようだ。
『ギギギィ……』
けれども、これで終わりじゃない。頭を失っても、四本の脚でロックサイが立ち上がった。
非生物系モンスターは動物とは違う。頭を砕いても動ける。
動けなくするには心臓の魔法石を破壊するしかない。
「しぶといんだよ。一発で大人しく死んでろや!」
『プギャ……‼︎』
だけど、追加の一撃を背中に振り下ろされて、ついに倒れてしまった。
砕かれた胴体から壊れた魔法石が転がり出て、魔法石の赤い光が消えていった。
「あゔっ! テメェー、【歩く回復薬】じゃねえか⁉︎ 何でこんな所に一人って、また新しい女連れてやがる! 何でこんなクソ雑魚ばかりモテんだよ!」
「まあまあ、落ち着けよ。ほら、帰りなよ。ここは僧侶が来る場所じゃないよ」
俺は知らないけど、どっちも俺の事を知っているみたいだ。
一人は脳筋ハンマー戦士、もう一人の優しい口調で追い出そうとしている細身の男は多分魔法使いだ。
残念ながら俺もお仕事とプライベートの両方で来ている。
帰れと言われて、素直に帰れるわけがない。
「すみませんがそれは無理です。俺も調査の仕事で来ました」
「はあ? 何考えてんだよ、研究所は! こんなの戦力になんねえぞ!」
地図と証明書を二人に見せると、ハンマーの方が不満を隠そうともせず言ってきた。
さらに、
「おい、そっちの姉ちゃん! あんたは戦えるのか!」
とエルシア様にも乱暴な口調で聞いている。
この方はいてくれるだけで良い。そんな事も分からないとは大馬鹿だ。
「すみません、私は全然弱くて戦えません」
「チッ、何でこんな二人寄越すんだよ!」
「ですが、役立つ情報を持っています。調査、あまり進んでないんですよね?」
そんな馬鹿にもエルシア様は慈愛のこもった笑みで応えている。
やはり女神様で間違いない。いや、天使様だ。俺の心を射抜いた愛の天使様だ。
「くっ、あのクソ爺の所為だよ。大量のモンスターの瓦礫や魔法石を集めても、何も反応しやがらない」
「それはそれですよ。現に旧市街地にモンスターがまったく出現しなくなったんですよ。トン爺さんの話が本当だという証拠です」
「どこかの馬鹿がモンスター倒し過ぎて、出なくなっただけだろ。放っておいたらまた出るようになるんだよ」
それなのにエルシア様の情報を無視して、トン爺さんの話で冒険者達が盛り上がり始めた。
クソ爺派とそうじゃない派がいるようだ。
そして、水色髪の白い服の細身魔法使いはそうじゃない派らしい。
「それで役立つ情報とは何ですか?」
盛り上がる冒険者達は気にせずに、エルシア様に聞いている。
「それはトン爺さんという方に直接お話しさせてもらいます。奥まで案内してもらっていいですか?」
「うーん、仕方ありませんね。分かりました、俺達に付いて来てください」
「ありがとうございます」
「チッ、面倒くせえな。話したらさっさと帰れよ。回復薬は間に合ってんだよ」
魔法使いとの話は済んだ。トン爺さんの所まで案内してくれるらしい。
短い黒髪の筋肉ムキムキ革鎧ハンマー戦士は納得してない顔だけど、しぶしぶ納得したみたいだ。
これで俺はモンスターの魔法石の魔力を落ち着いて探す事が出来る。
何とかトン爺さんに会うまでに、魔法石の位置を完璧に把握したい。
モンスターの魔法石の位置は一体ずつバラバラだから、ある場所を覚えるなんて無理だ。
案内する冒険者達が戦っている時間に魔力探知の練習をさせてもらう。
俺が役立つ男だと、エルシア様に認めてもらうにはこれしかない。
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