異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

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第37話

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「まあ、いいさ。この程度の被害なら問題ないし」

 今まで遭った酷い目を思い返せば、クエスト一回分の被害額は安いものだ。
 それに喝上げされた訳じゃない。
 女の子の柔らかい手に握られながら、買い物できたんだ。
 むしろ被害でもない。低料金のお触りサービスを経験できたと感謝するべきだ。

「さてと、最後は食堂だけど……とりあえず、お金がないと食事も出来ないから、クエストに行くのが先かな」

 食堂への挨拶は、夜ご飯のついでにする事に決めた。
 食堂の女は地味な黒髪のお下げ女だ。
 おデブ高校生の時の僕だったら、相手をしてやってもいいレベルの女だけど、今の僕には絶対に釣り合わない女だ。
 優先順位はかなり低い女なので、後回しにする事に決めた。

「多分、これをタッチすればいいはずだ」

 異世界に戻る方法は聞いてないけど、神フォンの画面のホームをタッチすれば、森に戻れると思う。
 タンッとホームを軽くタッチすると、予想通り、すぐに身体が光に包まれていく。
 やっぱり正解だったみたいだ。数十秒後には森の中に戻れそうだ。

「あっ、武器は構えていた方がいいのか」

 森に転送される前に、女神様の注意事項を思い出した。
 目の前に魔物の群れが現れるとは思えないけど、油断しない方がいい。
 左腰の鞘から剣を抜くと、右手で持って、左手は前に突き出して、水魔法の発射体勢を取った。
 戦闘準備完了だ。どこからでも……かかって来たら駄目だけど、とりあえず来い。

 しばらく待っていると、身体がパァッと一際強く輝いた。
 素早く目を閉じて、光が収まるのを待った。
 数秒後には目蓋越しに見える光が徐々に収まり、耳には木の葉の騒めきが聞こえてきた。
 どうやら、転送完了のようだ。目を開けると森の中に僕は立っていた。

「ふぅー、周囲に敵影無しと」

 左手を下ろして、右手の剣を鞘に戻すと、神フォンのマップを開いて現在地を確認した。
 現在地は『ノイジーの森』と表示されている。
 紹介されたクエストの目的地と、町の出口が一緒だったのは、クエスト嬢のマニアが、町の出口を知っていたからだろう。
 もしかすると、ある程度の情報は、僕か、女神様と共有しているのかもしれない。

「ディア、出て来い」
『『ピィー!』』
「周囲を警戒して、僕に近づく魔物を攻撃しろ」
『『ピィー!』』

 牝鹿の魔物を二匹影から出すと、周囲を警戒させた。これで少しは安心して進める。
 予定では、神フォンのマップを使って、魔物の位置を確認して、一匹ずつ倒していく予定だ。
 蜂型の魔物がレベル12だったので、最低でもレベル13ぐらいにはなりたい。
 まずは友達にするならば、森の中に沢山いる蜂型魔物の虎蜂だ。

【名前=虎蜂。種族=蜂獣族。レベル=12。
 HP=3005/3005。MP=281/281。
 腕力=214。体力=188。知性=180。精神=76。
 重さ=軽い。移動速度=少し速い。経験値=16。換金エル=24。
 特技=『針飛ばし』。
 固有能力=『飛行』】

「あれ? 獲得経験値が見えている?」

 レベルの上限がアップした所為か、前に見た時は見えなかった、虎蜂の経験値と換金エルの数値が、見えるようになっていた。
 これなら魔物を倒してから、わざわざ確認する手間が省けて助かる。
 まあ、倒せば分かるような情報だから、そこまでの感動はないけど、経験値の量が多い魔物は強いはずだ。
 戦う前に魔物の危険度が分かると思って、女神様に感謝ぐらいはしておこう。

「まずはディア二匹だけで、虎蜂を倒せるか試してみるか」

 虎蜂は黄色と黒色の横縞模様の身体をしている大きな蜂だ。
 工事現場の三角コーンが、背中から四枚の羽を生やして飛び回っているような感じがする。
 多分、身体の色と凶暴な性格、首回りのフサフサした白い体毛が、虎をイメージさせるから、虎蜂と呼ばれている理由なんだと思う。

「行け。好きなように攻撃しろ」
『『ピィー!』』
『ビイイ? ビイイ!』

 周囲に他の魔物がいない事をしっかりと確認して、虎蜂一匹に牝鹿二匹を突撃させた。
 経験値は戦闘に参加している全員に入るのは分かっている。
 つまりは戦闘指示だけでも、僕に経験値が百パーセント入るという素晴らしい仕組みだ。
 それに初見の魔物相手に、勇敢に立ち向かうつもりはまったくない。

 特技の針飛ばしは、おそらくは虎蜂の尻尾に付いている巨大針を飛ばす技だ。
 ある程度は予想は出来ているけど、針が飛んで来る速さまでは分からない。
 物凄いスピードで飛んで来る回避不能の技だったら、対策が必要になる。
 ここは友達に犠牲になってもらうしかないでしょう。

『ピィー⁉︎ ピィー⁉︎』
『ビイイ‼︎』
『ピィーーッ⁉︎』
「それにしても……あちゃー! 空を飛ぶ相手には圧倒的に不利だな」

 牝鹿の方が移動速度は速いけど、上空の虎蜂には攻撃が全然届いていない。
 頑張って飛び跳ねているけど、あと二メートル程ジャンプ力が足りていない。
 それどころか飛んで来る蜂針が、身体にドスドス突き刺さって、そろそろ瀕死状態だ。
 牝鹿のHPは2333だから、針飛ばし四発で倒されてしまう。

「やっぱり飛行能力を持つ魔物は最低一匹は必要だな」

 相手が空中戦しかしないなら、遠距離攻撃を持っていないと倒す事は出来ない。
 体当たりしか攻撃手段を持っていない牝鹿では、虎蜂が地上に降りて来てくれないと勝負にならない。
 僕の水魔法なら、中距離攻撃は可能だし、五発命中させれば友達に出来る。
 この森の魔物は飛行系が多いし、クエストを受けてしまったし、後々の事を考えて、ここは僕が頑張るしかないようだ。

「〝叫べ、水の咆哮〟」

 虎蜂の背後を取ると、上空五メートルで停滞中の虎蜂に向かって、水の咆哮を発射した。

『ビイイ~~~~ビィ⁉︎』

 バシャーン‼︎ 水の咆哮が羽に激しく直撃すると、虎蜂は地面に向かって、真っ逆さまに墜落して行く。
 不意打ちボーナスか、それとも、『羽が濡れると力が出ないよぉ~』、なのか分からないけど、チャンス到来だ。墜落したばかりの虎蜂に総攻撃を開始した。

「今だ! 攻撃しろ!」
『『ピィー!』』

 素早く牝鹿二匹に攻撃命令を出して、僕も鞘から剣を抜いて突撃する。
 剣を装備した状態だと、攻撃力が139、魔法攻撃力が116アップするので、虎蜂の残りHPには注意が必要だ。ある程度、HPを大きく減らしたら、あとは小石で微調整するしかない。

『ビイイイ⁉︎ ビイイイ⁉︎』

 ドガァ‼︎ ドガァ‼︎ 水魔法と牝鹿二匹の頭突きを喰らって、虎蜂の残りHPは1490/3005まで減少した。スキルで友達に出来るのは、残りHPが300以下になってからだ。

「えっーと、僕の物理攻撃が682だから……」

 意外と倒さないように攻撃するのは難しい。
 頭の中でダメージ量を計算しているけど、戦闘というものは、そう計算通りには進まないものだ。
 牝鹿二匹の攻撃と小石の攻撃HPダメージ181では、残りHP337。少しダメージが足りない。
 水魔法攻撃二発ならば、残りHP172。
 剣による二連続攻撃ならば、残りHP126。
 剣と水魔法の一撃ずつなら、残りHP149になる。

 つまり計算では、虎蜂を友達にする鍵は僕しか持っていない事になる。
 つまりはいつもの、『お前トオルがやれよ』のパターンになる。

「お前達は下がっていろ! 僕がやる! うおおぉぉぉっ~~~‼︎」

 牝鹿二匹を下がらせると、僕は同級生達の逆らえない命令に従うように、剣先を右水平に構えて突撃した。

『ビ、ビ、ビイイィィィ~!』

 けれども、そんな時間を虎蜂は与えるつもりはないようだ。
 必死に身体を起き上がらせて、地面に立つと、羽を広げて飛ぼうとしている。
 でも、そんな時間を与えるつもりは僕もない。左手を突き出して、水の咆哮を発射した。

「〝叫べ、水の咆哮〟」

 真っ直ぐに回転する水柱の塊が、虎蜂の頭部に飛んでいく。

『ビイイイ⁉︎』

 バシャーン‼︎ 水の咆哮が直撃した虎蜂は、三メートルほど後方に吹き飛ばされた。
 走る速度は緩めない。跳ね飛ばされた虎蜂を追って、片刃曲剣の剣を振り上げ、振り下ろした。

「これで終わりだ! セィヤァ‼︎」
『ビイイイ⁉︎』

 ザァン‼︎ 立ち上がろうとしていた虎蜂の頭を、容赦なく鋼の刀身で叩き潰した。
 虎蜂は昆虫とは思えない寒気のする断末魔の絶叫を上げて、地面の上をジタバタとのたうち回っている。
 でも、安心してください。まだ死んでいませんよ。死ぬのは過労死するまで働いてもらった後です。

「お前の命はもう僕の物だ! スキル『魔物友達化』‼︎」

 素早く左手を虎蜂に向けて、勝利宣言と共に僕はスキルを発動させた。

『ビイイ⁉︎ ビイ、ビイ、ビイイイィィィ~~~‼︎』

 虎蜂の身体が激しく輝き始めた。
 最後の抵抗を見せようと、身体を動かそうとしているようだけど、無駄無駄だ。
 お前はもう僕の友達なんだ。
 スキルが発動したら、最後……誰も僕から逃げる事は出来ない。
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