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問題です。3時間に1回分裂するスライムを洞窟に閉じ込めて、18時間後に洞窟を訪れて、経験値とお金を荒稼ぎしようとした少年はどうなりますか?

第9話・楽して稼いだお金で、楽しく暮らす。そんな生活は間違いですか?

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 クロム少年のレベルは『20』、HPは『115』、攻撃力は『60』です。鋼の剣の攻撃力をプラスすれば、攻撃力は『105』になります。

「セイ! ヤァ! トォ!」と攻撃3回でキングスライムを倒せました。もうキングスライムも強敵ではありません。楽々倒せます。

 週末に友達の家に泊まりに行くと自宅を出発したクロム少年は、キングスライムが『259匹』まで増えた洞窟で1人で戦っていました。

 そして、スライム12匹がバラバラに散らばって、まだ洞窟に残っています。放置していると、またキングスライムが増えるので、増やすつもりがないのなら、倒した方が良さそうですね。

「1匹経験値『600』だから、レベルがドンドン上がるかも。そしたら、命中率が100%になるかも」

 レベルがアップすれば、《スキル・命中率増加+2》も強化される予感がします。まずはレベル『30』を目指して、キングスライム狩りの始まりです。

 ①スラ玉 ②薬草 ③ハズレ ④ハズレ ⑤スラ玉 ⑥薬草

「薬草以外にスラ玉? 何、コレ?」

《スラ玉》は、グニュグニュとした触り心地の青色のボールです。何の役にも立ちません。1個『35』ゴールドで売れるだけです。

 コロコロと黒いサイコロを振ると、『①』が出ました。とりあえず、出現した青色の柔らかいボールを拾って、アイテムポーチに入れました。やっぱり何も貰えないよりは、貰えた方が嬉しいのです。

 10匹、20匹、30匹と順調にキングスライムを倒し続けます。ほとんど通路に挟まって身動きが取れない状態のキングスライムを発見しました。

 こんな身動きが取れない状態のキングスライムを鋼の剣で攻撃しても、ダメージを与えられないのは摩訶不思議な現象です。まだ、サイコロを振って、当たりの目を出さないとダメージを与えられないのです。おかしな世界です。

「40匹目!」

 ちょうどキリがいい所でレベルアップです。クロム少年はたったの1時間ちょっとで、レベル『20→30』にアップしました。もうスライム程度の経験値じゃ、満足できない身体になりそうです。

「えっ~~と、《スキル・攻撃力増加+3》と《スキル・命中力増加+3》か。他にはないけど、基本攻撃力が『60→140』にアップしたのは、大きいよね。攻撃2回当てれば倒せるよ」

 ①縦斬り(HPダメージ185) ②縦斬り(HPダメージ185) ③ 縦斬り(HPダメージ185) ④ 縦斬り(HPダメージ185) ⑤空振り ⑥空振り

 これが現在のクロム少年の力です。圧倒的な力でキングスライムを倒せます。とりあえず、ゴロゴロと転がっているスライムは今は倒さずに放置です。倒すなら、キングスライムになってからです。

 もちろん、スライム1匹ずつを倒すのが面倒だからではなく、キングスライムにした方が効率も報酬もいいからです。

「たったの1時間ちょっとで、『6560ゴールド』だよ! もうマッサージ店を開くよりは、キングスライムを育てて、倒した方が儲かるよ!」

 簡単に計算したら時給『6560ゴールド』ですが、キングスライムが増えるには時間がかかります。1週間で増えたのは258匹です。全部倒したら、『4万2312ゴールド』ですが、週5日の勤務で計算すれば、日給『8462ゴールド』ぐらいのものです。

 まあ、週末に1度の勤務と考えると、かなり破格の収入にはなると思います。お父さんの給料の半分以上を楽して稼げる事実に、クロム少年の笑いは止まりそうにありません。

「ヒッヒッヒッ♬ 楽して月給16万ゴールドだよ。これは辞められませんなぁ~~」

 品のない笑い声です。これは立派な脱税です。犯罪です。捕まります。

 でも、バレなきゃいいのです。バレなきゃ捕まらないのです。クロム少年はこの秘密を誰にも知られないようにしようと、心に誓いました。

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「セイ! ヤァ!」と今は2回でキングスライムを倒しています。順調、順調です。この調子で、今度はレベル『40』を目指します。

 10匹、20匹、30匹、40匹、50匹と今度はちょっと時間がかかります。攻撃力が上がったので、倒せるまでの時間は5~10秒は短縮できたものの、それでも数が増えれば、時間はかかるものです。

 洞窟に到着したのは、人に見つからないように、夜にしました。本来ならば、そろそろ寝る時間ですが、今日は土曜日です。夜更かししても問題ありません。

「セイ! 98匹目!」

 レベルアップに必要な残り経験値を見れば、あと何匹倒せばいいか分かります。洞窟に入ってから、98匹目のキングスライムを倒しました。これで、レベル『40』です。

「《スキル・攻撃力増加+4》と《スキル・命中力増加+4》か………? でも、サイコロは①~⑥の目しかないから、《スキル・命中力増加》の上限は《+5》までのはずだよね。もしかして、レベルは『50』で終わりとか?」

 クロム少年はレベルの上限を調べてないので分かりません。普通に考えれば、レベル『100』が上限だと思いますが、この世界はレベルを上げる必要もないほど、豊かな世界です。大昔の資料は多分、残っていないでしょう。

「まあ、上げれば分かるよね。えっ~~と、次はこのまま必要な経験値の量が変わらないなら、次は74匹倒せばいいのか。流石に休まず、倒し続けるのは大変だよ」

 出現するアイテムも《薬草》と《スラ玉》だけです。レアは一度も現れません。やっぱり、《レジェンドレア》は特別な事だったようです。

 3時間連続で戦い続けて、疲れてきたものの、今回は準備万端です。栄養ドリンクにスナック菓子と、歩きながらも体力回復が出来ます。前回とは違うのです。

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「ヤァ!』と一撃でキングスライムを倒しました。攻撃力『345』は伊達だてじゃありません。HPも『215』と、キングスライムの攻撃も7回までは耐え切れます。ここまで上手く進むと、逆に怖いぐらいです。

 予想した74匹を目指して、10匹、20匹、40匹と倒し続けます。どのような結果が待っているのか、クロム少年は想像してはドキドキしています。凄い事が起きそうな予感がします。

「セイ! 74匹目だ!」とキングスライムを倒しました。まだまだ洞窟の中には『87匹』のキングスライムが残っています。全部倒しても、レベル『60』にはなれないでしょう。残念ながら、今回はレベル『50』で御預おあずけのようです。もちろん、レベル50が上限でない場合はです。

「《スキル・攻撃力増加+MAX》と《スキル・命中力増加+MAX》か。攻撃力は『620』で、攻撃が絶対に外れなくなったのか………んんっ~~~~、確かに凄いけど、何だか期待してたのとは、やっぱり違うかな」

 クロム少年が期待していたスキルは、《スキル・獲得ゴールド+1》とか、《スキル・獲得アイテム+1》とかです。正直言って、強くなっても出来る事は、モンスターをちょっとだけ早く倒す事ぐらいです。もっと他のスキルがよかったです。

 そうなのです。日常生活では、どんなに攻撃力が高くても、コンクリートブロックも破壊できません。ステータスは人間とモンスターとの戦闘以外では意味がないのです。

「とりあえず、残っているキングスライムを見つけて倒して、スライムは1匹ずつ別々の場所に移動させておこうかな」

 何という欲の皮が突っ張った、欲張りな子供なのでしょう。まだ、スライムを増やしてキングスライムを倒したいようです。今日、手に入れるだろう、4万ゴールドでは足りないようです。あまり欲をかくと、大変な目に遭いますよ。

「ヒッヒッヒ♬ 月給16万かぁ~。これだけあれば、1人暮らしどころか、恋人と同棲生活も可能だぞ。ついでにマッサージ店も開こうかなぁ~」

 何度も言いますが、資格が無ければ、マッサージ店は開けません。それに、15歳の高校生に同棲生活は早過ぎます。若さという勢いに任せて行動した結果、16歳でパパになるだけです。

「マミちゃん、ユキちゃん、カナメちゃんの誰と付き合うか迷うなぁ~♡」

 デレデレと鼻の下を伸ばして、最近告白して来た女子生徒達の顔と身体を思い出しています。きっと安アパートに2人で同棲して、夜のマッサージを同級生にやるつもりのようです。下衆の極みです! 天罰がくだるようにお祈りしましょう。




 
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