30 / 84
再七話 男も噂話が好きみたい
しおりを挟む
「金の事言うなら、弓矢から槍に変えろよ。矢代が勿体ねえだろ」
「馬鹿か。矢は俺が拾った木から作っているからタダなんだよ。テメェーこそ木の枝でも振り回してろ」
「馬鹿はテメェーだ。そんなので倒せるのはテメェーぐらいだ。矢なんか作る暇があったら身体鍛えてろ」
「……ヒョロガリのくせに。テメェーが鍛えてろ」
「はぁ? 今何ってった‼︎」
冒険者の無駄話は聞きたくないので、特に白熱している二人に話しかけた。
「あのぉ……まだ続きますか?」
「ゔゔあ‼︎ あっ⁉︎ おっとと悪かったな。えっーと……何だけ?」
話を中断されて赤髪剣士がめっちゃ睨みつけてきた。
だけど、私の顔を見て存在を思い出したみたいだ。
でも、何の話をしていたのかまでは思い出せないみたいだ。
やっぱり馬鹿と言う方が馬鹿という諺は本当なのかもしれない。
「魔力中毒の治し方だよ。さっきも言ったけど治し方は知らない。でも、関係あるかもしれない噂話を聞いた事があるぜ」
治し方を知らないなら別の人を探した方がいいけど、その別の人に心当たりがない。
青髪弓使いの噂話が参考になるかもしれない。
「それってどんな話ですか?」
一応聞いてみた。
「回復薬の新薬を作るっていう高額の仕事だ。要するに人体実験、薬の非検体だな。女なら年齢問わないという条件で、報酬は一日銀貨二枚。若い女を狙った人身売買だと思われていたんだが、それがどうも違うらしい。自分で作った薬を自分で飲むだけなんだ。あんたの話と一致するだろ?」
「ええ、まあ。そうですね……」
噂話を聞いて、ラナさんの話が嘘じゃないのは分かったけど。
それだけじゃ治せない。手掛かりゼロのままだ。
「その話なら俺もギルドで聞いた事がある。『魔力』の高いものを短期間に何度も大量摂取すると、身体から魔力が抜けずに定着するそうだ」
「ああ、あれだろ。それなら俺も知ってる。魔物の肉とか食べると、何日間も二日酔いみたいな症状が続くやつだろ。でも、なる奴とならない奴がいるんだよな。俺はなった事がねえから分かんねえけどよ」
青髪弓使いに続けと、斧男と赤髪剣士が知っている情報を話してくれた。
魔物と言えば森の殺人熊だ。あれの肉を食べるとヤバイらしい。
「確か『魔法耐性が低い』となるらしいぜ。耐性が高いとどんなに食べても平気らしい。なあ、その奥さんは何日ぐらいその仕事をしてたんだ?」
「えっと……短期間という事しか知らないです」
青髪弓使いに聞かれたけど、詳しい事は分からない。私も偽医者に聞いただけだ。
こんな事ならもっと偽医者を強めに訊問すればよかった。
「なるほどな。話を聞いた限りだと、耐性が低いのに無理したんだろうな。普通なら身体から魔力が抜けるのを待つんだろうけど、身体の奥深くで『魔石化』したのなら、治療は無理かもな」
「そうですか……」
よく分からない単語が何個も出てきて、ちんぷんかんぷんだ。
それでも分かった事がある。先輩冒険者に相談しても、結論は偽医者と一緒だった。
「まあ、そう落ち込むなって。『魔力当たり』なら、『魔力消し薬』があるぜ。大量に食べればきっと良くなるって!」
ガッカリしていると、赤髪剣士が明るい笑顔で励ましてきた。
風邪引いたら、風邪薬一杯飲めば早く治るって理屈はない。
やっぱり馬鹿だ。馬鹿だと魔力当たりにならないんだ。
「ルーク、適当な事言うんじゃない。本気にしたらどうする。お嬢さん、我々では力になれないようだ。すまない」
「いえいえ、参考になりました! ありがとうございます!」
斧男が赤髪剣士を叱ると、光る頭を下げてきた。
眩しいので顔の前で両手を振って、急いでお礼を言った。
「そう言ってくれると助かる。出来れば冒険者ギルドでもう一度相談した方が良い。熟練冒険者の誰か一人ぐらいなら、治療方法に心当たりがあるかもしれん」
冒険者ギルドかぁ~。
前にペトラが来た時は極悪さんが妖精の薬草は無いと断言していた。
行っても意味なさそうだ。
(あれ? そういえば今日って……)
偽医者の診断が確かなら、ラナさんの余命は一日だ。
この世界が私が目覚めた一度目と一緒の時間なら、ペトラが冒険者ギルドに行く日だ。
(あっ、ヤバイ‼︎)
思い出した! 私が助けないとロリコン冒険者の餌食になる日だ。
「すみません、ちょっと急用を思い出したので行きます!」
「ああ、気を付けろよ」
「はい、失礼します! 色々とありがとうございました!」
手遅れになる前に急げだ。三人にパッと頭を下げて、パッと駆け出した。
赤髪剣士が注意するように言ってくれたけど分かっている。
あのロリコン冒険者は今度こそ、私の手でボコボロにしてやる。
「馬鹿か。矢は俺が拾った木から作っているからタダなんだよ。テメェーこそ木の枝でも振り回してろ」
「馬鹿はテメェーだ。そんなので倒せるのはテメェーぐらいだ。矢なんか作る暇があったら身体鍛えてろ」
「……ヒョロガリのくせに。テメェーが鍛えてろ」
「はぁ? 今何ってった‼︎」
冒険者の無駄話は聞きたくないので、特に白熱している二人に話しかけた。
「あのぉ……まだ続きますか?」
「ゔゔあ‼︎ あっ⁉︎ おっとと悪かったな。えっーと……何だけ?」
話を中断されて赤髪剣士がめっちゃ睨みつけてきた。
だけど、私の顔を見て存在を思い出したみたいだ。
でも、何の話をしていたのかまでは思い出せないみたいだ。
やっぱり馬鹿と言う方が馬鹿という諺は本当なのかもしれない。
「魔力中毒の治し方だよ。さっきも言ったけど治し方は知らない。でも、関係あるかもしれない噂話を聞いた事があるぜ」
治し方を知らないなら別の人を探した方がいいけど、その別の人に心当たりがない。
青髪弓使いの噂話が参考になるかもしれない。
「それってどんな話ですか?」
一応聞いてみた。
「回復薬の新薬を作るっていう高額の仕事だ。要するに人体実験、薬の非検体だな。女なら年齢問わないという条件で、報酬は一日銀貨二枚。若い女を狙った人身売買だと思われていたんだが、それがどうも違うらしい。自分で作った薬を自分で飲むだけなんだ。あんたの話と一致するだろ?」
「ええ、まあ。そうですね……」
噂話を聞いて、ラナさんの話が嘘じゃないのは分かったけど。
それだけじゃ治せない。手掛かりゼロのままだ。
「その話なら俺もギルドで聞いた事がある。『魔力』の高いものを短期間に何度も大量摂取すると、身体から魔力が抜けずに定着するそうだ」
「ああ、あれだろ。それなら俺も知ってる。魔物の肉とか食べると、何日間も二日酔いみたいな症状が続くやつだろ。でも、なる奴とならない奴がいるんだよな。俺はなった事がねえから分かんねえけどよ」
青髪弓使いに続けと、斧男と赤髪剣士が知っている情報を話してくれた。
魔物と言えば森の殺人熊だ。あれの肉を食べるとヤバイらしい。
「確か『魔法耐性が低い』となるらしいぜ。耐性が高いとどんなに食べても平気らしい。なあ、その奥さんは何日ぐらいその仕事をしてたんだ?」
「えっと……短期間という事しか知らないです」
青髪弓使いに聞かれたけど、詳しい事は分からない。私も偽医者に聞いただけだ。
こんな事ならもっと偽医者を強めに訊問すればよかった。
「なるほどな。話を聞いた限りだと、耐性が低いのに無理したんだろうな。普通なら身体から魔力が抜けるのを待つんだろうけど、身体の奥深くで『魔石化』したのなら、治療は無理かもな」
「そうですか……」
よく分からない単語が何個も出てきて、ちんぷんかんぷんだ。
それでも分かった事がある。先輩冒険者に相談しても、結論は偽医者と一緒だった。
「まあ、そう落ち込むなって。『魔力当たり』なら、『魔力消し薬』があるぜ。大量に食べればきっと良くなるって!」
ガッカリしていると、赤髪剣士が明るい笑顔で励ましてきた。
風邪引いたら、風邪薬一杯飲めば早く治るって理屈はない。
やっぱり馬鹿だ。馬鹿だと魔力当たりにならないんだ。
「ルーク、適当な事言うんじゃない。本気にしたらどうする。お嬢さん、我々では力になれないようだ。すまない」
「いえいえ、参考になりました! ありがとうございます!」
斧男が赤髪剣士を叱ると、光る頭を下げてきた。
眩しいので顔の前で両手を振って、急いでお礼を言った。
「そう言ってくれると助かる。出来れば冒険者ギルドでもう一度相談した方が良い。熟練冒険者の誰か一人ぐらいなら、治療方法に心当たりがあるかもしれん」
冒険者ギルドかぁ~。
前にペトラが来た時は極悪さんが妖精の薬草は無いと断言していた。
行っても意味なさそうだ。
(あれ? そういえば今日って……)
偽医者の診断が確かなら、ラナさんの余命は一日だ。
この世界が私が目覚めた一度目と一緒の時間なら、ペトラが冒険者ギルドに行く日だ。
(あっ、ヤバイ‼︎)
思い出した! 私が助けないとロリコン冒険者の餌食になる日だ。
「すみません、ちょっと急用を思い出したので行きます!」
「ああ、気を付けろよ」
「はい、失礼します! 色々とありがとうございました!」
手遅れになる前に急げだ。三人にパッと頭を下げて、パッと駆け出した。
赤髪剣士が注意するように言ってくれたけど分かっている。
あのロリコン冒険者は今度こそ、私の手でボコボロにしてやる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる