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生三話 私のケビン・コスナーにはなれない

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 包丁大を冷凍庫にすると、地面の鉄鍋とついでに制服の入った黒鞄を入れた。
 これで邪魔な物はなくなった。冷凍庫の中の白鞄から革袋の水筒を取り出した。

「あーあ、凍っているから飲めないよぉ」

 冷凍庫に入れてるんだから当たり前だった。カチンコチンで街に着くまでに溶けそうにない。
 電子レンジに入れれば溶けそうだから、試しに冷凍庫が電子レンジになるか実験だ。

「電子レンジ……おおっ!」

 やったぁ! 冷凍庫が光りながら小さな箱型に変わり始めた。
 見る見る銀色のちょっと高そうな電子レンジが完成した。
 これはもしかすると……『調理器具』とか何にでも変化する魔法の包丁かもしれない。

「ゴクリ。ヤバイ物を手に入れてしまったかも……」

 これが私の予想通りの魔法の包丁なら、バンダナを楽勝で倒せてしまう。
 革袋を地面に置いてある白鞄に乗せると、早速変えられる物を試してみた。

 斬鉄剣×、日本刀×、拳銃×、マシンガン×、手榴弾×、ロケットランチャー×、自動車×、毒薬×、しゃもじ⚪︎

「——じゃねえよ‼︎」

 地面に木のしゃもじを叩きつけた。
 こんな木の板じゃ、死にかけのラナさんも倒せない!
 期待した私が馬鹿だった。これは『調理器具だけ』しか変化しない。
 殺傷力ゼロの魔法の包丁だ。

「冷蔵庫……やっぱり」

 木のしゃもじが大きな冷蔵庫に変化していく。
 この中に入れて置けば、そのうち革袋の氷も溶けてくれる。

「あれ? 待てよ……」

 まだ試してない事があった。
 バンダナとの戦闘中に包丁小を二本使っていた。
 二刀流が可能なら、包丁で出来る事の幅が広がる。
 試しに包丁小、包丁中、包丁大が何本出せるか確かめてみた。

「なるほど。小と中は二本で、大は一本しか出せないのか……」

 長さ的に小四本、中二本、大一本でいいと思うのに駄目だった。
 仕方ないので、小二本を使うしかない。片方にガスコンロ、片方にヤカンになるように念じた。
 二本の包丁がそれぞれ変化していく。予想的中だ。

 カチッカチッ、ボォォー!

「うん、火もつく。これなら使える」

 ゴムチューブもガスもないのに火がついた。冷凍庫と同じ怪奇現象だ。
 でも、これさえあれば、バンダナの家で使えない薪コンロを借りる必要がない。
 ついでにすりおろし器も買わなくていいし、何なら『ミキサー』で完璧なすり下ろしリンゴも作れる。

 材料は出せないから、野菜屋でリンゴ、ドリンクバーでマロウ酒、薬屋で魔力消し薬と回復薬を購入する。
 これでラナさんを魔女にして、生き返らすのは問題ない。問題があるとしたらその後だ。

 やっぱり戦闘面をどうにかしないと駄目だと思う。
 バンダナと魔女化したラナさんが正気に戻るまで押さえる人が必要だ。
 私は死にたくないから、ここは金の力で冒険者を雇うのが正解だと思う。
 お婆ちゃんも『大抵の事はお金で解決できる』と言っていた。

「冒険者かぁ……」

 心当たりは何人かいる。めちゃ強の極悪ジジイに頼むのが一番だけど、雇える可能性が低そうだ。
 そこそこ強くて、即雇えて、金もそこまで高くない冒険者がいい。

 だとしたらロリコン冒険者じゃなかった良い大男と猿顔冒険者だ。
 冒険者ギルドに行けば居るだろうし、もしかすると『金なんて要らねえよ。さっさと案内しろ』とかカッコいい事言うかもしれない。いや、絶対に言ってくれると思う。

 でも、猿顔が私が倒せるぐらいの雑魚だった。実質、良い大男対バンダナの一騎討ちになる。
 これは困った。確実に良い大男が勝ってくれるという確信がない。むしろ、ギリで負けそうな気がする。
 だとしたら……

「う~ん、確か洗剤みたいな名前だった気がする」

 アタック、ボールド、アリエール、トップ……

「あっ、思い出した! 『ジョイ』だ!」

 トイレ前で体育から助けてくれた斧盾反社会スキンヘッド大男冒険者のジョイだ。
 あの人ならバンダナに殺されても犯罪者が一人減るようなものだ。
 仲間二人もそこそこ強そうだったし、指名依頼すれば割引きすると言っていた。
 私のケビン・コスナーにはなれないけれど、しっかり盾で『ボディガード』してもらおう。
 エンダ~エンダ~♪だ。

「よし、これならイケると思う。街に急ごう!」

 武器の確認、必要な材料の確認、冒険者の確認は済ませた。
 今の私に出来る最高の計画が完成した。あとはラナさんとペトラを助けるだけだ。
 今度こそ、この不幸の連鎖をブッ壊してやる。
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