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生二十一話 あなたがいるじゃないですか
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「そ、そんなぁ……どうしてそんな事するんですか⁉︎ うちにはお金も何も無いんですよ‼︎」
……ですよねぇー。私も誘拐する理由がまったく思い浮かばない。
だけど、誘拐犯なら何か目的がないと駄目だ。借金とか怨みとかでもいい。とにかく理由が必要だ。
ラナさんの咳がうるさいとか、ペトラに毒草食べさせられたとか、ペトラに足踏まれたとか。
とにかく些細な理由でも言ったもん勝ちだ。
「あなたがいるじゃないですか。あなたが欲しいんですよ、ラナさん」
「ひぃぃぃ!」
ここは群馬の百合ゲラーで行くしかない。今は男装中だから人妻好きの誘拐犯になってやる。
ビールジョッキをベッド横のテーブルに置くと、ベッドの上のラナさんの頬を優しく撫でた。
ラナさんが身震いして喜んでいるようには、まったく見えないけど続けるしかない。
「あなたの事をずっと見てましたよ。ペトラが大切ですよね? だったらこの薬を飲んでください。あなたの病気を治す薬です」
「そ、そんな薬あるわけ……」
「あるんですよ。その為に苦労して見つけてきたんだから。もしも飲まないなら、あなたの代わりにペトラを僕のペットにします。あなたに似て可愛いから、きっと楽しい毎日になると思いますよ。僕にとってはですけどね♪」
「っぅ、この変態ッ!」
私の迫真の演技に怒ったラナさんが右手を振り上げ、顔を狙って振り回してきた。
だけど、病人の遅い全力ビンタが届くはずもない。私の左頬に到着する前に受け止めた。
パシィン。
「何だ、まだ元気じゃないですか♪」
「ひゃあ⁉︎」
そのまま乱暴にベッドに押し倒すと腰に跨って、キスできるぐらいに顔と顔を近づけた。
「元気なのは良いですけど、反抗的なのは駄目ですよ。僕に逆らうと傷つくのはペトラだということをお忘れなく」
「ぐっ、このケダモノ」
「じゅるり……ゴクン。よくご存知で♪」
涙を滲ませるラナさんを見て、涎を鳴らして飲み込むと、卑猥な微笑みを浮かべて言った。
日々の成果がしっかり出ている。佐々木蔵之介にされたい妄想プレイが役に立つ日が来るとは思わなかった。
本人絶対に言わないし、言うとしても私には縁がない天上人だ。脳内で頑張るしかなかった。
「さーて、苦い苦い大人のお薬の時間だ。自分で飲めないなら、口移しで飲ませてあげますよ」
「くっ、離れてください。自分で飲みます……」
「それは残念。ですが、床に捨てるとかしないでくださいよ。大人なら我慢して全部飲んでくださいね」
「いいから、早く貸してください」
ラナさんが自分で飲むらしいので、スッと腰から離れて床に降りた。
断ってくれて助かった。不味い回復薬の口移しは私もダブルで嫌だ。
「はい、どうぞ」
ベッド横のテーブルからビールジョッキを取ると、ラナさんの目の前に差し出した。
キンキンに冷えた苦い薬なので、通の酒飲みなら逆にすんなり飲めそうな気もする。
まあ、私は絶対に無理だと思う。どう見ても『青汁ビール』は飲めそうにない。
「……本当にこれを飲めば生きられるんですね?」
「もちろん。もしも死んでしまったらペトラはお返しします……と言いたいところですが、さっきも言った通りあなたの代わりに僕のペットにします。だから、死なないように頑張って生きてくださいね♪」
「くぅっ、ペトラ……!」
飲む前にラナさんが最後の確認をしてきた。
だけど、娘思いの優しい母親にも一切容赦しない。最後まで変態ストーカーを演じきる。
そのお陰か私の迫真の演技に負けて、ラナさんが青汁ビールを覚悟を決めて飲み始めた。
「ゴクゴクゴク。ゴクゴクゴク……」
喉を鳴らして、ジョッキの中の液体を減らしていく。
きっと陽キャの大学生達の食事会なら『一気、一気』と強要しているだろう。
だけど、私は静かに見守った。そんな事をしなくても飲み干すと信じている。
「うぐっっ、はぁはぁ……飲みました。約束守ってくださいね」
青汁ビールを飲み干すと、テーブルに空のジョッキを置いて、吐きそうな顔で言ってきた。
「もちろんです。あなたが眠ったら新居に出発します。ペトラともすぐに会えますよ」
笑顔で約束すると、優しくベッドに押し倒した。
これでバンダナに言われた条件は全て達成した。
生きたいという強い思いがあれば、魔女になって生き返る。
理由や原理は分からないけど、私も一度見たから信じられる。
(さてと、加勢に行かないと……)
空のビールジョッキを右手に持つと、包丁中に変化させた。
まだ安心するのは早すぎる。外に悪のバンダナが残っている。
あれをどうにかしないと、とても助かったとは言えない。
もう一本、包丁中を作ると、左右の手に持って外扉の前に立った。
「ウラッ! いい加減にくたばりやがれ!」
まだ戦っている声が聞こえてきた。
意外にも根性で生き残っているみたいだ。
だったら早く助けに行こう。扉を蹴り開けると外に飛び出した。
……ですよねぇー。私も誘拐する理由がまったく思い浮かばない。
だけど、誘拐犯なら何か目的がないと駄目だ。借金とか怨みとかでもいい。とにかく理由が必要だ。
ラナさんの咳がうるさいとか、ペトラに毒草食べさせられたとか、ペトラに足踏まれたとか。
とにかく些細な理由でも言ったもん勝ちだ。
「あなたがいるじゃないですか。あなたが欲しいんですよ、ラナさん」
「ひぃぃぃ!」
ここは群馬の百合ゲラーで行くしかない。今は男装中だから人妻好きの誘拐犯になってやる。
ビールジョッキをベッド横のテーブルに置くと、ベッドの上のラナさんの頬を優しく撫でた。
ラナさんが身震いして喜んでいるようには、まったく見えないけど続けるしかない。
「あなたの事をずっと見てましたよ。ペトラが大切ですよね? だったらこの薬を飲んでください。あなたの病気を治す薬です」
「そ、そんな薬あるわけ……」
「あるんですよ。その為に苦労して見つけてきたんだから。もしも飲まないなら、あなたの代わりにペトラを僕のペットにします。あなたに似て可愛いから、きっと楽しい毎日になると思いますよ。僕にとってはですけどね♪」
「っぅ、この変態ッ!」
私の迫真の演技に怒ったラナさんが右手を振り上げ、顔を狙って振り回してきた。
だけど、病人の遅い全力ビンタが届くはずもない。私の左頬に到着する前に受け止めた。
パシィン。
「何だ、まだ元気じゃないですか♪」
「ひゃあ⁉︎」
そのまま乱暴にベッドに押し倒すと腰に跨って、キスできるぐらいに顔と顔を近づけた。
「元気なのは良いですけど、反抗的なのは駄目ですよ。僕に逆らうと傷つくのはペトラだということをお忘れなく」
「ぐっ、このケダモノ」
「じゅるり……ゴクン。よくご存知で♪」
涙を滲ませるラナさんを見て、涎を鳴らして飲み込むと、卑猥な微笑みを浮かべて言った。
日々の成果がしっかり出ている。佐々木蔵之介にされたい妄想プレイが役に立つ日が来るとは思わなかった。
本人絶対に言わないし、言うとしても私には縁がない天上人だ。脳内で頑張るしかなかった。
「さーて、苦い苦い大人のお薬の時間だ。自分で飲めないなら、口移しで飲ませてあげますよ」
「くっ、離れてください。自分で飲みます……」
「それは残念。ですが、床に捨てるとかしないでくださいよ。大人なら我慢して全部飲んでくださいね」
「いいから、早く貸してください」
ラナさんが自分で飲むらしいので、スッと腰から離れて床に降りた。
断ってくれて助かった。不味い回復薬の口移しは私もダブルで嫌だ。
「はい、どうぞ」
ベッド横のテーブルからビールジョッキを取ると、ラナさんの目の前に差し出した。
キンキンに冷えた苦い薬なので、通の酒飲みなら逆にすんなり飲めそうな気もする。
まあ、私は絶対に無理だと思う。どう見ても『青汁ビール』は飲めそうにない。
「……本当にこれを飲めば生きられるんですね?」
「もちろん。もしも死んでしまったらペトラはお返しします……と言いたいところですが、さっきも言った通りあなたの代わりに僕のペットにします。だから、死なないように頑張って生きてくださいね♪」
「くぅっ、ペトラ……!」
飲む前にラナさんが最後の確認をしてきた。
だけど、娘思いの優しい母親にも一切容赦しない。最後まで変態ストーカーを演じきる。
そのお陰か私の迫真の演技に負けて、ラナさんが青汁ビールを覚悟を決めて飲み始めた。
「ゴクゴクゴク。ゴクゴクゴク……」
喉を鳴らして、ジョッキの中の液体を減らしていく。
きっと陽キャの大学生達の食事会なら『一気、一気』と強要しているだろう。
だけど、私は静かに見守った。そんな事をしなくても飲み干すと信じている。
「うぐっっ、はぁはぁ……飲みました。約束守ってくださいね」
青汁ビールを飲み干すと、テーブルに空のジョッキを置いて、吐きそうな顔で言ってきた。
「もちろんです。あなたが眠ったら新居に出発します。ペトラともすぐに会えますよ」
笑顔で約束すると、優しくベッドに押し倒した。
これでバンダナに言われた条件は全て達成した。
生きたいという強い思いがあれば、魔女になって生き返る。
理由や原理は分からないけど、私も一度見たから信じられる。
(さてと、加勢に行かないと……)
空のビールジョッキを右手に持つと、包丁中に変化させた。
まだ安心するのは早すぎる。外に悪のバンダナが残っている。
あれをどうにかしないと、とても助かったとは言えない。
もう一本、包丁中を作ると、左右の手に持って外扉の前に立った。
「ウラッ! いい加減にくたばりやがれ!」
まだ戦っている声が聞こえてきた。
意外にも根性で生き残っているみたいだ。
だったら早く助けに行こう。扉を蹴り開けると外に飛び出した。
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