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第4章 未来へと吹く風〔北野先生の視点〕
24 第4章第10話 決意
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僕は、静かに話を続けた。
「この間、君のお父さんに聞いたんだ。君のお父さんはね、君のことなら何でも知っているよ。君のやりたいこと、君が目指していること、君が理想と考えていること、そして君が作りたい学校のこともね」
彼女は、黙って話を聞いてくれていた。
「でも、そんな学ぶ人が学びたいことを学べる学校を作るためには、そのことを理解してくれる『先生』がいないとできないだろうとも言っていたんだ。今、世界中探してもそれができるのは、「美代乃」しかいないってお父さんは言っていたよ」
「え!」
美代乃さんは、少し驚いていた。
「ただ、お父さんは、君の体が心配でたまらないんだ。もし、君にそんな仕事を頼んだら、きっと無理をしても引き受けるだろう。だから、心配なんだとも言っていたよ」
「……お父さんが、そんなことを。……ただ、『学校』を作るんだって言うから……」
美代乃さんは、困惑して胸の前で両手を合わせた。
「大丈夫だよ美代乃さん。……ちゃんと、話してみるといいよ。何か解決策はあると思うんだ」
だんだんと、美代乃さんの顔から影が取れてきたようだった。
「美代乃、俺達は何でも協力するよ。だから、お前の好きな事をめいっぱいやったらいいんだよ。きっと、お前の好きな事は、俺達にとっても楽しいことに違い無いんだ!」
「ねえ、みょんちゃん、あーちゃんもいっぱい勉強したい! そして、みょんちゃんの役に立ちたいの!」
この倉庫で一緒に勉強している子供達は、みんな美代乃さんが好きな事をやることを願っているんだ。たぶん、美代乃さんの体のことも知っているんだと思うけど、何より自分のやりたいことを好きなようにやって楽しく生きて欲しいと思っているんだ。
美代乃さんは、みんなの顔を見渡して、ゆっくりともう1度僕達に向き合った。そして、ニッコリ笑って、「はい、分かりました!」と、返事をしたんだ。きっと、今度はもっと前向きに村長であるお父さんと話してくれるだろう。
その後、美代乃さんは、手を繋いでいたあーちゃんと一緒に近くの木箱に腰かけ歌い始めたんだ。優しい、透き通るような声で、暖かい日差しを感じるような歌だった。
僕は、……いや僕達は、彼女の歌に耳を傾けた。まるで夢の中で歌を聴いているような感覚になっていった…………。
明るい光を感じることが出来た。……希望に満ちた七色の光だった……
……いつの間にか、その楽しい歌を聴きながら、僕達は、また眠りについてしまったんだ……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……い、……せい……せんせ~い~………」
……誰だ?……僕を呼ぶのは……眠い………体がだるい……
……ん? ああ、まだ聞こえる。…………何だろう?
「北野先生!! 起きてよ! もー!」
「……ん?……あ~志津奈…………」
「『しずな』じゃないわよ! まったく、先生! 目が覚めた?!」
目の前に教え子の岡崎志津奈がいた。……志津奈……目を開け、周りを見回した。……会議室?
あ! 図書館だ! いや、倉庫に居たはず? 僕は、何が何だか分からず、立ち上がろうとしたが、力が入らなかった。
「気がついた? 先生。……無理しなくていいから! しばらくしたら立てるから……」
「ああ、それより、ここは?」
「図書館よ! 覚えてる?」
そうだ、そういえば、図書館に調べものに来たんだった。そして、あの日記を見ていると……。
「そうだ、あの日記は? 他のみんなは? それから、……それから、村長さんや…美代乃さんは?」
「北野先生、ようやくいろいろ思い出したのね。でも、いっぺんに聞かれても、困るわ。太郎君とミーちゃんが、今、図書館の中を調べているわ」
「そうか」
僕は、少し落ち着いた。そして、志津奈の顔を見ると、また泣きそうな顔になっていた。そう、あの時と同じように……
「あああ、すまん。また、やっちまったんだなー」
僕は、少し後悔した。1度ならずも2度も、訳も分からずここにとり残されたうえ、僕だけがなかなか目覚めなかったものだから、志津奈は1人ぼっちでだいぶ不安な時間を過ごしたんだ。
美代乃さんの世界に行った時もそうだったなあ。
志津奈は、こぼれそうになった涙を見せまいとして、やっぱり怒ったふりをしていた。
「何言ってんの! 先生が、いつまでも寝てるから、ミーちゃん達に置いてけぼりにされたのよ。私だって、ミーちゃん達と他のところを調べに行きたかったのに、先生を置いていけないからって、留守番になったのよ! 感謝してよね!」
「ああ、ありがとうな。志津奈」
そんな話をしているうちに、太郎と三成実さんが帰ってきた。
「やあ、北野先生も起きたのかい?」
「ああ、すまなかったな」
「また、先生、なかなか起きないから、まったくもー」
と、太郎が少し大袈裟に、笑顔で言った。
その時、『なないろ にっき』を見ていた志津奈が、突然大声をあげた。
「みんな、こ、ここ、見て! わたし達のことが書いてあるよ」
志津奈の声は、緊張していた。目は、『なないろ にっき』から離れず、声だけで、僕達を呼んだんだ。
「何言ってんの? 百年前の日記だよ。あたし達のことが書いてあるはずがないじゃない」
と、三成実さんは全く信じないとでも言うように軽く聞き流した。
「じゃあ、わたしが、この『なないろ にっき』を読むわ。黙って、聞いていて!」
志津奈が手にした『なないろ にっき』は、少し厚めの紙に書かれていた。表紙は、もっと厚く、しっかり端が糊付けされていて丈夫になっている。そのうえ、紐が通されていて念には念が入っていた。
この『なないろ にっき』は、大切に後世に伝えることを考えて作られたものだということが、よく分かる。
表紙の色は、もう薄くなっていて草色がところどころ茶色い染みもあるが、草原の葉を模した模様が、残っている。
これは、『美代乃のさん』の趣味かな? 『美代乃さん』? あれ? 夢じゃなかったのか? やっぱり、『美代乃さん』とのことは、現実のような気もする。そういえば、彼女は、何を伝えたかったのか………。
僕は、そんなことを考えながら、『なないろ にっき』を読もうとしている志津奈を見ていた。
志津奈が、『なないろ にっき』を読みはじめた。
◆◆◆
この虹ヶ丘には、「学びたい」という若者や子供がいます。でも、学校がありませんでした。口をそろえて大人は学校を作ろうと言いますが、私は反対してきました。
それは、「学ぶ」ことに反対しているのではなく、「学ばせる」ことに反対していたのです。せっかく、「学びたい」と思っている人がいるのに、学校を作ってしまったら、意図しない「学び」をしなければならないのではないかと思ったのです。
でも、そこに現れた旅の家族は、私に「学びの舞台」という話しをしてくださいました。誰でも「自分の学びの舞台」に上るための準備をする必要があったのです。だから、私はみんなのために、その準備をはじめることにしました。
私は、思い出したのです。
私も新しいことに挑戦することが大好きでした。きっと、この虹ヶ丘の子供達は、新しいことに挑戦して、素晴らしい未来を切り開いてくれることでしょう。私は、そんな子供達のために学校を作ることを決意しました。
◆◆◆
確かに名前は書かれていないが、この内容は僕達が「美代乃さん」と話したことだ。日記を読んでいた志津奈は「うん、うん」と頷きながら、こちらを見ていた。そして、その眼には大粒の涙が光っていて、今にもこぼれ落ちそうになっていたんだ。
(つづく)
「この間、君のお父さんに聞いたんだ。君のお父さんはね、君のことなら何でも知っているよ。君のやりたいこと、君が目指していること、君が理想と考えていること、そして君が作りたい学校のこともね」
彼女は、黙って話を聞いてくれていた。
「でも、そんな学ぶ人が学びたいことを学べる学校を作るためには、そのことを理解してくれる『先生』がいないとできないだろうとも言っていたんだ。今、世界中探してもそれができるのは、「美代乃」しかいないってお父さんは言っていたよ」
「え!」
美代乃さんは、少し驚いていた。
「ただ、お父さんは、君の体が心配でたまらないんだ。もし、君にそんな仕事を頼んだら、きっと無理をしても引き受けるだろう。だから、心配なんだとも言っていたよ」
「……お父さんが、そんなことを。……ただ、『学校』を作るんだって言うから……」
美代乃さんは、困惑して胸の前で両手を合わせた。
「大丈夫だよ美代乃さん。……ちゃんと、話してみるといいよ。何か解決策はあると思うんだ」
だんだんと、美代乃さんの顔から影が取れてきたようだった。
「美代乃、俺達は何でも協力するよ。だから、お前の好きな事をめいっぱいやったらいいんだよ。きっと、お前の好きな事は、俺達にとっても楽しいことに違い無いんだ!」
「ねえ、みょんちゃん、あーちゃんもいっぱい勉強したい! そして、みょんちゃんの役に立ちたいの!」
この倉庫で一緒に勉強している子供達は、みんな美代乃さんが好きな事をやることを願っているんだ。たぶん、美代乃さんの体のことも知っているんだと思うけど、何より自分のやりたいことを好きなようにやって楽しく生きて欲しいと思っているんだ。
美代乃さんは、みんなの顔を見渡して、ゆっくりともう1度僕達に向き合った。そして、ニッコリ笑って、「はい、分かりました!」と、返事をしたんだ。きっと、今度はもっと前向きに村長であるお父さんと話してくれるだろう。
その後、美代乃さんは、手を繋いでいたあーちゃんと一緒に近くの木箱に腰かけ歌い始めたんだ。優しい、透き通るような声で、暖かい日差しを感じるような歌だった。
僕は、……いや僕達は、彼女の歌に耳を傾けた。まるで夢の中で歌を聴いているような感覚になっていった…………。
明るい光を感じることが出来た。……希望に満ちた七色の光だった……
……いつの間にか、その楽しい歌を聴きながら、僕達は、また眠りについてしまったんだ……
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「……い、……せい……せんせ~い~………」
……誰だ?……僕を呼ぶのは……眠い………体がだるい……
……ん? ああ、まだ聞こえる。…………何だろう?
「北野先生!! 起きてよ! もー!」
「……ん?……あ~志津奈…………」
「『しずな』じゃないわよ! まったく、先生! 目が覚めた?!」
目の前に教え子の岡崎志津奈がいた。……志津奈……目を開け、周りを見回した。……会議室?
あ! 図書館だ! いや、倉庫に居たはず? 僕は、何が何だか分からず、立ち上がろうとしたが、力が入らなかった。
「気がついた? 先生。……無理しなくていいから! しばらくしたら立てるから……」
「ああ、それより、ここは?」
「図書館よ! 覚えてる?」
そうだ、そういえば、図書館に調べものに来たんだった。そして、あの日記を見ていると……。
「そうだ、あの日記は? 他のみんなは? それから、……それから、村長さんや…美代乃さんは?」
「北野先生、ようやくいろいろ思い出したのね。でも、いっぺんに聞かれても、困るわ。太郎君とミーちゃんが、今、図書館の中を調べているわ」
「そうか」
僕は、少し落ち着いた。そして、志津奈の顔を見ると、また泣きそうな顔になっていた。そう、あの時と同じように……
「あああ、すまん。また、やっちまったんだなー」
僕は、少し後悔した。1度ならずも2度も、訳も分からずここにとり残されたうえ、僕だけがなかなか目覚めなかったものだから、志津奈は1人ぼっちでだいぶ不安な時間を過ごしたんだ。
美代乃さんの世界に行った時もそうだったなあ。
志津奈は、こぼれそうになった涙を見せまいとして、やっぱり怒ったふりをしていた。
「何言ってんの! 先生が、いつまでも寝てるから、ミーちゃん達に置いてけぼりにされたのよ。私だって、ミーちゃん達と他のところを調べに行きたかったのに、先生を置いていけないからって、留守番になったのよ! 感謝してよね!」
「ああ、ありがとうな。志津奈」
そんな話をしているうちに、太郎と三成実さんが帰ってきた。
「やあ、北野先生も起きたのかい?」
「ああ、すまなかったな」
「また、先生、なかなか起きないから、まったくもー」
と、太郎が少し大袈裟に、笑顔で言った。
その時、『なないろ にっき』を見ていた志津奈が、突然大声をあげた。
「みんな、こ、ここ、見て! わたし達のことが書いてあるよ」
志津奈の声は、緊張していた。目は、『なないろ にっき』から離れず、声だけで、僕達を呼んだんだ。
「何言ってんの? 百年前の日記だよ。あたし達のことが書いてあるはずがないじゃない」
と、三成実さんは全く信じないとでも言うように軽く聞き流した。
「じゃあ、わたしが、この『なないろ にっき』を読むわ。黙って、聞いていて!」
志津奈が手にした『なないろ にっき』は、少し厚めの紙に書かれていた。表紙は、もっと厚く、しっかり端が糊付けされていて丈夫になっている。そのうえ、紐が通されていて念には念が入っていた。
この『なないろ にっき』は、大切に後世に伝えることを考えて作られたものだということが、よく分かる。
表紙の色は、もう薄くなっていて草色がところどころ茶色い染みもあるが、草原の葉を模した模様が、残っている。
これは、『美代乃のさん』の趣味かな? 『美代乃さん』? あれ? 夢じゃなかったのか? やっぱり、『美代乃さん』とのことは、現実のような気もする。そういえば、彼女は、何を伝えたかったのか………。
僕は、そんなことを考えながら、『なないろ にっき』を読もうとしている志津奈を見ていた。
志津奈が、『なないろ にっき』を読みはじめた。
◆◆◆
この虹ヶ丘には、「学びたい」という若者や子供がいます。でも、学校がありませんでした。口をそろえて大人は学校を作ろうと言いますが、私は反対してきました。
それは、「学ぶ」ことに反対しているのではなく、「学ばせる」ことに反対していたのです。せっかく、「学びたい」と思っている人がいるのに、学校を作ってしまったら、意図しない「学び」をしなければならないのではないかと思ったのです。
でも、そこに現れた旅の家族は、私に「学びの舞台」という話しをしてくださいました。誰でも「自分の学びの舞台」に上るための準備をする必要があったのです。だから、私はみんなのために、その準備をはじめることにしました。
私は、思い出したのです。
私も新しいことに挑戦することが大好きでした。きっと、この虹ヶ丘の子供達は、新しいことに挑戦して、素晴らしい未来を切り開いてくれることでしょう。私は、そんな子供達のために学校を作ることを決意しました。
◆◆◆
確かに名前は書かれていないが、この内容は僕達が「美代乃さん」と話したことだ。日記を読んでいた志津奈は「うん、うん」と頷きながら、こちらを見ていた。そして、その眼には大粒の涙が光っていて、今にもこぼれ落ちそうになっていたんだ。
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