みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第5章 再開を信じて〔太郎の視点〕

32 第5章第6話 彫刻の謎

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 「いらっしゃいなのー……」

 上杉電器商会うえすぎでんきしょうかいの道路側は、すべてガラス戸になっていて、お店の中がよく見えるんだ。扉10枚ほどの幅で、奥行きがあって中は広い。
 入って正面に、みよおばあちゃんが、レジと並んでちょこんと座っている。そして、横の大きなテーブルでは、放課後にぼくやしーちゃんがやって来て宿題をしたり、オヤツを食べたりしてるんだ。
 
 もちろん、外から丸見えだけど、ぼく達を目当てにくるお客さんもけっこういたりするんだ。近所のおばちゃんなんかなは、オヤツを届けてくれたりする。みよおばあちゃんも、お話するのは、とっても楽しいみたい。
 ひょっとして、ぼく達はお店の宣伝になってる? そう思ってるのはぼくだけもしれないけど、役に立ってれば嬉しいなあ。

 今日もそんな事を考えながら、上杉電器商会の入り口のソファーでオヤツを食べていると、いつもとは違う変わったお客さんがやって来た。



「た、た、大変よ!」
「あれ? どうしたんだのー……」

 いつものように、呑気な声でみよおばあちゃんが対応したんだけど、なんだか雰囲気が違ったお客さんだったんだ。

「ど、ど、どうしよ? ねえ、ちょっと聞いてくれる?」
「あ、メガネ屋のおばさん」
太郎たろう君と志津奈しずなちゃんも居たのかい、この平和な虹ヶ丘がえらいことになったよ、事件だよ!」

「まー落ち着いてのー……。お茶でも飲んで、………ゆっくり話してみたらのー……」

 みよおばあちゃんは、ぼく達が座っているソファーをメガネ屋のおばさんに勧め、湯呑にお茶を入れて差し出した。

「ああ、すみませんね、……い、いただきます」

「ミー姉ちゃん、ミー姉ちゃん、ちょっと来てー」
「……ん、どうした。しーちゃん?」
「いいから、一緒にお話を聞いて」

 この時、しーちゃんは、奥にいたミー姉ちゃんを呼んで、一緒にソファーに座ってもらった。そして、お茶を飲んで少し落ち着いたメガネ屋のおばさんは、ぼく達に話し始めたんだ。


「……みなさんも知っての通り、私の家はこの先の公園の向かいのメガネ屋です。公園には、虹ヶ丘開拓100周年を記念して大きな虹の彫刻があるんです。珍しいことに虹の彫刻には、色がついているんです」

 メガネ屋のおばさんは、まるでドラマの一シーンでも見たように、話始めた。

「ところがです。今日の午前中、あの虹の色が変わっていたんですよ。いつもの虹の色じゃなかったの。全体が少し黒ずんだ色になって、各色がずれた感じになってたの。私もこの歳ですから、視力に自信はありません。でも、このうちの最新のメガネをかけていたので、見間違うことは絶対にありませんからね」

 メガネ屋のおばさんは、自分の掛けているメガネを1度外して見せてくれた。

「家族にも言ったんですよ。でも、誰も信用してくれないんです。今は虹の色も、元に戻っているんで、私の見間違いだって言うんです」


「……………………」
 話を聞いても、ぼく達は何て言っていいか分からず、ただ黙ってしまった。


「本当なんですってば!」
 メガネ屋のおばさんは、少しイライラしながら、もう1度お茶を飲んで自分を落ち着かせようとしてくれたんだ。


 ぼくは、分らなかったんだ。相談にのってあげるべきなのか、『ぼく達には無理です』と断るべきなのか……。ぼくには、解決の糸口すら思いつかなかった。

 横を見ると、しーちゃんは、いつものように、真剣にメガネ屋のおばさんを見て話を聞いていた。どっちかというと、ぼくは、おばさんの話より、しーちゃんやミー姉ちゃんの様子が気になっていた。彼女達は、いつもぼくなんかより、真っ先に突っ走るタイプだから、何かいい考えがあるなら、迷わずすぐに行動に移すはずなんだ。

 しーちゃんは、いつも真剣なんだ。学校でもそうだもんな。ぼくなんか、いっつもしーちゃんの話を聞いて感心しちゃうんだ。そこがいいんだよな……だから大す……ん、ん。

 ミー姉ちゃんは……おや、なんか、ミー姉ちゃんも真剣だ。いつもだったら、その場の勢いで何でもアリの元気いっぱいなんだけどな?

 ぼくは、とにかく様子を見ることにし、今度はみよおばあちゃんの方も見てみたんだ。みよおばあちゃんって、あんまり出しゃばったりしないんだ。ミー姉ちゃんのオヤツ作りでもそうだったみたいだけど、まず話を聞くだけなんだよね。あんまり自分の意見を言ったりはしないんだ。

 それでもぼくは、みよおばあちゃんに聞いてみた。
「どうしよう? みよおばあちゃん」
「そうさのー……。びっくりしたんだのー……、千尋ちひろさんはのー……」

 え? 千尋さん? メガネ屋のおばさんは、千尋という名前なんだ。よく知ってたなあ、みよおばあちゃん。

「だって、5メートル以上ある大きな彫刻の色が変わったのよー」

「そう、あの彫刻は、裏に滑り台やジャングルジムがくっついていて、表から見ると四角い虹ヶ丘の風景に虹が浮かんだ絵画のようになっているのよね」
 と、ミー姉ちゃんが説明してくれた。

「へー、ミー姉ちゃん詳しいんだね」
「何言ってんの、この町内の子だったらみんな遊んだわよ。しーちゃんの小さい頃もよくあそこで遊んだじゃない!」

「え? そうだっけ? 私、忘れちゃった」
 ぼくは、自分の家の近くの公園で遊んでたので、メガネ屋の向かいの公園に行ったことがないんだ。


「ねえ、ミーちゃんと太郎君、また手伝ってくれる?」
 しーちゃんが、改まってみんなに聞いてきたんだ。

「やっぱり、やるのかい?」
 ミー姉ちゃんがニヤニヤしながら確認した。

「うん! 放っておけないわ」
 しーちゃんは、真剣だったんだ。だから、ぼくも、「もちろん、何でも手伝うよ!」と、真面目な顔をして言った。

 そして最後に、「ねえ、みよおばちゃんも知恵をください。お願いします」と、頭を下げた。
 みよおばあちゃんは、いつもの調子で、「はいだのー……」と、嬉しそうにニッコリ笑顔を見せてくれたんだ。


「千尋おばさん、とにかく考えてみるから。あんまり期待はしないで、待っててくださいね」
 しーちゃんは、メガネ屋の千尋おばさんの手をとって、笑顔で答えた。

「そんなことないよ。話を聞いてくれただけでも嬉しかったよ。ありがとうね。また、聞きたいことがあったら、いつでもうちにおいで。いつでもいいからね」と、メガネ屋の千尋おばさんは、帰って行った。


「じゃあ、さっそく捜査開始よ」
 力強いしーちゃんの号令が掛かった。

「でも、何をすればいいのかな」
 ぼくには、さっぱり分からず、とにかくしーちゃんの方を見てしまった。

「焦らないでのー……、いろんな人にお話を聞いたらどうかのー……」
 みよおばあちゃんは、澄ました顔でアドバイスしてくれた。

 ただ、ミー姉ちゃんは、ただみんなの話を黙って聞いて頷くだけだったんだ。



 そして、ここにしーちゃんの虹ヶ丘探偵物語が始まったんだ!



(つづく)
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