みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第5章 再開を信じて〔太郎の視点〕

33 第5章第7話 スピード捜査

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 ぼくにとって、昨日は慌ただしい1日だったんだ。メガネ屋の千尋ちひろおばさんが尋ねてきた理由は、『不思議なものを見た』だった。
 そこに居たしーちゃんは、いつものように真剣に話を聞いて、解決に向け動き出したんだ。

 ところが、いつもだったら真っ先にノリノリで突っ走るミー姉ちゃんは、とても大人しく控えめだったんだ。ミー姉ちゃんも社会人2年目だから落ち着いたのかなとも思ったけど、あの張り切り元気印が簡単に変わってしまうとも思えなかった。

 それでもぼくは、しーちゃんとの探偵ごっこは、嬉しくって仕方なかった。だって、ずっとしーちゃんと一緒に行動できるんだもんね。


「しーちゃん、まずどうするの?」
 今日は、まず上杉電器のレジ横にみんなで集まった。ここは、作戦本部になったんだ。放課後だけの探偵団だけど、ぼくは学校に居る時から待ち遠しかった。

「そうね。千尋おばさんのメガネ屋へ行ってみましょうか?」
 まず、しーちゃんの提案から会議は始まったんだ。

「……えーっと、……みよおばあちゃんと私は、本部待機でいいかな?」
 少し遠慮がちに、ミー姉ちゃんがそう提案した後に続けた。
「店番もあるし、それに……あんまり大勢で行っても……。その代わり、これ作ったから持って行って」

 ミー姉ちゃんが、超小型の服に着けるバッジを渡してくれた。
「このバッジはね、トランシーバーになってるの。ここからメガネ屋さんぐらいなら、楽に電波は届くようにしたから。それにね、こっちを押すと記録用のムービーが撮れるんだ。ただし、10秒だけだけどね」

 得意の発明品だったけど、やっぱりミー姉ちゃんは、あんまり元気が無いような気がしたんだ。

「ありがとう、ミーちゃん。素敵な発明品ね。大切に使うわ。それじゃあ、わたしと太郎君で行ってくるわね」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 メガネ屋さんの向かいは、公園になっている。結構広い公園だ。
「あれが虹の像だね。本当に大きいな。店の入り口から見て正面に見えるぞ」
 ぼくは、初めてみる虹の像を少し詳しく調べてみたんだ。

 それから、ぼくとしーちゃんはメガネ屋さんを訪問した。

「……ごめんください」

「あら、いらっしゃい。さっそく来てくれたのね。志津奈ちゃん、太郎君、ようこそいらっしゃいました」
 千尋おばさんが、歓迎してくれたんだ。

「はい。なんか、公園も懐かしくて、遊びたいなって思って、さっそく来ちゃいました」
「ああ、いいわね。その前にうちでおやつでも食べてってよね。……ねえ? 悟!……そこのおやつ持ってきて!」



「……おや、かわいいお客さんかい?」

 奥から、若い男の人が出て来た。背の高い、ちょっとカッコイイ人だ。歳は……うーん、ミー姉ちゃんと同じくらいかな?

「そうよ、昨日、上杉電器で会ったの。……うちの息子のさとるよ」
「こんにちは、志津奈しずなです」
「太郎です。そこの公園に遊びに来ました」


「そうなんだ。ところで、上杉電器って三成実みなみちゃんのところかい?」
 その悟さんは、笑顔で話し掛けてくれた。
「え? お兄さん、ミーちゃんのことを知っているんですか?」

「ミーちゃん? ああ、そう呼ばれているんだ。三成実ちゃんは、ぼくの同級生なんだよ」
 
 さすがしーちゃんだ。ぼくたちがここに来た目的を忘れてはいなかった。何気なく周りの人に話かけ、情報収集を始めたんだ。

「あのう、悟お兄さんは、ミーちゃんとはよく会っているんですか?」
「よくっていうか、去年まで同じ大学へ通っていたんだ。彼女の専門は機械工学で、僕は映像科学だったから、そんなに一緒になることはなかったけど、同じ町の出身ということで時々会っていたよ」

「映像科学って、映画でもつくるんですか?」
 ぼくも、ちょっとだけ知っていることを聞いてみた。

「お! 太郎君は、映画に興味があるのかな。でもぼくの研究していたのは、映画じゃなくて、立体映像とか、バーチャル映像とか呼ばれるものなんだ」

「私知ってます。映像なのに、実物みたいに見えるものですよね」
 うーん、やっぱりしーちゃんには、敵わないな。

「志津奈ちゃんは、物知りだね~」
 悟さんは、話している間中、ずっと笑顔のままだった。きっと優しい人なんだろうと、ぼくは思った。

「ほら、あなたたち、お話はそのくらいにして、このオヤツ食べなさいね」
「はい、おばさん、ありがとうございます」
 悟さんが持って来たカゴに、チョコレートやクッキーのお菓子がいっぱい入っていた。

「ところで、悟お兄さん……」
「何だい、志津奈ちゃん?」
「千尋おばさんが見たっていう、虹の像に見えた変な色の話は聞きましたか?」
「……ああ、聞いたよ。でもね……。そんな不思議なことは起きないと思うんだよね。何かの見間違いだよ、きっと……」

「ふーん、悟お兄さんはそう思うんだ」
 しーちゃんは、確信でも得たかのように、妙に落ち着いた感じで返事を返していたんだ。

「そうなのよ、志津奈ちゃん。悟ったらね、信じてくれないのよねー」
 千尋おばさんは、少し不貞腐れた格好を見せて、店の奥へ引っ込んで行ってしまった。

「ねえ、おじさんには、話したんですか?」
 しーちゃんは、千尋おばさんには構わず、悟さんに質問を続けた。

「父だって、気のせいだって言ってたよ。それに、もうすぐ誕生日だから、お祝いでもしたら機嫌もなおるだろうってね」
「へー。千尋おばさん、もうすぐ誕生日なんですか」






「さあ、太郎君、オヤツもご馳走になったから、今度は公園に遊びに行きましょうよ!」
「う、うん。どうも、ご馳走様でした」
 ぼくは、もう少しチョコレートを食べようと思ったんだけど、しーちゃんに急かされて、オヤツを後にしたんだ。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へー、虹の像っていうからアメリカの自由の女神みたいなのを想像してたけど、意外と平らだね」
「そうね。…………裏側は、……遊具がついているからデコボコしてるのに、表は大きなスクリーンのような壁に風景と虹が描かれているだけなのよ」





「……えー、モシモシ……本部のミーちゃん聞こえますか?」

 わあ! しーちゃん、さっそくバッジで連絡してる!


『はいはい、よく聞こえるよ。どうしの?』
「今、公園に居るの。ここから千尋おばさんのメガネ屋さんがよく見えるわ」

『それで?』
「ミーちゃん、メガネ屋さんの2階の窓からは、虹の像がよく見えるかしら?」

『うーん、虹の像は正面向きになっているから、よく見えるよ』
「ありがとう。……それから、また後でお願いがあるからよろしくね!」
『……うん、いいよ』




「しーちゃん?……どうして、メガネ屋さんの家のことをミー姉ちゃんに聞いたの?」



「太郎君、この虹の前で撮影しようか」
「え?」

 しーちゃんは、ぼくの質問にはまったく答えてくれなかった。それどころかしーちゃんは、突然ぼくに撮影をお願いしてきたんだ。ミー姉ちゃんが作ったバッジ型カメラを使って撮影してって。

 それは、虹の像の前で、千尋おばさんに向けたメッセージだったんだ。その後、しーちゃんは、ぼくにもメッセージを録画するように言ってきた。

「じゃ、太郎君、帰ろうか」
 しーちゃんは、突然言った。ぼくは、これから事件の解決に向けて何か捜査が行われるものとばかり思ってたんだ。

「え? 事件は?」
 キョトンとしたぼくの方を向いて、しーちゃんは笑顔で、
「解決したよ」と、言ったきり、そのまま家に帰り出したんだ。


「…………………」

 ぼくには、さっぱり意味が分からず、ただしーちゃんの後について歩くだけだった。



(つづく)
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