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第5章 再開を信じて〔太郎の視点〕
37 第5章第11話 もどる記憶
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土曜日の朝になった。
ぼくは、いつになくドキドキしているんだ。図書館の前で待ち合わせをしたが、ぼくが1番最後になってしまった。
「みなさん、おはようございます」
「おはよう、太郎。太郎にしては、遅かったな……」
北野先生が、茶化すように言った。
「これでも、緊張して時間より早く来たのに……」
ぼくは、ちょっと拗ねてみた。
「ははは……ごめん、ごめん。実は、僕はドキドキしてしまって、時間まで待てなかったんだ」
北野先生は、頭を掻きながら言い訳をしたんだ。
なーんだ、ドキドキしてたのは、ぼくだけじゃなかったんだ。
「なあ、太郎?……ところで、そのバック、何を持って来たんだい?」
「はい、先生。今回は、しっかり証拠を残そうと思って、お父さんからカメラを借りてきました」
「お! 気が利くなー」
「それより、しーちゃんが被ってるその麦わら帽子は……ひょっとして」
「そう、……あの時、美代乃さんにもらったものよ。なんとなく、また、会えそうな気がして…………持って来ちゃった…………」
しーちゃんは、麦わら帽子を大事そうに被っていたんだ。
「そうだね……。じゃ、図書館の中に入ろうか」
図書館の中には、心強い仲間がいた。
「お! やっと来ましたね」
「おはようございます。今日もいい天気だのー……」
電器屋のミー姉ちゃんと、ここしばらくアルバイトに来ている『みよおばあちゃん』だった。
そして、どこからともなく、「ご案内します」と、女の人が近寄って来た。
「あ! あなたは、司書の阿部さんですね」
「はい、また、みなさんをご案内することになりました。それから……」
「そういえば、去年の不思議な旅も、すべて阿部さんの案内から始まったんですよね。それから?……え? 今年は、他にも何かあるんですか?」
「実は、私もこれを持っているんです……」
そう言って、阿部さんは、カード型の招待状を見せてくれた。
「じゃあ、今年は、一緒に行けるんだね!」
ちょっと、嬉しそうにミー姉ちゃんが阿部さんに抱きつこうとしたが、阿部さんは、ほんの少しだけ笑って、すぐにみんなを図書館の2階へ案内し出した。
「この部屋だ」
阿部さんは、軽くノックして戸を開けた。そんなに広くもなく、窓がない分、なんとなく殺風景な感じがする。
中央にテーブルがあり、メガネ屋の悟さんが座っていた。
「いやー、ようこそ。どうぞ、こちらへ」
悟さんは、みんなを笑顔で迎えてくれた。そして、テーブルの中央には、大きなプロジェクターのようなものが設置されていたんだ。
「さあ、これに皆さんがお持ちの“アレ”を差し込んでください」
「“アレ”って何ですか?」
「太郎君のは、黄色い光が出るはずですが……どうですか?」
「黄色い光って、…まさか、この三角鉛筆のことですか?」
「しーちゃんは、赤い光線だよね。北野先生は、緑。阿部さんは、藍色。みよおばちゃんは、紫。そして、僕は橙色なんだ」
悟さんは、みんなが三角軸の鉛筆を持っていることを知っていて、光った時の色もわかっていた。
言われた通り、ぼく達は鉛筆をプロジェクターに差し込んだ。ちょうどレンズの後ろに鉛筆を差し込む穴が7つ開いていたんだ。
そこに鉛筆を差し込むと同時に、プロジェクターから眩い光が、あふれ出してきた。
それは、プロジェクターの光というより、プロジェクターそのものが光っているような感じだった。
思わずその光を見つめて、吸い込まれそうになった時、ぼくはあの時のことを思い出した。・・・・・・・・・・・・・
ちょうど1年前、ぼく、しーちゃん、ミー姉ちゃん、そして北野先生は、この同じ部屋で、同じように、あの本に吸い込まれたんだ。この町の歴史、いや虹ヶ丘小学校の歴史といってもいいかもしれない 『なないろ にっき』 に。
あの時は、意識を失ってしまったんだ。そして、とても不思議な100年前の時間旅行をしたとしか言い表せない経験だった。
ぼくは、今また、この気が遠くなりそうな光を見た時、一瞬にしてあの記憶が、体の中を駆け巡ったんだ。
あれは、不思議な時間だった。
最初は、どこにいるかもわからなかった。でも、そこで出会った美代乃さんは、とても素敵な人だった。いや、彼女のまわりにいる人みんなが素敵な人達だった。
だから、大人達は、そんな彼女たちに学校を任せたいと思っていたんだ。そんな彼女も、最初は悩んでいたんだ。自分達の学びたいという気持ちと、大人達の言っている学校が、重ならなかったんだと思う。
しかし、ぼく達と出会い、話をするうちに、彼女達も段々と笑顔になって行った。そして、未来を見つめた虹ヶ丘を考えてくれると約束してくれたんだ。
ぼくは、思い出した。
≪……“美代乃さんのすっきりした笑顔”。それが今でも最後の印象に残っている。最後の? そっか、この後、あの世界から戻って来たんだ。いや、戻されたんだ。きっと、美代乃さんは、あの答えがほしかったんだ。学校を作る時に、どうすればいいか迷っていたんだ。だから、ぼく達が呼ばれたんだ。なぜ、ぼく達だったのかな? そんなことはわからないけど、そっか、去年そんなことがあったな……≫
この光は、あの時のことを思い出すには十分だった。
・・・・・・・・・・・・・また、100年前に飛ばされるのはいやだな。今度は、何としても眠らないようにしないと。ぼくは、体に力が入るのを感じた。
(つづく)
ぼくは、いつになくドキドキしているんだ。図書館の前で待ち合わせをしたが、ぼくが1番最後になってしまった。
「みなさん、おはようございます」
「おはよう、太郎。太郎にしては、遅かったな……」
北野先生が、茶化すように言った。
「これでも、緊張して時間より早く来たのに……」
ぼくは、ちょっと拗ねてみた。
「ははは……ごめん、ごめん。実は、僕はドキドキしてしまって、時間まで待てなかったんだ」
北野先生は、頭を掻きながら言い訳をしたんだ。
なーんだ、ドキドキしてたのは、ぼくだけじゃなかったんだ。
「なあ、太郎?……ところで、そのバック、何を持って来たんだい?」
「はい、先生。今回は、しっかり証拠を残そうと思って、お父さんからカメラを借りてきました」
「お! 気が利くなー」
「それより、しーちゃんが被ってるその麦わら帽子は……ひょっとして」
「そう、……あの時、美代乃さんにもらったものよ。なんとなく、また、会えそうな気がして…………持って来ちゃった…………」
しーちゃんは、麦わら帽子を大事そうに被っていたんだ。
「そうだね……。じゃ、図書館の中に入ろうか」
図書館の中には、心強い仲間がいた。
「お! やっと来ましたね」
「おはようございます。今日もいい天気だのー……」
電器屋のミー姉ちゃんと、ここしばらくアルバイトに来ている『みよおばあちゃん』だった。
そして、どこからともなく、「ご案内します」と、女の人が近寄って来た。
「あ! あなたは、司書の阿部さんですね」
「はい、また、みなさんをご案内することになりました。それから……」
「そういえば、去年の不思議な旅も、すべて阿部さんの案内から始まったんですよね。それから?……え? 今年は、他にも何かあるんですか?」
「実は、私もこれを持っているんです……」
そう言って、阿部さんは、カード型の招待状を見せてくれた。
「じゃあ、今年は、一緒に行けるんだね!」
ちょっと、嬉しそうにミー姉ちゃんが阿部さんに抱きつこうとしたが、阿部さんは、ほんの少しだけ笑って、すぐにみんなを図書館の2階へ案内し出した。
「この部屋だ」
阿部さんは、軽くノックして戸を開けた。そんなに広くもなく、窓がない分、なんとなく殺風景な感じがする。
中央にテーブルがあり、メガネ屋の悟さんが座っていた。
「いやー、ようこそ。どうぞ、こちらへ」
悟さんは、みんなを笑顔で迎えてくれた。そして、テーブルの中央には、大きなプロジェクターのようなものが設置されていたんだ。
「さあ、これに皆さんがお持ちの“アレ”を差し込んでください」
「“アレ”って何ですか?」
「太郎君のは、黄色い光が出るはずですが……どうですか?」
「黄色い光って、…まさか、この三角鉛筆のことですか?」
「しーちゃんは、赤い光線だよね。北野先生は、緑。阿部さんは、藍色。みよおばちゃんは、紫。そして、僕は橙色なんだ」
悟さんは、みんなが三角軸の鉛筆を持っていることを知っていて、光った時の色もわかっていた。
言われた通り、ぼく達は鉛筆をプロジェクターに差し込んだ。ちょうどレンズの後ろに鉛筆を差し込む穴が7つ開いていたんだ。
そこに鉛筆を差し込むと同時に、プロジェクターから眩い光が、あふれ出してきた。
それは、プロジェクターの光というより、プロジェクターそのものが光っているような感じだった。
思わずその光を見つめて、吸い込まれそうになった時、ぼくはあの時のことを思い出した。・・・・・・・・・・・・・
ちょうど1年前、ぼく、しーちゃん、ミー姉ちゃん、そして北野先生は、この同じ部屋で、同じように、あの本に吸い込まれたんだ。この町の歴史、いや虹ヶ丘小学校の歴史といってもいいかもしれない 『なないろ にっき』 に。
あの時は、意識を失ってしまったんだ。そして、とても不思議な100年前の時間旅行をしたとしか言い表せない経験だった。
ぼくは、今また、この気が遠くなりそうな光を見た時、一瞬にしてあの記憶が、体の中を駆け巡ったんだ。
あれは、不思議な時間だった。
最初は、どこにいるかもわからなかった。でも、そこで出会った美代乃さんは、とても素敵な人だった。いや、彼女のまわりにいる人みんなが素敵な人達だった。
だから、大人達は、そんな彼女たちに学校を任せたいと思っていたんだ。そんな彼女も、最初は悩んでいたんだ。自分達の学びたいという気持ちと、大人達の言っている学校が、重ならなかったんだと思う。
しかし、ぼく達と出会い、話をするうちに、彼女達も段々と笑顔になって行った。そして、未来を見つめた虹ヶ丘を考えてくれると約束してくれたんだ。
ぼくは、思い出した。
≪……“美代乃さんのすっきりした笑顔”。それが今でも最後の印象に残っている。最後の? そっか、この後、あの世界から戻って来たんだ。いや、戻されたんだ。きっと、美代乃さんは、あの答えがほしかったんだ。学校を作る時に、どうすればいいか迷っていたんだ。だから、ぼく達が呼ばれたんだ。なぜ、ぼく達だったのかな? そんなことはわからないけど、そっか、去年そんなことがあったな……≫
この光は、あの時のことを思い出すには十分だった。
・・・・・・・・・・・・・また、100年前に飛ばされるのはいやだな。今度は、何としても眠らないようにしないと。ぼくは、体に力が入るのを感じた。
(つづく)
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