みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第7章 虹ヶ丘小学校とみょんちゃん先生の幸せ〔あーちゃんの視点・他〕 

51 第7章第3話 再会と平穏

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 晴天に恵まれた第6回虹ヶ丘にじがおか小学校卒業式。
 
 特に、形式にとらわれることもなく、ただ卒業する子供達を祝うことだけを願って始まったの。集ったのは、卒業する私達はもちろん、在校生、保護者、地域の人など様々だったわ。
 もちろん、誰が来賓とか誰が主催とかいうことは、みょんちゃん校長先生にとってまったく関係ないみたい。だから、私達も、みんなに、同じように、『おめでとう』って言われて、嬉しかったの。やっぱり、その言葉に尽きるのね。

 みょんちゃん校長先生は、今日も嬉しそう。でも、いつも以上にニコニコしているような気がするの。私には、昨日夕方に見た、あの光景が重なって、私も口元が緩んでしまいそう。
 私にとって、最後の校長先生のお話をしっかり聞かなきゃ……。



「この虹ヶ丘小学校が開校して早6年、ようやく今年で6年間の学校生活をすべて過ごした卒業生の卒業式です。自分達のめざしてた学びに自信をもって、これからも、今までの卒業生やこれから卒業していくみんなと力を合わせて、この世の中を進んでいってほしいと思います……」


 次は、私の出番なの。卒業生を代表して、私、本田彩子ほんだ あやこが挨拶をしたの。







「小さい頃からよく美代乃みよの校長先生に本を読んでいただいたり、お話をしたりしていただきました。私は、本も好きだし、お話も大好きです。だけど、それよりもっと好きなのが、美代乃校長先生です。きっと私だけではないはずです」

 私は、ちらっとみょんちゃん校長先生の方を見たの。もう、ハンカチを出してるわ。

「一緒にいると何でもできそうな気持になるのです。何でもやろういう気持ちになるのです。失敗しても次にがんばろうという気持ちになるのです。だから私も、そんなふうに人を勇気づけられる人になりたいと思っています」

 みょんちゃん校長先生も一緒に頷いてくれてる。

「自分には、何ができるかわかりませんが、やりたいことを1つずつ試してみます。どうかこれからも、虹ヶ丘小学校を卒業する私達を見守っていてください。私達もこの虹ヶ丘を見続けていくことを誓います」


 5人の卒業生も、会場にいた多くの人達も、みんな頷てくれていた。きっと私と同じ気持ちなんだろうって思って安心したの。


 挨拶が終わった後は、会場にある黒板の絵の説明や思い出話など、各々の人同士で話をしたの。狭い会場なために、順に訪れた人との雑談になったわ。本当に、形式に捕らわれない卒業式なの。
 お陰で、会場に来てくれた人達といっぱい話ができたの。




「あーちゃん、久しぶり、大きくなったね」

 親しげに声をかけてくれたのは、上杉うえすぎ先輩だった。上杉先輩は、桜山さくらやま先輩と一緒に電気や機械の勉強をするために東京へ行ったの。今日の卒業式に合わせて帰ってきたのね。

「あ、上杉先輩こそ、お久しぶりです」

 横から割り込んで入ってきたのは、北野きたの先生だった。

「なーんだ北野、今、あーちゃんと話しているのに、お前は、あと、あと」

「何言ってんですか? あーちゃんは、僕の教え子なんですよ。僕は、担任なんですよ、僕が先にお話ししても、いいじゃないですか!」

「なんだ、北野、お前、しばらく見ないうちに、一太いちたに似てきたなーーははは」
「もー、上杉先輩、お久しぶりです。ようやくお帰りになったんですか?」
「ああ、やっと帰ってきたぞー。あーちゃん、おめでとう! そして、北野、お疲れ様!」

 上杉先輩と北野先生も、先輩後輩の関係になるのね、あの時、みんなでこの虹小にじしょうを改築してたわ。

「それで、先輩は、これからどうするんですか?」
「俺は、ここで、電器屋を開業するぞ! この虹ヶ丘を明るくしてやるから、まってろ!」
「わかりました、お願いしますね」


 何だか夢のような話を聞いていると、次々に人が集まって来たの。

「なーんだ、ばんちゃん、もう電器屋のこと話しちゃたのか?」
「あ、岡崎おかざき先輩だ!」

「なんだ、みんな、早いな」
「ああ、桜山先輩もいるぞ!」

 そして、知り合いを見つけると、先輩達は大きな声で呼び集めてたの。


「おーい、一太、トウちゃん、こっちこいよ」
「なんだー、どうした?」
「ああ、みんな、懐かしい顔がいっぱいいるんだねー」


 そして、私の周りには、あの懐かしい人達の顔が揃ったの。

 やっと卒業して先輩に近づける私、本田彩子ほんだ あやこことあーちゃん。
 機械や電気が得意の上杉万作うえすぎ まんさくこと上杉先輩。
 医者になりたい岡崎芯也おかざき しんやこと岡崎先輩。
 虹ヶ丘小学校の中村一太なかむら いちた先生、北野大空きたの おおぞら先生、多田野等ただの ひとし先生。
 設計と建築に興味があった桜山建造さくらやま けんぞうこと桜山先輩。

 6年の歳月を経て、今ここで、再会したの。


「上杉先輩が電器屋をやるって聞いたんですけど……」
 私は、岡崎先輩に尋ねたの。すると、メガネをちょっと持ち上げて、当たり前だというような顔で説明してくれたの。

「それは、当たり前ですよ。なんせ、この6年間で発明特許を取った数が千を超えるというんですよ。それも、勉強や仕事をしながらというんだから驚いてしまいます。特許の分のお金だけでも、お店の2軒や3軒は簡単にできるはずですよ、な、万ちゃん!」

「何言ってんだよ、芯也だって、もう医者になって、病院で働いてるじゃないか。聞くところによれば、内科、小児科、外科……他にもいろいろな専門科をあっという間に修得したらいいな。お前の病院、俺が作ってやろうか?」

「あははは……病院を作るなら、桜山先輩に頼むさ。お前には、医療機械を頼むよ、あはははは」

「おう、任せとけ! それより、お前も帰って来るんだろ?」

「ん? ああ、…………まだなんだ。まだ、僕は帰る訳にはいかないんだ。……あと、もう1つあるんだよ。もう1つな…………。それよりも、桜山先輩? 上手くいったんですか?き・の・う?」
「芯也、お前、何言ってんだ? なんのことだ? 俺にも教えろよ!」

「いやあ、これは、本人に言って貰わないとね……ね? 先輩!」
「あ? ん! ああ、まあ……何とか受けてくれたよ!」



「おお! そうですか! それじゃあちょっとまっててくださいね……」

 何だか、急に岡崎先輩は、その場から離れて、向こうで話をしているみょんちゃん校長を連れて戻ってきたの。

「ああ、みんなも、戻ってきてたのね、上杉君、岡崎君、お帰りなさい。お仕事は上手くいっているの?」
「ああ美代乃校長先生、とっても懐かしいんだけど、ちょっとそれは、後回しで……」
「え? どういうこと?」


 他のみんなも、少し意味が分からずキョトンと瞬きを忘れてしまいそうになっていたわ。 そんなことにかまわず、岡崎先輩は、大きな声を張り上げていきなり叫び出したの。





「おめでとうございます! 美代乃校長先生、桜山先輩!!」

「おい、おい」

 桜山先輩は、小さな声で岡崎先輩を止めようとしたの。みょんちゃん校長先生に至っては、恥ずかしそうに下を向いてしまったわ。でも、なんだか、2人はとっても嬉しそうに見えたの。



「あーーーー! なるほどねーーーー!」


 上杉先輩と中村先生は、ピンときたのか、2人で目くばせして、みょんちゃん校長先生と桜山先輩を両脇に挟んで、お互いに押し付けて隣同士にしてくっつけたの。そして、もう一度、大きな声で、


「ご結婚、おめでとうございまーーーーーす!」


 って、叫んだ後、大きな拍手をしたの。すると、会場にいたみんなも、両手を挙げて大きな拍手を始めたわ、すると、小さな教室で、大きな拍手が重なり合って鳴り響いたのよ。
 みょんちゃん校長先生は、横の桜山先輩の手を固く握って背中に隠れ、目から溢れる涙をそっと隠していたの。それでも、みょんちゃん校長先生は、嬉しそうに微笑んでいたわ。










 しばらくして、会場も落ち着いてきた頃、岡崎先輩は学校の変化に気づいみたい。

「あーちゃん、それにしても、この本どうしたんだい?」

 教室の壁中は本棚になり、短い廊下もほとんど本棚になっていたの。多分、北野先生達の手作り本棚は、多少曲がってはいたんだけど、有に数千冊を超える蔵書を支えていたわ。

「みんなで集めました。隣町や親戚、それから手紙を書いて送ってもらったところもあります。最初は、自分達で絵本を描いていたんです。でも、畑仕事で、野菜を買いに来る業者の人に本が好きだと言ったら、仕事のお礼と言って本をくれるようになったんです。そこで、校長先生にお願いして、みんなで畑仕事を手伝うから、その分好きな本をもらえるように業者の人にお願いしてもらったりしたんです」

「そうか、すごいなー、あーちゃんは」

「私達の集めた本をみんなが読んでくれて、とっても嬉しかったんです。私、この虹ヶ丘に図書館をつくりたいと思うようになったんです。いつかきっと、大きな図書館を作ってみせます」

「そっか、実はね、また僕は東京の病院へ働きに行くんだ。東京には、たくさんの本屋があるから、たくさん本を送ってあげるよ」

「ありがとうございます。楽しみにしてます」

 岡崎先輩は、いつものように、また離れたところでみんなを眺めている多田野先生を見つけて近寄っていったわ。


「やあ、トウちゃん。6年間ありがとうな」
「なあに、大丈夫だったよ」

「なあ、美代乃校長先生は、どのくらい……だった」
「……うん、……1年に1度くらいかな。でも、最近は、ちょっと、ひどいんだ……」

「そうか。気をつけてることは?」
「できるだけ夜は、仕事しないようにしてもらってる。先生も2人増やしたし、校舎まわりの草刈りや書類の仕事に町の人をお願いしている」

「そうか、トウちゃんもいろいろ気をつかって大変だと思うが、あともう少し頑張ってくれ」
「うん、待ってるよ。芯さんだって大変でしょ?」

「なあに、あと1つできれば、完璧なんだ」



(つづく)
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