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第5章 ありふれた日常の変化
48 第5章第11話 取り巻く孤独
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虹ノ森高校1年生の南中子は、孤独だった。
高校の授業程度のことは、もう中学生の頃に済ませていた。だから、定期試験の成績は、いつも学年1番だった。模擬テストなどは、全国で必ず5位以内には入っていた。
しかし、彼女は孤独だった。
孤独でも構わない! 自分にはやるべきことがある! 彼女は、放課後必死に部室に籠り論文作成に全精力をつぎ込んだ。
彼女の高学力は、学校側も一目置き、できるだけの希望を叶えさせた。
1年生1学期の中間テストで満点、その月の全国模擬試験で1位という成績のご褒美として彼女が活動している地温研同好会に部室が与えられた。
「ありがとうございます」
「いやあー君は、優秀だね! その学力だったら、どんな大学だって思いのまま入学できるよ!」
あの調子のいい担任は、南中子を煽てて、気に入ってもらおうとヘラヘラしながら話しかけてきた。
しかし、彼女は、ただ「ありがとうございます」と、ニコリともしないで、そう言っただけだった。そして、すぐに担任の前から居なくなってしまった。
もちろん、行先は地温研同好会の部室だった。
彼女が入学してすぐに『地温研』を作りたいと言った時、担任はもちろん、どの先生も反対した。それでも、図書室や教室の片隅で、孤独な地温研活動を続けたのだ。
しかし、1学期の中間テストが終わる頃には、彼女の学力にほとんどの先生が太刀打ちできないことが分かり、職員会議で同好会の設立が認められ、彼女は大手を振って放課後の活動を行えるようになった。
その後、部室が与えられたり、若干だが活動費がもらえたりしたが、夏休みが終わってもまだ決まらないものがあった。それは、顧問だ。
教頭が、いろいろな先生に声を掛けたが、だれもいい返事はしなかった。
「教頭先生……自分は無理ですって! ……あんな頭のいい子の相手なんてできませんよ! ……まして、彼女しかいない同好会の顧問なんて!」
南中子の担任でさえ、断っていたのである。
「あ! そうだ、教頭先生! いい先生が居ますよ! ……胸山先生に勧めてみてはどうですか? 彼女は、体育教師だから、学力なんて関係ないと思うんです! それに、今はどこの部活の指導もやって無いんです。絶対、イケますって!」
「そうか? 胸山先生といえば、ナイスバディーなのに、『コミショー』だっていう噂だぞ!」
「まあ、大丈夫っすよ! 挨拶の返しが、たった10分後にあるくらいですかね」
「え? 挨拶だけで、10分も掛かるのか?」
「まあ、そうですね。だから、子ども達は出欠をとる時、胸山先生が名前を呼ばなくても順番に返事だけ返すようになったそうですよ!」
「お、おい、それで、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですってば。かえって、胸山先生も部活の指導とかした方が、度胸がついていいんじゃないかなあ~。……そうだ、教頭先生! いい方法がありますよ……ゴニョゴニョ…………………」
「ん? そーうか? ……まあ、聞いてみるか」
******************
「……と、いう訳だ。胸山先生、なんとか地温研同好会の顧問やってくれないかなあ~」
「……え、ええ……こ、こ、こもん……です……か?…………あ、あた……しに、できる……かしら?…………」
「もちろん、できるさ! それに、顧問をやれば、教師としてのスキルも増やせるぞ! 君はまだ若いんだ! いろいろ経験するのもいいんじゃやないか?」
「そ、そう……ですか? ……でも、わたし……『温暖化』なんて……知りません……よ~」
「ん? あー、大丈夫だ。研究は全部上杉君がやってくれるから。君は、何もせんでもいいよ。まあ、同好会と言っても上杉君しかおらんから、1人じゃ寂しいだろ? まあ、話し相手にでもなればいいんじゃないか?」
「そ、そう……ですね! ……寂しいのは……よくありません! わたし、顧問……やります!」
「そっか、そっか。じゃあ、明日から頼んだぞ! まあ、時々活動の報告をわしにしてくれればいいから!」
「はい、わ、わかり……ました、教頭先生!……わたし……おやつ……でも……もっていって……あげようかな~……」
「(ふっ! これで、あの上杉の見張りにもなるから……一石二鳥だな……それにしても妹まで来るなんて……)」
(つづく)
高校の授業程度のことは、もう中学生の頃に済ませていた。だから、定期試験の成績は、いつも学年1番だった。模擬テストなどは、全国で必ず5位以内には入っていた。
しかし、彼女は孤独だった。
孤独でも構わない! 自分にはやるべきことがある! 彼女は、放課後必死に部室に籠り論文作成に全精力をつぎ込んだ。
彼女の高学力は、学校側も一目置き、できるだけの希望を叶えさせた。
1年生1学期の中間テストで満点、その月の全国模擬試験で1位という成績のご褒美として彼女が活動している地温研同好会に部室が与えられた。
「ありがとうございます」
「いやあー君は、優秀だね! その学力だったら、どんな大学だって思いのまま入学できるよ!」
あの調子のいい担任は、南中子を煽てて、気に入ってもらおうとヘラヘラしながら話しかけてきた。
しかし、彼女は、ただ「ありがとうございます」と、ニコリともしないで、そう言っただけだった。そして、すぐに担任の前から居なくなってしまった。
もちろん、行先は地温研同好会の部室だった。
彼女が入学してすぐに『地温研』を作りたいと言った時、担任はもちろん、どの先生も反対した。それでも、図書室や教室の片隅で、孤独な地温研活動を続けたのだ。
しかし、1学期の中間テストが終わる頃には、彼女の学力にほとんどの先生が太刀打ちできないことが分かり、職員会議で同好会の設立が認められ、彼女は大手を振って放課後の活動を行えるようになった。
その後、部室が与えられたり、若干だが活動費がもらえたりしたが、夏休みが終わってもまだ決まらないものがあった。それは、顧問だ。
教頭が、いろいろな先生に声を掛けたが、だれもいい返事はしなかった。
「教頭先生……自分は無理ですって! ……あんな頭のいい子の相手なんてできませんよ! ……まして、彼女しかいない同好会の顧問なんて!」
南中子の担任でさえ、断っていたのである。
「あ! そうだ、教頭先生! いい先生が居ますよ! ……胸山先生に勧めてみてはどうですか? 彼女は、体育教師だから、学力なんて関係ないと思うんです! それに、今はどこの部活の指導もやって無いんです。絶対、イケますって!」
「そうか? 胸山先生といえば、ナイスバディーなのに、『コミショー』だっていう噂だぞ!」
「まあ、大丈夫っすよ! 挨拶の返しが、たった10分後にあるくらいですかね」
「え? 挨拶だけで、10分も掛かるのか?」
「まあ、そうですね。だから、子ども達は出欠をとる時、胸山先生が名前を呼ばなくても順番に返事だけ返すようになったそうですよ!」
「お、おい、それで、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですってば。かえって、胸山先生も部活の指導とかした方が、度胸がついていいんじゃないかなあ~。……そうだ、教頭先生! いい方法がありますよ……ゴニョゴニョ…………………」
「ん? そーうか? ……まあ、聞いてみるか」
******************
「……と、いう訳だ。胸山先生、なんとか地温研同好会の顧問やってくれないかなあ~」
「……え、ええ……こ、こ、こもん……です……か?…………あ、あた……しに、できる……かしら?…………」
「もちろん、できるさ! それに、顧問をやれば、教師としてのスキルも増やせるぞ! 君はまだ若いんだ! いろいろ経験するのもいいんじゃやないか?」
「そ、そう……ですか? ……でも、わたし……『温暖化』なんて……知りません……よ~」
「ん? あー、大丈夫だ。研究は全部上杉君がやってくれるから。君は、何もせんでもいいよ。まあ、同好会と言っても上杉君しかおらんから、1人じゃ寂しいだろ? まあ、話し相手にでもなればいいんじゃないか?」
「そ、そう……ですね! ……寂しいのは……よくありません! わたし、顧問……やります!」
「そっか、そっか。じゃあ、明日から頼んだぞ! まあ、時々活動の報告をわしにしてくれればいいから!」
「はい、わ、わかり……ました、教頭先生!……わたし……おやつ……でも……もっていって……あげようかな~……」
「(ふっ! これで、あの上杉の見張りにもなるから……一石二鳥だな……それにしても妹まで来るなんて……)」
(つづく)
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