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57 エルフィーナの夢 2 (……一緒に)
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「……ただいま……」
「お帰り……おや、今日はエルちゃんが、調子悪いのかい?」
「うん……、早く休ませようと思うんだけど……」
「……すみません、お母さん……」
僕に支えられぐったりしているエルは、それでも笑みを浮かべていた。
そんなエルを見て、お母ちゃんは何を思ったのか、いつもとは違う真剣な表情だった。
「エルちゃん、直人……疲れてるとは思うけど、少し私の話を聞いてもらえるかい?……ひょっとして、気持ちが楽になって休むことができるかもしれないからね……」
「何だよ、お母ちゃん……」
「はい、わかりました」
エルは、すぐに返事をして、いつものソファーに腰掛けた。
僕も、仕方なくエルの隣に座り、お母ちゃんは向かい側に座って、ゆっくりと思い出すように話し始めた。
「……直人はね、元気な赤ちゃんでね……満月の夜に生まれたんだよ。どんな赤ちゃんでも生まれた時は、元気に泣くんだ。直人も泣いたさ……病院の先生や看護師さんも、元気な泣き声だねって、褒めてくれたんだよ…………でもね、私には、とっても悲しい泣き声に聞こえたんだよね。そして、時々、泣き声の中に “エルー・エルー” って聞こえるんだよ。たぶん、聞こえたのは私だけなんだよねー」
僕は、少し驚いた。まさか、自分の小さい頃の話をお母ちゃんがするとは思わなかったんだ。
「その後、決まって、満月の夜だけ、直人は夜泣きをしたんだ。……直人がしゃべれるようになってからは、夜泣きはなくなったけど、時々困った顔して、泣きべっちょをかくことがあったよね」
その話しはよく聞かされた。僕が小さい時は、その話しでよくお母ちゃんに揶揄われたもんだ。
「それは、決まって自分の事じゃなくて、誰かのために頑張った時なんだよね。……だから、私は、黙っていつもご馳走を作って待っていたんだけど……」
お母ちゃんのご馳走を食べると、気持ちが落ち着くんだ。
「だからさ……エルちゃんが、うちに来たとき……びっくりしたんだよ。運命だってね……しかも、直人の泣きべっちょが、悲しい泣きべっちょじゃなくなったじゃないか。……私は、嬉しくてね。エルちゃんのお陰だと思ったんだよ」
「そんな、私なんか……」
エルも、照れながら嬉しそうだった。
「でもさ、もし、今、エルちゃんの調子が悪いのが直人のせいなら、……大丈夫だよ、エルちゃん、直人はね、たぶん、生まれる前から、エルちゃんのことを知っていたんだよ。……それだけ信用してもいいと思うよ。安心してほしいんだ、だからね……そのことを伝えたくてね」
「ええ、わかりました。お母さん……ありがとうございます」
「直人、今日は、ちゃんと傍についていなさいよ……わかったね!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ごめんなさい、直人。私のために……」
「いいや、僕の方こそ、君に心配ばかりかけているみたいで……」
ベッドに入っているエルの横で、直人は椅子に座っていた。そして、エルの手を握りながら、“眠るまで傍にいる”と約束していた。
ベッドで横になるエルを見つめながら、「……僕は、君をずーっと前から知っていたのんだろうか?」と、口にした。
ベルは、静かに、「どうして?」と、問い返しただけだった。
でも、僕は大切な何かを忘れているような気がした。
「君は、最初から僕にとって魅力的な人だった。でも、僕が君に惹かれたのは、それだけではないような気がしたんだ。一緒にいたい、一緒の夢をみたいと、最初からそう思ったんだ」
「直人は、はじめからそう言ってくれたわ…………まるで、オルナートのように……」
エルは、起き上がり直人の方に体を向けた。
僕は、エルの目を見つめた。そして、自然に両腕をエルの背中にまわし引き寄せた。エルも僕にしがみつき、目を閉じた。
そのまま、僕達は口づけを交わしたんだ。
すると、僕の中に、エルと過ごした懐かしい世界での記憶が次々に蘇ってくるのがわかった。まるで、走馬灯のように見えるんだ。話したこと、思ったこと、感じたこと……そして、一番大切な人になったあの日のこと。
僕は、目を開けた。
「エルフィーナ! 待たせたね、僕だよ、オルナートだよ!」
「オルナート!……………………」
僕達は、もう一度抱き合って、涙を流した。
「オルナート……直人は?」
「もちろん、直人も僕だよ……僕は、向こうの世界で亡くったあと、こっちの世界に転生したんだ。そして、直人として生まれたんだ。たぶん、君の魔法のお陰で、君とまた一緒の夢を見れるようにね。本当に君の魔法は素敵な魔法だよ!……あれ? エル、また、泣いているのかい?」
「だって、直人の言った通りなんですもの。私の魔法……人に夢ばかり見せる魔法で、私は嫌だって思っていたのに……私の周りの人は、どの人も、みんなが幸せになるような夢を見てくれるの。……私、嬉しくって、嬉しくって……だから、私もこんなに幸せになって」
「何言ってんだい。そんな魔法をかけてくれたのは、君じゃないか。……本当にありがとう、エルフィーナ」
早速、僕達はお母ちゃんに結婚の報告をしたんだ。お母ちゃんは、涙を流して喜んでくれた。
次の日、学校では、校長や学年団、クラスの児童にも結婚の報告をした。そして、後日盛大な祝福のお祝いを受けることになったんだ。
また、6年2組のみんなも喜んでくれたんだ。彼らとはこれからも長い付き合いが続くと思うと嬉しくなってくる。エルは、きっと初めての卒業生を送り出すまで奮闘するに違いない。これからは、僕も教頭としてだけじゃなく、プライベートでも今まで以上に助けていくつもりだ。
これらすべての物語は、後編へと続くが、少しの間、夏休みに入ることになります。エルも僕も、そして子ども達も、ちょっと長い夏を楽しもうと思ってます。
それじゃあ、いつか、2学期になったらまた会いましょう!
【完】
「お帰り……おや、今日はエルちゃんが、調子悪いのかい?」
「うん……、早く休ませようと思うんだけど……」
「……すみません、お母さん……」
僕に支えられぐったりしているエルは、それでも笑みを浮かべていた。
そんなエルを見て、お母ちゃんは何を思ったのか、いつもとは違う真剣な表情だった。
「エルちゃん、直人……疲れてるとは思うけど、少し私の話を聞いてもらえるかい?……ひょっとして、気持ちが楽になって休むことができるかもしれないからね……」
「何だよ、お母ちゃん……」
「はい、わかりました」
エルは、すぐに返事をして、いつものソファーに腰掛けた。
僕も、仕方なくエルの隣に座り、お母ちゃんは向かい側に座って、ゆっくりと思い出すように話し始めた。
「……直人はね、元気な赤ちゃんでね……満月の夜に生まれたんだよ。どんな赤ちゃんでも生まれた時は、元気に泣くんだ。直人も泣いたさ……病院の先生や看護師さんも、元気な泣き声だねって、褒めてくれたんだよ…………でもね、私には、とっても悲しい泣き声に聞こえたんだよね。そして、時々、泣き声の中に “エルー・エルー” って聞こえるんだよ。たぶん、聞こえたのは私だけなんだよねー」
僕は、少し驚いた。まさか、自分の小さい頃の話をお母ちゃんがするとは思わなかったんだ。
「その後、決まって、満月の夜だけ、直人は夜泣きをしたんだ。……直人がしゃべれるようになってからは、夜泣きはなくなったけど、時々困った顔して、泣きべっちょをかくことがあったよね」
その話しはよく聞かされた。僕が小さい時は、その話しでよくお母ちゃんに揶揄われたもんだ。
「それは、決まって自分の事じゃなくて、誰かのために頑張った時なんだよね。……だから、私は、黙っていつもご馳走を作って待っていたんだけど……」
お母ちゃんのご馳走を食べると、気持ちが落ち着くんだ。
「だからさ……エルちゃんが、うちに来たとき……びっくりしたんだよ。運命だってね……しかも、直人の泣きべっちょが、悲しい泣きべっちょじゃなくなったじゃないか。……私は、嬉しくてね。エルちゃんのお陰だと思ったんだよ」
「そんな、私なんか……」
エルも、照れながら嬉しそうだった。
「でもさ、もし、今、エルちゃんの調子が悪いのが直人のせいなら、……大丈夫だよ、エルちゃん、直人はね、たぶん、生まれる前から、エルちゃんのことを知っていたんだよ。……それだけ信用してもいいと思うよ。安心してほしいんだ、だからね……そのことを伝えたくてね」
「ええ、わかりました。お母さん……ありがとうございます」
「直人、今日は、ちゃんと傍についていなさいよ……わかったね!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ごめんなさい、直人。私のために……」
「いいや、僕の方こそ、君に心配ばかりかけているみたいで……」
ベッドに入っているエルの横で、直人は椅子に座っていた。そして、エルの手を握りながら、“眠るまで傍にいる”と約束していた。
ベッドで横になるエルを見つめながら、「……僕は、君をずーっと前から知っていたのんだろうか?」と、口にした。
ベルは、静かに、「どうして?」と、問い返しただけだった。
でも、僕は大切な何かを忘れているような気がした。
「君は、最初から僕にとって魅力的な人だった。でも、僕が君に惹かれたのは、それだけではないような気がしたんだ。一緒にいたい、一緒の夢をみたいと、最初からそう思ったんだ」
「直人は、はじめからそう言ってくれたわ…………まるで、オルナートのように……」
エルは、起き上がり直人の方に体を向けた。
僕は、エルの目を見つめた。そして、自然に両腕をエルの背中にまわし引き寄せた。エルも僕にしがみつき、目を閉じた。
そのまま、僕達は口づけを交わしたんだ。
すると、僕の中に、エルと過ごした懐かしい世界での記憶が次々に蘇ってくるのがわかった。まるで、走馬灯のように見えるんだ。話したこと、思ったこと、感じたこと……そして、一番大切な人になったあの日のこと。
僕は、目を開けた。
「エルフィーナ! 待たせたね、僕だよ、オルナートだよ!」
「オルナート!……………………」
僕達は、もう一度抱き合って、涙を流した。
「オルナート……直人は?」
「もちろん、直人も僕だよ……僕は、向こうの世界で亡くったあと、こっちの世界に転生したんだ。そして、直人として生まれたんだ。たぶん、君の魔法のお陰で、君とまた一緒の夢を見れるようにね。本当に君の魔法は素敵な魔法だよ!……あれ? エル、また、泣いているのかい?」
「だって、直人の言った通りなんですもの。私の魔法……人に夢ばかり見せる魔法で、私は嫌だって思っていたのに……私の周りの人は、どの人も、みんなが幸せになるような夢を見てくれるの。……私、嬉しくって、嬉しくって……だから、私もこんなに幸せになって」
「何言ってんだい。そんな魔法をかけてくれたのは、君じゃないか。……本当にありがとう、エルフィーナ」
早速、僕達はお母ちゃんに結婚の報告をしたんだ。お母ちゃんは、涙を流して喜んでくれた。
次の日、学校では、校長や学年団、クラスの児童にも結婚の報告をした。そして、後日盛大な祝福のお祝いを受けることになったんだ。
また、6年2組のみんなも喜んでくれたんだ。彼らとはこれからも長い付き合いが続くと思うと嬉しくなってくる。エルは、きっと初めての卒業生を送り出すまで奮闘するに違いない。これからは、僕も教頭としてだけじゃなく、プライベートでも今まで以上に助けていくつもりだ。
これらすべての物語は、後編へと続くが、少しの間、夏休みに入ることになります。エルも僕も、そして子ども達も、ちょっと長い夏を楽しもうと思ってます。
それじゃあ、いつか、2学期になったらまた会いましょう!
【完】
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