先生の憂鬱

根 九里尾

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第3章 天気に恵まれたら

第3章第4話 確率

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 早央里先生は、少し神妙な顔になり、話を続けてくれた。

「北野先生、知ってる? できる校長先生は、“晴れの確率”を取ってるって」
「何ですか、それ。聞いたことは無いです」

「うーん、これは噂よ。……それぞれの教師が担当した天候に左右される活動があるわよね。その晴れの確立を取って、次年度の学級担任や分掌の担当者を決めてるってことよ。例えば、北野先生の“晴れ確率”が90%以上だったら、運動会の担当にしようかとか、“晴れ確率が50%以下”だったら、学級の行事日程を決める担当から外すとかね」

「うへーー、そんなことをしてるんですか?」
「あー、だから、これは噂よ! 噂!」
「噂ですか……」

「そう。……それで、私ね、前の学校で、これを自分でやってみたの。みんなには内緒でね」
「それで、何か分かったんですか?」

「その時に、一緒に働いていたのが、天日去先生、あーちゃんなのよ……そして、彼女は、その確率が100%だったの」

「ということは、すべて、完璧に“晴れ”だったんですね」

「そうなの。私は嬉しくてね、そのことを彼女に話したのね。それで、彼女と仲良くなったの。もちろん、他の人には話さなかったわ。面倒くさいでしょ」

「そうですね、そんなのが分かったら、余計な仕事を押し付けられるかもしれないし」
「そうそう。それで、私達だけで、この確率を楽しんでいたの。時々、私が日程を決めなければならない時は、彼女に相談したりしてたのよ。……今回の北野先生みたいにね」

 そうか、それであの時、天日去先生はすべてを理解して、何の質問もせず、淡々と日程を決めてくれたんだ。

「すごい“晴れ女”じゃありませんか! 早央里先生も、凄いお友達がいて羨ましいですね。日程をきめるのは完璧じゃないですか」

 ボクも、内緒で天日去先生にお願いしようかと本気で考えたんだ。


「ところがね、そうは上手くいかないことが分かったのよ。ある出来事を切欠にね……」

 そう言うと、早央里先生は、物思いに耽るように沈黙してしまった。



(つづく)
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