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第3章 天気に恵まれたら
第3章第6話 お天気お姉さん
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「やあ、サオちゃん。この間は、ありがとね」
僕と早央里先生が、天日去先生の噂をしていると、急に後ろから声を掛けられたんだ。振り返った見ると、噂の本人で、僕は少し焦ってしまった。
「あ、あ、天日去せ、先生! この間は、ありがとうございました」
「やーね、北野先生ったら、何、そんなに緊張してんのよ!……あ、分かった。サオちゃん、また、私の噂してたんでしょ!」
「うへっ! バレたか! あははは」
正直に白状したような形になったが、笑いながら早央里先生は、天日去先生に隣の席を勧めた。
「やっぱりね。だって、この間、北野先生が相談に行くから『よろしく!』って言ったから、ピン! と、来たのよね」
「ところでさ、あーちゃん。あの話、北野先生にしていい?」
「いいわよ、どーせ、前半の可哀そうなところは、もう終わったんでしょ」
「えへへへ、まあね~」
本当に2人は仲がいいのが分かった。いや、それだけじゃなく、きっとお互いに信用しているんだとも感じた。
だって、あんな秘密を隠そうともしないんだもの。
「……ん~、私が“晴れ女かどうか?”でしょ。……実はね、“晴れ女じゃないのよ”私はね。……どっちかと言うと“お天気お姉さん”かな?」
「お天気お姉さん?」
僕は、どちらも晴天に恵まれているということで、同じではないかと思ってしまった。
「あのね、“お天気”って、『晴れ』だけじゃないのよ。あたしの彼氏の話は、聞いたんでしょ?」
「ええ、まああ……」
「だったら、分かったと思うけど、天気は、私にとって最善で決まるのよ!」
「え?最善?」
「そう、あの彼氏は、私にとって最悪だったの。だから、天気はデートの邪魔ばかりしたのよ。……邪魔することが、私にとって最善だったのね」
「え? そうすると、晴れ以外にも天気を自由にできるって言う事なんですか?」
「んー、自由にっていうより、私が気持ちよく暮らせるように天気が決まるって言った方がいいかな」
「じゃあ、雨の方が、天日去先生にとって良ければ、雨が降るということですか?」
「まあ、そんな感じかな」
ここで、早央里先生が、付け足しのように話してくれたことがあるんだ。
「だって、あーちゃんってば、あの彼氏の時は、悪い天気ばかりだったのに、今の旦那さんと知り合ってデートしてた時は、周りがどんなに天気が悪くても、あーちゃんがデートで行くとこだけは晴れたもんね!」
「そうそう、あんときサオちゃんなんか、自分のデートを決める時、まず私に聞くのね。『どこ行くの?』って。……そして、自分のデートも、私達のデートと同じ場所にしちゃうのよ」
「いやあ、あの時は、とっても助かったわよ……お陰で、あたしも旦那とすぐに結婚できたしね」
「ホントにサオちゃんは、ちゃっかりしてるんだから!」
「へー、驚きです! 天日去先生って、凄いんですね!」
「んー自分では、そうは思わないよ。自分は、ただ必要なことを毎日真面目にやっているだけなの。……それを天気がちょっとだけ、味方してくれているだけなのよ、きっとね!」
「なるほど、だから“お天気お姉さん”なんですね」
「だからね、この間北野先生に頼まれた遺跡見学の日程ね、本当は3日間とも私は研修で文化会館に缶詰めだったの。普通だったら、こんな研修の時に、晴れたら悔しいじゃない、絶対3日間とも雨だって思ったの。……でもさ、サオちゃんのお願いだからって思って、あの日の研修は、プログラムを変えてもらって、あたしもあそこの遺跡見学に行ってたのよ。楽しそうだったわね、北野先生。私も居たのよ! えへっ!」
嬉しそうに笑う天日去先生の顔が、なぜか真ん丸に輝くお日様に見えたんだ。
(第3章 完 ・ 物語もお終い)
僕と早央里先生が、天日去先生の噂をしていると、急に後ろから声を掛けられたんだ。振り返った見ると、噂の本人で、僕は少し焦ってしまった。
「あ、あ、天日去せ、先生! この間は、ありがとうございました」
「やーね、北野先生ったら、何、そんなに緊張してんのよ!……あ、分かった。サオちゃん、また、私の噂してたんでしょ!」
「うへっ! バレたか! あははは」
正直に白状したような形になったが、笑いながら早央里先生は、天日去先生に隣の席を勧めた。
「やっぱりね。だって、この間、北野先生が相談に行くから『よろしく!』って言ったから、ピン! と、来たのよね」
「ところでさ、あーちゃん。あの話、北野先生にしていい?」
「いいわよ、どーせ、前半の可哀そうなところは、もう終わったんでしょ」
「えへへへ、まあね~」
本当に2人は仲がいいのが分かった。いや、それだけじゃなく、きっとお互いに信用しているんだとも感じた。
だって、あんな秘密を隠そうともしないんだもの。
「……ん~、私が“晴れ女かどうか?”でしょ。……実はね、“晴れ女じゃないのよ”私はね。……どっちかと言うと“お天気お姉さん”かな?」
「お天気お姉さん?」
僕は、どちらも晴天に恵まれているということで、同じではないかと思ってしまった。
「あのね、“お天気”って、『晴れ』だけじゃないのよ。あたしの彼氏の話は、聞いたんでしょ?」
「ええ、まああ……」
「だったら、分かったと思うけど、天気は、私にとって最善で決まるのよ!」
「え?最善?」
「そう、あの彼氏は、私にとって最悪だったの。だから、天気はデートの邪魔ばかりしたのよ。……邪魔することが、私にとって最善だったのね」
「え? そうすると、晴れ以外にも天気を自由にできるって言う事なんですか?」
「んー、自由にっていうより、私が気持ちよく暮らせるように天気が決まるって言った方がいいかな」
「じゃあ、雨の方が、天日去先生にとって良ければ、雨が降るということですか?」
「まあ、そんな感じかな」
ここで、早央里先生が、付け足しのように話してくれたことがあるんだ。
「だって、あーちゃんってば、あの彼氏の時は、悪い天気ばかりだったのに、今の旦那さんと知り合ってデートしてた時は、周りがどんなに天気が悪くても、あーちゃんがデートで行くとこだけは晴れたもんね!」
「そうそう、あんときサオちゃんなんか、自分のデートを決める時、まず私に聞くのね。『どこ行くの?』って。……そして、自分のデートも、私達のデートと同じ場所にしちゃうのよ」
「いやあ、あの時は、とっても助かったわよ……お陰で、あたしも旦那とすぐに結婚できたしね」
「ホントにサオちゃんは、ちゃっかりしてるんだから!」
「へー、驚きです! 天日去先生って、凄いんですね!」
「んー自分では、そうは思わないよ。自分は、ただ必要なことを毎日真面目にやっているだけなの。……それを天気がちょっとだけ、味方してくれているだけなのよ、きっとね!」
「なるほど、だから“お天気お姉さん”なんですね」
「だからね、この間北野先生に頼まれた遺跡見学の日程ね、本当は3日間とも私は研修で文化会館に缶詰めだったの。普通だったら、こんな研修の時に、晴れたら悔しいじゃない、絶対3日間とも雨だって思ったの。……でもさ、サオちゃんのお願いだからって思って、あの日の研修は、プログラムを変えてもらって、あたしもあそこの遺跡見学に行ってたのよ。楽しそうだったわね、北野先生。私も居たのよ! えへっ!」
嬉しそうに笑う天日去先生の顔が、なぜか真ん丸に輝くお日様に見えたんだ。
(第3章 完 ・ 物語もお終い)
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