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第1章
4話 本物の悪役令嬢現る
しおりを挟む少し学園生活に慣れ始めた頃。
裏庭にある校舎の近くで、誰かが集団に囲まれている場面に遭遇した。
……これって、所謂イジメかな?
ふわふわしたピンク髪の、小柄な女生徒。
その子が集団の中心で、ビクビク震えながら誰かに助けを求めている様子だった。
正直、見なかったことにすることも出来た。
でも――
私はつい、そちらに近づいてしまった。
「ジュリア様、何か?」
集団の中心にいた女生徒が、こちらに声をかけてくる。
立派な縦ロールを靡かせ、キリッと吊り上がった目元を私に向けてきた。
……ぶっちゃけ。
こ、怖いんだけど。
確か侯爵家の――
キャロライン嬢だったはず。
第二王子の婚約者だった気がするけど……曖昧な記憶だ。
もしかして彼女は、いわゆる悪役令嬢ポジションなのだろうか?
「集団で何を騒いでいるのかと思いまして少々、気分を害してしまいましたの」
私はわざと不気味な笑みを浮かべる。
すると、周囲から小さな悲鳴のような声が上がった。
……まあ、そうよね。
魔女メイク、怖いもの。
「ジュリア様、それは大変ご迷惑をおかけ致しました」
キャロライン嬢は優雅に礼をする。
「こちらの男爵令嬢に、私の婚約者に対する接し方を注意しておりましたの…決して、イジメなどではありませんわ」
どうやら、このピンク髪の少女が――
第二王子にベタベタ付きまとっているらしい。
すると、その少女が涙目で訴え始めた。
「わ、私はただ……みんなと仲良くしたいだけなのに……グスン……
だってライトくんが、この学園では身分は平等だって言ってたよ?」
……は?
今、なんて言った?
ライトくん?第二王子を?
呆れて言葉が出ない。
世間知らずとか、そういう問題じゃない。
私は思わず――
キャロライン嬢に同情してしまった。
「ライト殿下は、私の婚約者ですのよ?」
キャロライン嬢の声が鋭くなる。
「ライト“くん”呼びなど言語道断ですわ!恥を知りなさい!」
その瞬間、
縦ロールを揺らしながら――
パチン!
思い切り平手打ちした。
乾いた音が周囲に響く。
……あーあ…やっちゃった。
すると、そのタイミングで。
「キャロライン!」
第二王子――ライト殿下が現れた。
しかも仲間を引き連れて。
怒りに顔を歪めながら、キャロライン嬢に向かって手を振り上げる。
……ちょっと待ちなさいよ。
私は反射的に前に出た。
そして――
殿下の腕を掴んで止める。
「どんな理由があっても…
女に手を出そうとするなんて馬鹿じゃない?」
周囲が静まり返る。
私はそのまま続けた。
「このブリブリしたぶりっ子に毒されたのかしら?何ならその頭、沸いてない?」
ライト殿下は、ようやく私に気付いた。
一瞬、気まずそうな顔をする。
そして腕を下ろし、私を睨みつけながら舌打ちした。
そのまま――
ピンク髪の少女の手を握り、仲間と共に去っていった。
……なんなの、あれ。
残されたキャロライン嬢は、呆然と立ち尽くしていた。
やがて涙を浮かべながら、私に小さく会釈をする。
そして取り巻き達と共に立ち去った。
静かになった裏庭で、私は一人考える。
ねぇ、これって――
悪役令嬢とヒロインが出てくるストーリーとリンクしてない?
……そう、実は私には前世の記憶がある。…といっても、もう朧げだ。
はっきり覚えているわけじゃない。
でも、不意に――
パッと鮮明に思い出すことがある。
さっきの光景…あれは確か……
前世で見た、何かの物語のワンシーンに似ていた。
でも…思い出せない。
肝心な部分だけ、霧がかかったみたいに曖昧なのだ。
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