自愛の薔薇には棘がある

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10・はじめてのメスおち※

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 見知って歩き慣れている近所の道が歩き辛く、緊張しているせいもあってすごく長く感じる。
 まるで初めて歩く凸凹道みたいだ。

「(ちゃんと掃除したし、ゴミも処分した……夕飯作りのリハもしたし、佐々木さん呼び出してゲネもした)」

 ドキドキバクバクと胸が高鳴って仕方がない。
 しかし、歩いていれば目的地には着くもので、マンションのエレベーターに乗って、僕の部屋へ到着した。
 わたわたと急かされた子どもみたいに慌ただしく手を動かして鍵を取り出して扉を開ける。
 空振る感覚があった。

「(あっ! 開いてる! 浮かれ過ぎて戸締り忘れたのか……)」

 自分のうっかりさに落胆しつつ、麗華さんを玄関に招いて、ドアチェーンをしっかりかける。

『カチャ』
「これでよし。うらっんん!」

 麗華さんに振り返ったところで唇を不意打ちで奪われた。

「んむぅ……ぷぁ……」

 麗華さんの舌が僕の口内に侵入してきて、僕の舌を絡め取る。

「はっ……はぁ……んっ……」

 息継ぎの合間に角度を変えて何度も唇を重ね合わせる。
 まるで今日見た映画のキスシーンのように激しさだ。

「んっ……んっ……んんっ……」
「んん……」

 お互いの息が上がり始め、そろそろ酸欠で倒れそうになる。

「はぁ……っ……んん……」
「ふっ……ぁっ……っ……」

 唇同士が離れた瞬間、唾液が糸を引いて名残惜しそうに途切れて落ちる。

「うら、らかさん……ここ、玄関」
「すみません。我慢出来なくて」
「ふふ……キスの我慢は初めから出来てませんでしたけどね」
「うっ! 言わないでください……もっとスマートに告白したかったのに」

 なし崩しの告白だったけど、結果オーライだから気にしない。
 腰と肩を掴まれ、僕と麗華さんは鼻先が触れる距離で、お互いに熱い視線をぶつけ合う。
 どちらかが先に目を閉じれば、それをきっかけにまた激しいキスをする。そして、その先もこの場で……そんな予感がする。
 僕は麗華さんの肩に額を乗せて、腰を抱かれ、密着したまま彼の鼓動を感じていた。

「……希さん、到着早々ですが、ベッドへ行きませんか?」
「ん…………こっち、です」

 鼓膜に心臓が移動したんじゃないかと思うほどに激しく脈打つ音に促されながら、僕は麗華さんを寝室まで案内した。荷物は玄関で置き去りだけど、鍵も閉めたし問題ないだろう。
 お腹の奥底の何処か冷静な部分が、抱かれる為に自分からベッドへ案内するなんて……と、辱めるような自覚を持たせてくる。
 羞恥に全身がカッと熱くなるのを感じた。

「あぁ、そうだ。流石に化粧をしたままだと途中からベッドが汚れてしまうと思うので、先に洗面所お借りしても?」
「あ、はい」

 ワンクッション置いてくれたのは助かる。このままじゃ、麗華さんの顔を見れない気がするから。
 先に洗面所へ案内してから、寝室へ行き、ベッドを整えておく。タオルも敷いた。
 枕元にはティッシュとゴミ箱も用意してある。
 一人、ベッドに腰掛けて麗華さんを待つ時間はとても長く感じた。
 そしてどんどん狼狽えが表面化していき、怖気付いてしまっていた。
 初めてが、男同士で……しかも自分が下になるんだ。緊張して当たり前。
 犬のまんまるぬいぐるみを抱き寄せて、少しでも緊張を和らげようと努力しているところに麗華さんがやってきた。
 スカートからスラックスのズボンに変わっているし、完全な男モード。

「お待たせしました」
「ヒャァ」
『ポフ』
「何処から声出してんですか」

 ぬいぐるみに隠れるように顔を埋めて身を丸める。
 僕の緊張と動揺を察してか、隣に座った麗華さんがぬいぐるみを撫でた。

「おやおや、随分丸っこくて可愛い子がいるな。俺の恋人を知らないかな? 希さんって言うんだけど」

 お茶目な冗談を言って和ませてくれようとする麗華さんにつられて少しだけ緊張が解れる。
 僕はぬいぐるみの短い前足をピコピコ動かしながら、返事を返す。

「あの、あのね、希は麗華さんが大好きだよ。この日をずっと楽しみにしてたよ。でも……でもね、緊張し過ぎて、怖がって隠れちゃったんだ……ごめんなさい」
「ぷっ、くくく……いいえ。俺だって、すごい緊張してるし、震えそうなほど怖い。希さんの初めての相手になるのも嬉しいけど……ちゃんと、気持ち良く出来るのか不安で仕方ない」

 いつもの柔らかい笑顔じゃない。強張って少しだけ口角が下がっている。
 眉間にシワも寄っているし、きっと僕も同じ顔をしているのだろう。
 こんなにもガチガチに緊張して、傷付ける事に怯えて、それでも求めている。
 
「ワンコちゃん、このまま希さんが見つからなかったら、君が俺の相手をしてくれるのかな?」
「え?」

 少し顔を上げると、ぬいぐるみに顔を寄せてキスをしてくる麗華さんがいた。
 さっきまで、僕にしていたようなキスを……

「ダメ!」
「おっと……希さん、そこに居たんですね! 危うくワンコちゃんに浮気するところでしたよ」

 ぬいぐるみにキスされる前にバッと顔を上げて、ぬいぐるみを抱き潰してキスを阻止する。
 麗華さんは悪びれた様子もなく、出てきた僕を見て嬉しそうに笑う。
 僕はぬいぐるみに嫉妬した恥ずかしさに視線を逸らしながら、麗華さんの腕の中へと抱き寄せられる。
 優しく包み込むように頭を撫でられ、髪を耳にかけられて頬に触れられた。
 指先が触れただけで、体がビクッと反応してしまう。
 そのまま顎を持ち上げられて、上を向かされると、ゆっくり唇を重ねられる。
 触れるだけのキスを何度か繰り返すうちに、緊張の糸は緩々と解けていった。

「ん……可愛い、ぬいぐるみですね」
「麗華さん好きかなって……」
「すごい好きです。希さん込みで」
『ギィ』

 ベッドに押し倒されて、スプリングが軋む。
 ぬいぐるみを取り上げられて、ベッドの枕傍にポスンと置かれた。
 
「希さん、いいですか?」

 見下ろしてくる麗華さんの瞳が、雄の色を帯びていて、下腹部がジンジンと疼き出す。
 僕は無言で首を縦に振って肯定の意を示す。
 麗華さんはもう一度キスをして、僕の服の下に手を滑り込ませて捲り上げる。

「はぁ……希さんの肌、薄紅に色付いて、すごくエロい……」

 首筋から鎖骨にかけてを舐められ、口が下がり舌先が乳輪をなぞるとゾクリとした感覚が走り、シーツを掴む指先に力が入る。

「あっ……んぅ、う、麗華さん……そこ……ちが……っん」
「ふ……ここじゃなくて……こっちが良かったですか?」

 薄い腹筋から股座の辺りまでをゆっくりと撫で上げられ、期待感からか吐息混じりの声が漏れてしまう。
 ズボンに手をかけられて、脱がし易いように腰を浮かす。
 下着姿にされた下半身は、既に先走りによってシミを作っていた。
 その部分を見た麗華さんがゴクンと喉を鳴らす音が聞こえてきた。
 興奮してくれてるのが分かって、嬉しい反面、恥ずかしさが増長する。
 麗華さんもズボンを脱いで、ボクサーパンツ一枚になった。
 麗華さんの中心部分は、テントを張っていて、盛り上がっている。
 狭いベッドの上、脱がされた服が僕らの動作でプッシャーゲームのコインのようにベッドの下に落ちていく。
 麗華さんは、僕の足の間に割って入り、膝裏に手を添えた。
 大きく開脚させられる格好になり、羞恥心が更に煽られる。
 お尻の割れ目に、布越しに硬いモノが押し付けられている。

「怖くないですか?」
「だ、大丈夫です……」

 後孔が麗華さんを求めてヒクつくのを感じながら、僕は必死に平静を装った。
 怖いわけじゃない。ただ、緊張と不安と期待が入り交じった感情に支配されて、上手く思考が回らないだけだ。
 ローションを手に取って温めてくれているみたいだけど、焦らされている気分になってしまう。

「……希さん、痛かったら言ってくださいね」

 下着をずらしてぬるりと、指の腹が後孔に触れる。
 それだけでも敏感に反応してしまい、ビクビクと身体が震えてしまった。
 麗華さんは僕を気遣ってくれているようで、いつもより入念に周辺をマッサージするように揉みほぐしてくれる。
 時々、中指の先端を少しだけ挿れては抜きを繰り返して、入り口を広げてくれる。
 焦ったい……もっと奥まで欲しい……そんな気持ちが芽生え始めて、無意識のうちに自ら腰を動かして麗華さんの指を飲み込もうとしていた。
 それを察してくれたのか、指を一気に根元まで埋めてくれた。
 指先が前立腺を掠める度に、甘い声を上げながら身を捩る。

「あ……んっ、んっ……麗華さ……っ、麗華さん……!」
「希さん……こんなに柔らかくなってますよ」

 いつの間にか三本もの指が挿入っていて、グチュッグチャッと卑猥な音を立てていた。
 麗華さんが僕の手を取って、指を咥えてヒクついている孔へ触れさせる。
 そこは、熱くて、蕩けそうなほど柔らかい。
 自分の体の一部なのに、別の生き物のようだ。
 ココに麗華さんの……アレが……入るんだ……そう思うと余計に意識してしまう。
 麗華さんが僕の後孔から指を引き抜くと、透明な糸を引いていた。
 それがとても淫靡で、目を逸らしたいのに目が離せなくなる光景だった。
 麗華さんは、準備をしていたコンドームを開封して、装着していく。
 その様子を見て、これからする事への実感が増しドキドキする。
 ゴムを着け終わると、僕に見せつけるようにローションを塗り込むように数回扱いた。

「希さん、俺を見て」
「麗華さん……」

 麗華さんは僕の両足を抱え直し、亀頭をぬかるんだ後孔に押し当てる。

「ん……んぅ……っ」
「力を抜いて……」
『くぷん』

 先端が飲み込まれて、そこから時間をかけて全てを埋め込んでいく。
 麗華さんは、少し苦しげに眉を寄せて、荒い呼吸を繰り返していた。
 緩やかな挿入は僕に負担をかけないようにしているから、僕の事を想って麗華さんが我慢してくれているからだ。

「うらぁか、さん」
「希さん……」

 僕は両手を伸ばして、麗華さんの頬に触れた。
 そのまま引き寄せるように力を込めて、キスをする。

「うららかさんが、僕のナカに……うれし……うらぁかさん、すき……だいすき……」

 甘えるようにキスをする間もゆっくりとした動きで、徐々に繋がりが深くなっていく。
 散々解して柔らかくなったと言っても、僕のナカはキツくて、麗華さんの長く太いモノを全て受け入れるのは大変だ。
 苦しいのに、幸せで、愛しくて、涙が出てくる。
 やっとコツンと行き止まりの奥まで入った時には、このまま麗華さんを感じていたいと、首に腕を回して抱き締めた。
 麗華さんも僕を抱き締め返してくれて、暫く馴染むまでじっとしていてくれた。

「希さん、痛くないですか?」
「……はい……麗華さんも、痛く、ないですか?」
「はい……気持ちいいです。とても」

 僕が落ち着くまで待ってくれている麗華さんは、本当に優しい人だ。
 本当は今すぐにでも突き上げたいはずなのに、僕を気遣ってくれている。

「うごいて、いいですよ」
「っ……はい」
『ズヌヌ……』
「あ、ぁあ……」
「くっ……はぁ……」

 腰を優しく緩慢な動きによる快楽に、僕は麗華さんに抱かれている実感が込み上げてきて、喜びのあまり麗華さんを煽ってしまった。

「あっ、ひぅ……麗華さ、ん」
「はい……なんですか?」
「もっと、動いて大丈夫ですから……いっぱい、シて?」

 麗華さんは僕の言葉を聞いて、零れ落ちそうな程目を大きく見開いた。
 次の瞬間には険しい雄の顔付きに変わっていて、その表情を見ただけでお腹がキュンとした。

『ズリュッ!』
「ひぐっ!」

 ギリギリまで引き抜かれた剛直が一気に奥まで押し込まれた。
 
『ドチュ!』
「ッ~~!! か、は!」

 奥の壁を突かれた衝撃で目の前に火花が散った。
 チカチカと視界が点滅し、あまりの快感に仰け反りながら、声にならない悲鳴を上げた。
 僕は射精を伴わず絶頂を迎えていた。
 身体がガクンガクンと痙攣して、力が入らない。
 それでも、麗華さんの動きは止まらない。

「ああ! あっ、ひっ、いっ、あ、や、いま、イッて、ああ、うらぁかしゃん」

 前立腺をゴリゴリと押し潰されて、過ぎた快楽に涙がボロボロと溢れて、身体は陸に打ち上げられた魚のように跳ね上がる。
 僕の動きでズレた眼鏡を麗華さんはブリッジを口で咥えて直してくれた。
 
「可愛い……希さん、希さん……希さん……っ」
『バチュン! グジュッ、ゴリッ、ヌポッ、ドチュッ』
「らめ、きもちい、うらぁかしゃん! またイク、イっちゃいます、うららかさ、ああん、あうっ」

 麗華さんは僕の両足を肩にかけて、上から体重をかけるようにして抽挿を繰り返す。
 パンッパァンっと肌がぶつかり合う音が響く度に、結合部から泡立ったローションが飛び散った。
 激しい律動に舌が上手く回らず、呂律が怪しくなってくる。

「希さん、俺、もう……っ」
「ぼくも、また、あぁ、イッ……あぁあぁあ!!」

 麗華さんが最奥を穿ちながら、白濁を吐き出すのと同時に、僕は再び射精を伴わない深い絶頂を迎えた。
 ビクビクと震える麗華さんのモノからゴム越しに熱を感じながら、絶頂の余韻に浸る。
 まだ、身体は小刻みに痙攣していて、麗華さんが僕を優しく抱き締めてくれた。
 暫くそうしていると、だんだんと呼吸も落ち着いてきて、少しずつ思考もクリアになってきた。

「すみません……初めてなのに、あんなに激しく……」

 麗華さんは、僕の頬を撫でながら申し訳なさそうに謝ってきた。
 普段の優しい麗華さんからは想像出来ないような激しさだったけど、嫌じゃなかった。

「いいえ……とっても、きもちよかった、です。僕、女の子みたいにイっちゃいました」

 正直に言うと、麗華さんはホッとしたように息を吐いた。
 
「声、うるさかったですよね?」
「いえ、可愛いかったです。俺で感じてくれてるんだなって嬉しかったです」
「恥ずかしいです……」

 今更、自分の喘ぎ声の大きさに羞恥心が湧いてきた。
 甲高い甘い声をあげて、女の子イキをしてしまった……男としてどうなんだろうとか、などと考えてしまう。
 でも、麗華さんは僕の不安を吹き飛ばすように優しく微笑んでくれた。
 そして、額にキスをしてくれて、労わるように頭を撫でてくれる。

「(……涼太君、君の事は最早どうでもいいけど、君の僕を表す言葉は的を得ているかもしれない)」

 侮辱か蔑称だと思ってたけど、麗華さん相手なら、それも悪くない。

「希さん、もう一回……シても?」
「はい……僕を麗華さんのメスに、してください」
「メッッ~~!? ど、何処でそんな言葉覚えてきたんですか!?」
「嫌でしたか?」
「嫌じゃないですけど……なんか、メスって響きが聞き慣れないし、卑猥というか……ちょっと背徳感があって……」

 真面目にブツブツ言っているが、息子さんは素直でギンギンでいらっしゃる。
 
「僕は……麗華さん専用なので……好きにしていいんですよ?」

 もう一度、麗華さんを受け入れる為に、僕は足をM字に開いて、誘うように後孔を晒した。
 僕はきっと、蕩けきっただらしない顔になっているだろう。
 
「うッ! 煽らないでください……優しくしたいですから」

 麗華さんはコンドームを付け直す。
 そのまま僕に覆い被さると、ゆっくりと挿入していく。

「んっ……ぁ」
『ズリュ』
「……く、ぅ」

 麗華さんは今度は落ち着いて腰を揺らし始めた。
 丁度いいペースのピストンに気持ちよさが募っていく。
 先程の激しい快楽ではなくて、じわじわと溶かされるような穏やかな快感が心地良い。

『ズチュッヌチャッ』
「はっ……んぅ」
『ズッズプ』
「ふくぅ、んっ……んん」
「希さん、声聞かせて下さい。指噛まないで」

 勝手に喉から溢れてくる声を指を噛み締めて必死に抑えていると、それに気付いた麗華さんに手を取っ払われる。

「あぁ、だめ……声、出ちゃ、あっ」

 声を抑える術を失って、口を閉じる事も出来ずに喘いでしまう。
 我慢しないと、と思っている間にもどんどん甘ったるい声が出てしまう。

「可愛い……もっと、聞かせて?」
「ふぁ、うららかしゃん、うらぁかしゃん、あっああ!」

 前立腺をカリ首で擦られるとチカチカと視界に光が弾ける。
 シーツに沈められた手を握り返す事しか出来ない。

「ここ当てると、きゅぅって、締まって気持ちいいです」
「やっ、いわなぃれ、あっ! はっ、そこぉ、ああ、イクッ、イッひゃいます」
「いいですよ……一緒に」

 麗華さんはラストスパートをかけるように律動を速め、僕のモノを包んで、律動に合わせて扱かれる。

「イッーー~~……!!」
『ビュク』

 身体を弓なりに反らせながら射精してしまい、自分だけではなく麗華さんのお腹も汚してしまった。

「っ、俺も、イクっ」

 麗華さんも達したのかビクビクと中で脈動する感覚が伝わってくる。
 愛される多幸感に胸が満たされていく。
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