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おまけ②
おまけ②・対応策
しおりを挟む「おい、あそこの……エロくねえか?」
「やめろ言うな。男だぞ」
昼間から飲み屋のカウンターで一人飲みをする男が、店に居合わせた男達の目線を奪っていた。
グラスを傾け、コクリと流し込み小さく吐息を漏らす仕草に目が離せない。
足を組み直すそんな何気ない一挙手一投足に色気が纏わり付いている様な感覚になり、男達は思わず息を飲み込んだ。
特別顔が良いわけでもない。
女性的な体付きでもない。
引き締まっているが、雄々しいとは言い切れない。
けれど、男達の目には、肉欲を刺激する妖艶な美女と遜色無い姿に映っていた。
「ジュンイチロー、お待たせしまた」
「支配人、お呼び出ししてすみません」
「……ああ、なるほど」
男達の視線を集める男……純一郎は、娼館の支配人と待ち合わせをしていた。
「レベルが上がったんですね。色気が段違いですよ」
「……外歩くとチラチラ見られるんです。成人男性にだけ影響があるみたいですけど、これで身バレとか……」
「あーー……確かに」
フェロモンの濃度が上がり、効果範囲が広まった。気配遮断を行っても残り香は隠せない。
匿名性のある尻壁であっても、特有のフェロモンを感じれば個人を特定する事も不可能では無い。
そして、純一郎は国が秘匿している勇者でもあり、何かの拍子に全てがバレてしまうかもしれない。
「…………もう、八年目になりますか。あなたがうちに来て」
「はい」
純一郎は、ふと気付く。支配人の黒髪に白髪が混じっている事に。小皺が目立っている事に。
支配人だけではない。冒険者仲間達も、年季が滲み始めていた。
幸せな家族生活で意識していなかった外の時間。
自分の外見は何も変化が無い。スキルとステータスの影響で不老になっている可能性に肝を冷やすが、一旦それは横に置く。
「……辞めますか?」
「…………いえ、少し……相談がありまして」
純一郎は娼館での仕事を続ける為に支配人へ、相談を行った。
時間も資金もかかるかもしれないが、自分の価値に賭けた純一郎の対策法。
「フェロモンと同じ香りの香水、ですか」
「従業員の方々に付けてもらうのとお客様への販売を行えば、紛れられると思いまして」
「あなた、小狡い事に頭がよく回りますね~」
新たな資金繰りができそうなアイデアに支配人はニヤリと笑う。
「調香師なら、腕の良い知り合いが居ます。掛け合ってみましょう」
「ありがとうございます……」
「いえいえ。レベルの上がったあなたが残っていただけるなら、お釣りが来ますよ」
純一郎の身体は、名器では無く神器と呼ぶに値する唯一無二のものとなっていた。
誰よりも純一郎を抱いてきたモモでさえ長くは持たない。
娼館の名物中の名物になるのは目に見えている。
引き留められるのなら、投資は惜しまない。
「……支配人は、平気そうですね」
「従業員に手を出せるわけないでしょ」
純一郎が勇者になる前。抱いて欲しいと迫っても、支配人は事情を聞くだけで手は出さず。協力する際にも、肌を重ねる事はなかった。
現在も他の男達と同じく純一郎のフェロモンに当てられているが、店で働く男娼である事や家族の事、性格を知っている分、理性的な対話が出来ている。
「手配を行うのに、フェロモンのサンプルが欲しいので、一度一緒に調香師の元へ行っていただけますか?」
「わかりました」
今後の懸念を解決するべく、準備に取りかかった。
支配人と向かった先は、自然豊かな町外れの調合屋。
そこでは香水の他にも回復薬や解毒剤の調合も兼業しているらしく、材料が豊富で品質も折り紙付きだと言う。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ~あ!」
「!」
見知った顔が二人を出迎える。
娼館にいた頃より、地味な服装だが美しい顔立ちの青年がにこやかに駆け寄ってきた。
「支配人にジュンイチローさん! お久しぶりです!」
「カスミさん、お久しぶりです」
「元気そうで何よりです」
手を取ってブンブンと喜びを表現する元男娼のカスミ。
純一郎に勃起不全を治してもらった一人だ。現在では、調香師の見習いとして住み込みで働いている。
「今日は何のご用で?」
「新しい香りの製作をお願いに参りました」
「香水のご依頼ですね。こちらにおかけになってお待ちください」
受け付け窓口の椅子に腰掛けて、担当者を待っていると店の奥から花の香りを纏った女性が出てきた。
「お待たせ致しました。調香師のマサヒリナと申します」
変わった癖毛の白髪が黒髪のアクセントとなっている四十路と思われる調香師マサヒリナ。
自己紹介を各々済ませ、早速本題へ。
「香りのご要望は、どのようなものですか?」
「スキルの影響で出ている彼の色香と同じ香りの香水をお願いしたいのですが……」
「…………色香?」
「あっ!」
ハッと声を上げる純一郎に支配人も思い出す。
純一郎のフェロモンは同性にのみ効果がある事を。女性のマサヒリナには、感じ取れないのだ。
その事を説明すると流石に困ったように微笑むマサヒリナ。
「カスミさん、こちらへいらしてください」
「はい」
「彼の色香、わかりますか?」
「……はい。酩酊の香に近いですが、ベースはもったりとした蜂蜜と後を引く花の甘さに似た芳醇なものがありますね」
「花の種類は?」
「ソルトベニア、ハルゲニア、ローズモニア……その区分だと思います。ブーケタイプの香りなので、一部ですが」
一種の花香を強調したものでは無く、複数の花香を合わせ、それらを一つに纏め、調整した物をブーケと呼ぶ。
純一郎のフェロモンには、そのブーケの要素があり、複雑且つ深みのある色香である事がわかった。
「なるほど。確かに男受け抜群の香りですね。考えただけで、クラッときてしまう香りです。ベースにブーケ……複雑な香りがあると調合に時間がかかりますし、お値段の方も高めになるかもしれません」
「時間と資金は余裕がありますので、その辺はお気になさらず。再現性はいかがでしょうか? 本物に近付けられそうですか?」
「私では嗅ぎ分けられないので、カスミさんのセンスになりますかね。お店で唯一の男性なので」
「……え? て、事は……」
「初めての大口依頼ですよ。頑張りましょうね。カスミさん」
「!!! はい!」
見習い調香師カスミにとって初めての個人依頼となった。
依頼主が支配人と純一郎という二大恩人の物というのもあり、気合いを入れまくりのカスミ。
その様子を微笑ましげに苦笑する三人。
「それでは、ジュンイチローさん。香りのサンプルが欲しいので、別室で採取のご協力よろしくお願いします」
「あ、はい」
カスミに案内された部屋には、見たことない器材が机に並べられており、草花が保存されていた。
スツールに座り、カスミが背後に回る。
「頸が見えるように髪を上げてもらってもいいですか?」
「あ、はい」
一つに束ねている長髪を両手で持ち上げて、頸を晒す。ガーゼで表面を拭い取られる感覚に少し恥じらいを覚えて俯きがちになる。
「ジュンイチローさん、ちょっとスクワットしてもらえますか? 汗が欲しいんです」
「ぁはい」
カスミのお願い通りにスクワットを行うが……純一郎の体力では、五十回以上やっても全く意味がなく、汗が滲む気配すらない。
「あれ?」
「…………鍛えてるから、ちょっとの筋トレじゃ汗が出ないかも」
「…………」
「…………」
二人の間に気不味い沈黙が流れる。
二人の頭にパッと浮かんだものは、職場で行うにはあまりに不釣り合いな行為。
しかし、意識してしまうとフェロモンに理性を絡め取られてしまう。
カスミは無意識に、純一郎の胸に手を伸ばしていた。
『ムニ』
「っ……カスミさん」
「ハッ、ぇえっとコレは!」
自分の行いに我に返って言い訳を綴る前に、両手が純一郎の胸を揉み始めていた。
大き過ぎず小さ過ぎず、適度な弾力があり、柔らかさも良い張りもある。
椅子に腰掛けて、されるがままの純一郎は羞恥心で顔を赤らめさせながらも抵抗せずに受け入れていた。
「すみません……勝手に、こんな……手が止まらなくて……」
「…………カスミさん、汗の採取に必要な工程、なんですよね?」
「!」
カスミへ逃げ道を示す純一郎。
発汗を促す為に必要な行為であり、仕方がないのだと……そう言い聞かせることで、大義名分を与える。
二人は同意の元、少し服を寛げる。
机に手をついて、最低限の露出で留めた臀部を突き出す純一郎。同じく最低限の露出で自身を取り出したカスミ。
声を出さないようにガーゼを噛み締めて、準備万端の後孔へ先をあてがう。
「んっ……」
『ちゅぷぷ……くぷん』
ゆっくりと挿入していくカスミの表情に苦悶が浮かぶ。
「(退職時と、全然違う……)」
気を抜いたら、すぐに出てしまう。
純一郎自体は静かで大人しくしているのに、カスミのモノを咥えた中は、脈動し蠕動している。
熱く蕩けていて、ぐねぐねと絡みついて離そうとしない。
「(気持ち良すぎて、腰に力が入らない……)」
何とか射精しないように踏ん張りながら、ゆっくりとピストンを始めるも、三回も続かず中へ吐精してしまった。
「ーーーーッ……んぅ、ぐ」
「ん、んん!」
緩慢な動きでの即射精。純一郎にとって低刺激であったはずだが、支配人とマサヒリナが隣室にいる職場セックスという状況も相まっていつもより興奮していたようで、カスミの射精を感じながら内腿を震わせ静かに絶頂を迎えていた。
机に置かれた器材が純一郎の震えを感じ取ってカチカチと小さく鳴る。
「……はぁ、ジュンイチローさん、抜きますね」
「…………ん」
癖でカクカクと腰を動かして、精液が溢れないように尻を突き上げて挿入されていたモノを送り出した。
「汗……拭いますね」
「はい」
衣服を整えて、再び椅子に座った純一郎が後ろ髪を上げて汗に濡れた頸を晒す。
しっかりと純一郎のフェロモンが移った何枚かのガーゼを瓶に保管し、サンプル採取は終了した。
部屋を退室して、支配人と共に調香師二人に後を任せて店を出た。
「カスミさん、ココで働いてるんですね」
「はい。現役の頃から調香師に憧れていたようでしたので。世間一般の真っ当な生き方が出来ているようでホッとしました」
「……はい」
真っ当に生きているカスミの職場でセックスしてしまった罪悪感にそっぽを向く純一郎。
「試作品を旦那さんにも判定してもらうのもありかもしれませんね」
「え?」
「あなたのフェロモンをよく一番理解している方だと思います。ご意見が欲しいのです」
「そうですか……そうですね」
純一郎のフェロモンを一番身近で感じ続けているモモ。
監修をするならば、彼以上の適任はいない。
「(……何回のリテイクが出るのか、あまり考えたくないな)」
純一郎の事となったら妥協をしない。
それこそ、純一郎のフェロモンを再現しようとするならば、生半可な仕上がりでは納得しないだろう。
「帰ったら頼んでみます」
「よろしくお願いします」
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