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31:口約束のコネクト
しおりを挟む治療で体力を消耗した彼は、電池が切れたようにコテンと眠ってしまった。
病室の移動と、呼吸補助機の事は他の人に任せて大先生達の元へ戻った。涙がまだ止まり切ってないけど。
「申し訳ありません。ちょっと感極まってしまって」
「いやいや、重度患者を一分も経たない内に完治させた処置は素晴らしい限りです。貴方の覚悟を思うと心が揺さぶられます」
「こちらこそすまない。君達の関係も知らず不躾に……」
「関係?」
「恋人同士と聞いた」
え!? 誰に、って……ワン先生しか居ない!!
「ワン先生! 私達は恋人同士じゃありませんってば!」
「はぁ!? まだ告白してないのか! ヘタレめ!」
「酷い!」
私とワン先生の話に困惑する大先生達を見かねて、副医院長が話を戻した。
「おっほん。アーサン先生、先程の処置について先生方もお話が聞きたいそうなので、場所を移動しましょう」
「ああ、はい!」
それから、先生方からいろいろ質問責めにあった。素人質問ですがみたいなものもいっぱいあったが、ちゃんと話せた。
ただ、疑問点については答えが出なかった。
脳に魔石が再形成されるのは、何故か。
今のところ全くわからない。今後も第一研究者として解明に力を注ぎ続ける必要がありそう。
「それでは、そろそろお暇させていただこう。アーサン先生、次は是非講演会にいらしてください」
「ああ、それともし、もっといい設備が欲しかったらガレー・ゼ・ルーラ大病院に来てくださいね。君なら大歓迎です」
「お二方ともありがとうございます。丁重にお断りさせていただきます」
「「あらら」」
先生方をお見送りする際に、セニア先生から小包を貰った。
「ん」
「あの、コレはなんですか?」
「個人的な礼だ」
「私何もしてませんけど」
「……君の薬に助けられた一人とでも言っておこう。何の薬かは言えないが」
言えない時点で候補が一つに絞られますよ先生。
「そうですか。お大事にしてください。ありがとうございました」
「ああ」
セニア先生も尿路結石持ちだったんだ。忙しくて食生活乱れたんだろうな。苦労したろうな。
クールな先生のストレスを思うとホロリとくる。だって、魔力障害科は難病が多いから、試行錯誤で時間が溶ける。
私もワン先生に指摘されなかったら危なかっただろうな。
それでもスタイルの良いセニア先生が羨ましくもある。
「……ふぅぅ……」
青空が綺麗だと、久しぶりに思った。
※※※
彼の処置から数日後の昼時。
「もう触っても痛くないんだ」
「ベタベタ触るな気持ち悪い」
「触診ですー」
一般的な病室へと移動した彼の経過を主治医のマグナさんが行っている。
二人の相変わらずなペースが戻ってきた。
マグナさんが彼の呼吸器をズラし、自力呼吸の確認を行うのを横で見ていた。研究室での仕事をサボって。
「呼吸の補助機はそろそろ外してもいいだろう」
「そっか。心肺機能も回復したんだ。ならご飯も食べれるね」
「ちょっとづつなら」
「アーサン」
「何ッんえ!?」
マグナさんが居る前で、肩を掴み寄せてキスをされた。頬に。
「………ひぇ!? な、何、待って!」
「忘れてるのかと思って」
「…………忘れてないよ」
「おい、俺が居ないところでイチャついてくれ。気不味いわ」
「ごめんなさい」
特に驚いた様子もなく、マグナさんは呆れ気味に肩を落として溜め息を吐いた。
「コイツのリハビリまで十分ある。時間になったら仕事に戻れよアーサン」
「わかった」
『シャー』
ベッドを仕切るカーテンを閉じて出て行ったマグナさん。気を遣って二人っきりにしてくれたんだ。
「……アーサン」
手を取られて、掌に頬を寄せられる。期待の眼差しに心臓が跳ねる。
「…………キスして、アーサン」
あまりにも甘やかな囁き。
目を瞑って身を委ねる彼に、触れた手を後頭部に回して……優しく唇を重ねた。
「んっ……」
お互いに少しかさついてるけど、とても柔らかい。初めてのキス。
「んっ……ふぅっ……んぁっ、む……」
「はっ」
彼の頭を固定して、何度も啄むように唇を味わう。彼は少し息苦しそうにしているけど、嫌がりはしなかった。
興奮で息が荒くなる彼はとても新鮮だった。
「はぁ……はぁ……アーサン」
「ん?」
「好き」
完全に不意打ちだった。まさか彼の方から、その言葉を聞けるだなんて……
「……私も」
「知ってる。でも、ちゃんと言って欲しい」
「…………好き。大好き」
「うん……」
「世界で一番、君が好き」
もう一度、彼にキスをした。
リハビリの時間まで、私達は何度も想いを伝えあった。
そして、痛みを抱えていない彼は、こんなにも穏やかなのだと初めて知った。
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