神の剣~ミスガルド11世紀の戦い~

ジロ シマダ

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3章:エントの森

エルフとドワーフ

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 木の枝に座り不寝番を務める2人は動く気配を感じ、揃って視線を動かす。下からダグザが見上げていた。
「僕は少しその辺を見てくるよ」
カムロスはダグザはミーミルに用があると気が付き、枝を飛び移りどこかへ消える。カムロスの行動に眉間に皺を寄せつつミーミルは枝から飛び降りた。
「なに?」
軽やかに降り立ち、優しく穏やかな表情でミーミルはダグザを伺った。しかし、ダグザの表情は厳しいまま。

「どうしたの? 寝なくていいの」
「目が覚めてしまったんだ。お主の姿が見えて気になっていたことを聞こうと思ってな」
「なに?」
首を傾げるミーミルを気持ちが悪いという目でダグザはみた。
「お主はわしらが嫌いなんだろう。気持ち悪い笑みなんぞ。いらん」
ダグザがミーミルをしたから見つめた。しばらくは何を言っているのか理解できないという困惑の表情を浮かべていたミーミル。ダグザの向ける目に変化がないことに、ミーミルは馬鹿らしくなり鼻で笑った。
「いつから気が付いていたの」
腕を組み醒めた表情でミーミルはダグザを見下ろす。その目の冷たさにダグザは目を細めた。
「始めからだ。カムロスと全く違ったんでわかりやすかったわい」
「油断ならないドワーフだね」
「油断ならんのは、お主のほうだ。あの笑顔には騙されそうになる」
「でも騙されなかったじゃないか」
「まぁな、お主はドワーフが嫌いか」
「嫌いだね。というよりも人間も小人族もオークなんかも嫌い」

 いつもの優しい笑顔は幻ではないかと思うほどの憎悪の表情を浮かべるミーミルに闇が深いとダグザは思った。
「そういう君はどうなの? エルフなんか嫌いだろう」
肩をすくめてにやりと笑うミーミルにダグザは肩をすくめた。
「好きではない。しかし、嫌いでもない」
「ふーん」
上げていた口角をつまらなそうにミーミルは下げて、横髪を触り始めた。ダグザは全くミーミルから視線を外さなず、見つめていた。危険な旅で、わだかまりはいらない摩擦を生みかねない。それならいっそのこと嫌いならば嫌いだとオープンでいこう、というのがダグザの考えだ。
「ベレヌスは別のようじゃな。ベレヌスは人間だぞ」
「あの子は特別だよ。アルロもかな」
「どうして特別なんじゃ」
「ヴォルバの血を引く人間だが人間と一括りにできない子だよ。ヴォルバがいたからこそ今があるんだから」
ダグザは眉間のしわを深くした。今の言い方ではまるで
「ではベレヌスやアルロがヴォルバの血を引いていなければ嫌いということじゃな」
ミーミルは何か言おうと口が動いたが、何も言葉を発さず、ダグザに背を向けると一度舌打ちをして木の上に戻った。振り返らず、カムロスの気配を頼りにミーミルは枝を飛び移る。その背にダグザの視線を感じながら逃げるように飛んだ。

「冷たい奴かと思ったが、ただのこじれた奴なのかもしれんな」
ダグザは髭を撫でながらミーミルが消えたほうを見続けた。少しはミーミルを知ることができたのだから及第点だろうと、眠る仲間のほうを振り返る。
「!?」
 振り返ったダグザはアルロとベレヌスが起きて、自分たちを見ていたことに気が付いた。驚き固まっているダグザに2人は手を軽く振ると、再び地面に横になった。ダグザは困ったように頭をかきむしると、もう一度寝るべく寝転がった2人のそばに歩み寄った。





—夜が明けても暗い森をまた歩き出す。
ーだれも文句を言わず足を動かし続ける。
しかし、心は荒み始めているのかだれも言葉を発さない。静かな一団となっていた。
 ドンナトールの後ろを歩いていた双子の足が止まった。あたりを見渡し、カムロスが横にあった木に駆けあがった。
「どうした」
「なんか変な気配を感じたんだけど」
ミーミルはカムロスが消えた木を見上げ、戻ってくるのを待つ。仲間たちも近寄り警戒を強め、あたりを伺った。すぐにカムロスは舞い降り戻ってくる。だいぶ先にある枝から着地の音を立てず軽やかに。まるで舞い落ちる葉か蝶のように軽い。
「なにもいないみたい。でもおかしいのはおかしい。森が静かすぎる」
「どうするかの。様子をみるか」
ドンナトールは白い髭を撫でながら考える。すぐにアルロが首を振った。
「後のことを考えれば進んだほうがいいと思う」
「そうだな」
アルロの考えにベレヌスは同意を示す。ドワーフたちも頷いている。その様子にドンナトールはそうじゃな、と答えると地図に目を落とす。少し足を速めれば昼過ぎにつくだろうかと考える。
 ベレヌスはちらりとドワーフの1人に目を向ける。予知か幻を見たせいなのかもしれないと首を振る。ベレヌスの目にはゴヴニュの目が濁ったように見える。
なにかに惑わされた人間、欲にまみれ人の道を外れたものが宿すような濁りがある。そんな風に見えたのだ。
「ゴヴニュ、大丈夫か」
ベレヌスの問いかけにゴヴニュはすぐに答えることができなかった。アルロの腰から意識を戻すのに時間がかかった。ゴヴニュ本人もこれではいけないと、気が付けばすぐに目をそらし他のことを考えるようにしていた。
しかし、いつの間にか意識はアルロの腰にいっている。囚われているとゴヴニュはわかっていた。
  その心を見破られたのではないかと、なんでもないふうを装いベレヌスを見上げた。そこには心配そうな目があった。薄琥珀の瞳は不思議な採光を宿し、ゴヴニュの罪の意識をえぐる。ゴヴニュは目をそらしてしまった。すぐに腕を組み不機嫌な様子を見せ、逆に問いかけた。
「なぜだ」
「疲れているような気がして」
「問題ない」
ゴヴニュは心の中で詰った。己の愚かしい心を詰る。ベレヌスの問いかけの様子にほかのドワーフ2人も心配げな目を向けるのに、軽く手を挙げて答えたゴヴニュはの耳に頭に言葉が静かに静かに響き続ける。

—連れていけ
—一つにせよ
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