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第四章 侵食
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1
透の警告は、的中した。
翌週、美鈴は職員室で異変に気づいた。
同僚の教師たちが、美鈴を見る目が変わっていた。挨拶をしても、反応が鈍い。まるで、美鈴が誰なのか思い出せないかのような。
「田宮先生」
田宮は書類から顔を上げた。
「ああ、えっと……」
「森内です」
「ああ、そう。森内先生。どうしましたか?」
一瞬の躊躇。それが、すべてを物語っていた。
美鈴は自分の机に戻った。机の上の名札を見る。「森内美鈴」という文字。確かに存在している。しかし、それを見る人々の目には、もう映っていない。
2
授業中、さらに恐ろしいことが起きた。
2年B組で国語の授業をしている時、生徒たちの反応が徐々におかしくなっていった。
「それでは、この文章の意味を考えてみましょう」
美鈴が問いかけても、生徒たちは黙っている。誰も手を挙げない。
「誰か、わかる人?」
沈黙。
やがて、一人の男子生徒が小声で囁いた。
「なあ、今日の国語って自習じゃなかったっけ?」
「え? でも先生が……」
「先生? どこに?」
美鈴は血の気が引いた。
「ここにいるわ! 私はここにいる!」
叫んでも、誰も反応しない。生徒たちは教科書を開き、自習を始めた。
美鈴は教壇に立ったまま、ただ呆然とその光景を見ていた。
3
放課後、美鈴は再び教室で透と話した。
「始まってしまいましたね」透の声は悲しげだった。「先生も、消されていく」
「なぜ? 私は何も悪いことをしていない」
「この学校は、真実を見ようとする者を許さないんです。僕のことを認識しようとした。姉のことを調べようとした。それが『罪』なんです」
「そんな……」
「この学校の『平和』は、見ないこと、知らないことで保たれている。誰もが無意識に加担している。善良な人々が、悪意なく、ただ『見ないようにする』ことで」
美鈴は拳を握りしめた。
「私は諦めない。あなたを、あなたのお姉さんを、このまま『なかったこと』にはさせない」
「先生……」
「どうすればいいの? この呪いを解くには」
長い沈黙の後、透が答えた。
「全校生徒の前で、真実を語るしかありません。この学校で何が起きているのか。姉に何が起きたのか。そして、僕たちがどうやって『消されて』いったのか」
「でも、それをすれば……」
「はい。先生も完全に消えてしまうかもしれません。集団の無意識による拒絶が、最大限に働くから」
「……それでも」
美鈴は立ち上がった。
「教師として、生徒を見えないふりはできない。たとえこの世界が、それを拒んでも」
透の警告は、的中した。
翌週、美鈴は職員室で異変に気づいた。
同僚の教師たちが、美鈴を見る目が変わっていた。挨拶をしても、反応が鈍い。まるで、美鈴が誰なのか思い出せないかのような。
「田宮先生」
田宮は書類から顔を上げた。
「ああ、えっと……」
「森内です」
「ああ、そう。森内先生。どうしましたか?」
一瞬の躊躇。それが、すべてを物語っていた。
美鈴は自分の机に戻った。机の上の名札を見る。「森内美鈴」という文字。確かに存在している。しかし、それを見る人々の目には、もう映っていない。
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授業中、さらに恐ろしいことが起きた。
2年B組で国語の授業をしている時、生徒たちの反応が徐々におかしくなっていった。
「それでは、この文章の意味を考えてみましょう」
美鈴が問いかけても、生徒たちは黙っている。誰も手を挙げない。
「誰か、わかる人?」
沈黙。
やがて、一人の男子生徒が小声で囁いた。
「なあ、今日の国語って自習じゃなかったっけ?」
「え? でも先生が……」
「先生? どこに?」
美鈴は血の気が引いた。
「ここにいるわ! 私はここにいる!」
叫んでも、誰も反応しない。生徒たちは教科書を開き、自習を始めた。
美鈴は教壇に立ったまま、ただ呆然とその光景を見ていた。
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放課後、美鈴は再び教室で透と話した。
「始まってしまいましたね」透の声は悲しげだった。「先生も、消されていく」
「なぜ? 私は何も悪いことをしていない」
「この学校は、真実を見ようとする者を許さないんです。僕のことを認識しようとした。姉のことを調べようとした。それが『罪』なんです」
「そんな……」
「この学校の『平和』は、見ないこと、知らないことで保たれている。誰もが無意識に加担している。善良な人々が、悪意なく、ただ『見ないようにする』ことで」
美鈴は拳を握りしめた。
「私は諦めない。あなたを、あなたのお姉さんを、このまま『なかったこと』にはさせない」
「先生……」
「どうすればいいの? この呪いを解くには」
長い沈黙の後、透が答えた。
「全校生徒の前で、真実を語るしかありません。この学校で何が起きているのか。姉に何が起きたのか。そして、僕たちがどうやって『消されて』いったのか」
「でも、それをすれば……」
「はい。先生も完全に消えてしまうかもしれません。集団の無意識による拒絶が、最大限に働くから」
「……それでも」
美鈴は立ち上がった。
「教師として、生徒を見えないふりはできない。たとえこの世界が、それを拒んでも」
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