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一章・冒険者・ナナ
ご褒美
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物事は最初が肝心だ。
体も気分も軽快とはいかないが、私はギルドに足を運ぶことにした。
いい依頼があるとも限らないけど、両親が安心してくれるくらい生活が軌道に乗るまでは足繁く通おうと思う。
ーーーーー
「あっ、ナナさん!」
ギルドの扉を開けるなり、受付のお姉さんが手を振って私を呼んでいたので、ぎこちないながらも小さく手を上げて精一杯の愛嬌を見せてみた。
「昨日はお疲れ様!
この時間にいらっしゃったのは相当お疲れだったの?」
時刻は既に昼を回っている。
「慣れない事ばっかりだったもので…。」
「そうよねぇ、人を相手にするのも初めてだって聞いてたし。
でもまた来てくれて嬉しいわ。」
お姉さんは少し心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいたが、結局いつもの笑顔で微笑んでくれた。
私の王都デビューの相手がお姉さんで心底よかったと思ってる。
「そうそう、大事な事だから先に伝えておくわね。
昨日の村の奪還作戦の隊長だったディアスさんがさっき来ててね、是非ナナさんとお話ししたいって。
昨日は凄い活躍だったみたいだからきっといいお話よ!」
ディアスさんは昨日私達が依頼を終えた後も働いてたと思うんだけど、今日も私より早く起きてここに来てたんだと思うと感心してしまう。
「ちゃんと動けて私も安堵しました。
ディアスさんとはどこで話せますか?」
「ディアスさんなら、今は近くにある兵士詰所にいると思うからウチから使いを送れば遠からず来てくれると思うけど、ナナさん少しウチで待てる?」
「はい、大丈夫です。
依頼でも見て待ってますね。」
壁に設置された複数のボードには、ランク毎の依頼書が掲示されており、私はディアスさんがくるまでそれを眺めていることにした。
(やっぱり傭兵関連の依頼書は桁違いに多いな。)
本来C~Sしかボードはなかったであろうが、現在は「特務」という戦争関連の依頼がまとまって掲示されているボードがある。
やはりそのボードは他のそれと比べて所狭しと依頼書が並べられており、現状を知らしめている。
(国の兵士が足りないから冒険者も戦ってるんだろうけど、この分で戦争に勝てるのかしら)
なんだか未だピンとこず、他人事のように感じた。
「お待たせした。」
ボーッと依頼ボードを眺めていると後ろから声をかけられた。
声の主は当然ディアスさんだ。
「あ、いえ、わざわざ来てもらってすみません。」
「なに、私の方が用があったのだ。
私が出向くのが自然だろう。」
恐縮して何も言えなかった。
「メアリー。
すまんが卓を少し借りるぞ。」
ディアスさんは受付のお姉さんに声を掛け、窓際の円卓に私を誘った。
(お姉さんメアリーさんって言うんだ。)
「掛けてくれ。」
そう促され、私は小さく会釈をし椅子に座った。
「さて、早速だが昨日の作戦におけるお前の活躍は見事だった。
というか見事という言葉で片付けられるレベルではなかったな。
働いたのは殆どお前だけだし。」
ふふ、と小さくディアスさんは自嘲気味に笑っている。
「お前の戦いは昨日の一回、おまけに一瞬しか見ていないが、それでもこの国最高峰の使い手である事は疑いない。
いや、言葉を選ばずに言うなら私はあれ程の動きをできる人間を他に知らない。」
些か大仰な気もするが、こうも真っ直ぐに剣を褒めてもらえると、とても嬉しい。
「そこで昨日の人より多く働いた分の労いと、これからもその力を是非とも借りたいという投資の意味も兼ねて、お前に何か褒美を取らせたいのだが、何か望みはないか?
無論上役にも承知を得ているので遠慮なく言ってほしい。」
実は昨日ディアスさんから、後日話をしたいと言われた時点でご褒美を期待してしまっていた。
そして勿論何をお願いするかも考えてある!
「それでは…。」
望みは決まっていたとは言え、それを主張するのはやはり勇気がいる…。
私は生唾を飲んだ。
「ご、合同依頼を1人で受ける許可を下さい…」
口からは出なかったが、ディアスさんの顔があからさまに「えっ?」と言っていた。
体も気分も軽快とはいかないが、私はギルドに足を運ぶことにした。
いい依頼があるとも限らないけど、両親が安心してくれるくらい生活が軌道に乗るまでは足繁く通おうと思う。
ーーーーー
「あっ、ナナさん!」
ギルドの扉を開けるなり、受付のお姉さんが手を振って私を呼んでいたので、ぎこちないながらも小さく手を上げて精一杯の愛嬌を見せてみた。
「昨日はお疲れ様!
この時間にいらっしゃったのは相当お疲れだったの?」
時刻は既に昼を回っている。
「慣れない事ばっかりだったもので…。」
「そうよねぇ、人を相手にするのも初めてだって聞いてたし。
でもまた来てくれて嬉しいわ。」
お姉さんは少し心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいたが、結局いつもの笑顔で微笑んでくれた。
私の王都デビューの相手がお姉さんで心底よかったと思ってる。
「そうそう、大事な事だから先に伝えておくわね。
昨日の村の奪還作戦の隊長だったディアスさんがさっき来ててね、是非ナナさんとお話ししたいって。
昨日は凄い活躍だったみたいだからきっといいお話よ!」
ディアスさんは昨日私達が依頼を終えた後も働いてたと思うんだけど、今日も私より早く起きてここに来てたんだと思うと感心してしまう。
「ちゃんと動けて私も安堵しました。
ディアスさんとはどこで話せますか?」
「ディアスさんなら、今は近くにある兵士詰所にいると思うからウチから使いを送れば遠からず来てくれると思うけど、ナナさん少しウチで待てる?」
「はい、大丈夫です。
依頼でも見て待ってますね。」
壁に設置された複数のボードには、ランク毎の依頼書が掲示されており、私はディアスさんがくるまでそれを眺めていることにした。
(やっぱり傭兵関連の依頼書は桁違いに多いな。)
本来C~Sしかボードはなかったであろうが、現在は「特務」という戦争関連の依頼がまとまって掲示されているボードがある。
やはりそのボードは他のそれと比べて所狭しと依頼書が並べられており、現状を知らしめている。
(国の兵士が足りないから冒険者も戦ってるんだろうけど、この分で戦争に勝てるのかしら)
なんだか未だピンとこず、他人事のように感じた。
「お待たせした。」
ボーッと依頼ボードを眺めていると後ろから声をかけられた。
声の主は当然ディアスさんだ。
「あ、いえ、わざわざ来てもらってすみません。」
「なに、私の方が用があったのだ。
私が出向くのが自然だろう。」
恐縮して何も言えなかった。
「メアリー。
すまんが卓を少し借りるぞ。」
ディアスさんは受付のお姉さんに声を掛け、窓際の円卓に私を誘った。
(お姉さんメアリーさんって言うんだ。)
「掛けてくれ。」
そう促され、私は小さく会釈をし椅子に座った。
「さて、早速だが昨日の作戦におけるお前の活躍は見事だった。
というか見事という言葉で片付けられるレベルではなかったな。
働いたのは殆どお前だけだし。」
ふふ、と小さくディアスさんは自嘲気味に笑っている。
「お前の戦いは昨日の一回、おまけに一瞬しか見ていないが、それでもこの国最高峰の使い手である事は疑いない。
いや、言葉を選ばずに言うなら私はあれ程の動きをできる人間を他に知らない。」
些か大仰な気もするが、こうも真っ直ぐに剣を褒めてもらえると、とても嬉しい。
「そこで昨日の人より多く働いた分の労いと、これからもその力を是非とも借りたいという投資の意味も兼ねて、お前に何か褒美を取らせたいのだが、何か望みはないか?
無論上役にも承知を得ているので遠慮なく言ってほしい。」
実は昨日ディアスさんから、後日話をしたいと言われた時点でご褒美を期待してしまっていた。
そして勿論何をお願いするかも考えてある!
「それでは…。」
望みは決まっていたとは言え、それを主張するのはやはり勇気がいる…。
私は生唾を飲んだ。
「ご、合同依頼を1人で受ける許可を下さい…」
口からは出なかったが、ディアスさんの顔があからさまに「えっ?」と言っていた。
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