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一章・冒険者・ナナ

太陽と月はいつでも巡る

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かくして王都決戦は回避され、トラバルト将軍によって陥落した各地拠点もエーヴェルの手によって続々奪還された。

将軍に後詰がなかったのは衝撃だったが、おかげで奪還はすんなり達成され、またいつものように中央の小競り合いが続くという不思議な均衡が再び始まった。

私はというと、あれから3日経つが依頼を何も受けていない。
働かなきゃ、とは思うのだけど刃こぼれした愛剣を見るとどうも消沈してしまう。
決して戦えないようなものではないが、自らの未熟を思うと元気が出ない。

徒手で、とも思ったのだけれどそもそも剣を振れない戦いが私に何の意味があるのかと思うとそんな気にもなれない。
蓄え自体はそれなりにあるのだけれど…。



そしてようやく今日になって私は宿を出た。
とてもまだ戦う気にはなれないけど、このままではダメな私がますますダメになってしまう。
なんでもいいから仕事をしようと思いギルドへ向かう事にした。

(お掃除の仕事ととかないかな…。)


ーーーーー

「あっ!ナナさん!」

太陽のようなメアリーさんが私が入るや否や手を振っている。

「こんにちは、メアリーさん。」

「こんにちはナナさん、心配してたのよ。
やっぱり…剣の事?」

私はアイギスの依頼報告をした際に、顛末をメアリーさんには話していた。

私の剣への愛を知っているメアリーさんは、それを下らないと一笑に付す事なく聞いてくれた。
そして今も姿を見せなかった私の心を察してくれる。
本当にいい人だ。

「働かなきゃいけないんですけど、中々元気が出なくって…。」


「…私には気軽に気持ちを分かったなんて言えないけど、私に出来る事なら協力するから言ってね。」


「メアリーさん…。
ありがとうございます。」

弱っているところへのメアリーさんは効く。
私は唇をグッと噛み締めた。

「今日は戦闘がないような依頼があれば…。」

メアリーさんはお安い御用と、王都内でこなせる日用依頼を沢山紹介してくれた。

「それとねナナさん、あなたが来なかったこの3日間にね…」

数ある依頼と睨めっこしながらメアリーさんと話していると、ギルドの扉が開き立派な風体の男性が入ってきた。


「失礼する」


(誰だろう、凄い勲章の数。)


「受付の、本日はナナ殿はいらっしゃったかな?」
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