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続・魔界王立幼稚園ひまわり組
45:にょきにょきと大玉転がし
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にょきにょき競争……それは今年初めてやる全員参加の新しい競技。競技というよりは、まあちょっとした余興みたいなもので、魔界ならではというものです。というか、人間界ではやろうと思っても出来ませんのでこういうのは無かったのだけど。
今年は午前だけなので、障害物競争の後少し休憩しただけで、ここまで立て続けにやって来て大丈夫かなと心配した子供達ですが、疲れた様子も見せずにニコニコ顔で二組にわかれた。輪を描くように並んだ赤白各チームの真ん中には、少し大きめの壺が一つづつ。
「みんなー、お座りしてくださーい」
「あーい!」
声を掛けると、足のある子は三角座りで、それ以外の子も地面に身を低くしてお座りする。いつもはなかなか座らないひまわりさんのチビちゃん達も、バラ組やスミレ組のお兄さんお姉さん達がちゃんとリードしてくれて、みんなお行儀よく出来ました。エライなぁ、みんな。
準備完了というところで競技についての説明です。
「はーい、では会場の皆さんにルールを説明しますね」
ジラソレに代わって農業大臣エイジ君が、拡声草を握って競技場の真ん中に颯爽と現れた。横で小さく「きゃー」とてんちゃんが悶えてるのは見なかった事にする。子供達がお利口にしてるんだから補助職員も大人しくね。
「赤組白組、双方の輪の真ん中にある壺には土が入っています。そこに占い草の種を一粒づつ撒きます。周りで子供達が気合を込めて伸びろ伸びろと念じながら踊り、先に花を咲かせた方が勝ちです」
エイジ君の説明に、ああーと声を上げたのはドドイル国民だろう。この国の人はほとんど知ってる、魔王節(元旦)のお祭で毎年選ばれた魔女が行う一年の動向を占う行事と同じだからだ。正式名称は知らない。
いつから始まったのか定かで無いが、子供達が園の畑に種を蒔く時にジラソレと一緒に「にょきにょき体操」という謎の体操をすることから名前をつけた。別に体操に意味があるわけでなく、ただ笑いながら「元気に育てよ」という願いを込めた体操なのだが、ここ数年は定番になっている。実際に農業経験豊富なエイジ君によると、体操をしなかった種とした種では生育の具合が違うというデータもあるのだそうで、子供は笑いながら無意識に種を育むための魔力を送っているからだろうという事だ。
占い草は軽く魔力を送ってやるだけですぐに伸びて花を咲かせるのだが、そんな一個の種に園児が寄ってたかって無意識に魔力を送れば、あっという間に咲くだろう。そんなわけで今回採用となったのだ。実は勝敗は関係ない。園児が結婚式に捧げるものだったりする。
「それではみんな、用意はいいかな?」
エイジ君の声にスミレ組の紅白代表が立ち上がった。種を蒔く係である。
「にょきにょき競争開始!」
ぱーんの音で子供達の歌がはじまる。
「ま~ずは、指でぷすっ」
「ぷすっ♪」
年中の種まき係さんが土にくぼみを作りますよ。
「種をころん♪」
「ころん♪」
くぼみに種が蒔かれた。
「土をふんわり」
「ふんわり♪」
土をかけて種まき終了。さあ、次は年少の水撒き係さんが立ち上がる。赤組はペルちゃん。白組はウチのリノちゃん。
「お水をじゃー♪」
「じゃー!」
よしよし、ちゃんと出来たね二人とも。
「わはははは! いくぞ~!」
「ははははは~!」
ジラソレも加わって、全園児のにょきにょき体操がはじまった。
「にょきにょき、にょきにょき、おっきくな~れ!」
「おっきくな~れ♪ にょきにょき!」
畑でいつもやってるにょきにょき体操。うう、いつ見てもこれ、ものすごく可愛い。頭の上で両手を合わせて体をくねくねさせるのだが、本人たちは全身をくねくねさせてるつもりなんだろうが、実際は何故かみんなお尻をぽこんと突き出してそれをふりふりしてるだけなものだから、何とも言いようのないスタイル。中にはラミアや蔦魔族などホントにくねくねしてる子もいるんだけど、多分大人がやっても気持ち悪いだけのところを、子供がやるから可愛いんだろうな。
あっという間に芽が出た。
「の~びろのびろぉ! にょきにょき! わははは」
子供達の声に合わせてしゅるしゅると壺から空に向かって伸びていく芽。ぱかんと双葉が広がった。
「おあにゃ~咲いてくらさいぉ~!」
一際大きな声を上げてるのはリノちゃんだ。
うっ、流石はパパと魔王の眷属である私の子。無意識とはいえ薄紫に光ってめっちゃ魔力を送ってるし。案の定白組の苗が大きく伸び、早くも蕾をふくらませはじめた。
「赤組さんもがんばってー!」
この声援はザラキエルノ様だな。ちらっと貴賓席を見るとクマちゃん神様を絞め殺しそうな勢いで握りしめ、身を乗り出しておいでです。
その声に答えるように、今度はペルちゃんが薄っすら金色に輝いている。おお、流石はこちらも最上位淫魔と高位天使の子。追いつくように蕾をつけて同じくらいの高さまで伸びた。
「にょきにょきにょきにょき……」
子供達の体操も最高潮。そして花が開く。
「ぱっかーん!」
輪になった子供達が一斉に頭の上で両手を広げたと同時に、大きな大きな蓮に似た花が「ぽん」と音をたてて開いた。
白組さんの花はオレンジ色。赤組さんの花は紫色。ほぼ同時に開花。
「勝負は引き分け!」
魔界ではオレンジの花は深い愛情。紫の花は長い平和。つまりこの結婚の行く末は深い愛情に満ちて長く平穏に続くということ。そんなおめでたい色の花が咲いたのを、会場の皆がニコニコ笑顔の大拍手で祝福した。
『可愛らしい踊りじゃったわ。なかなか粋な事をする』
先代もご満悦のご様子。
「思ったより二人の魔力が強かったので早く終わりましたが」
『よいよい、頼もしい事じゃ。リンデルもユーリも安心出来よう』
まあ、そうだよね。ユーリちゃんが魔王になった時、義弟とウチの娘が補佐しなくてはならないのだ。今の魔王様にとってのウリちゃんのように。次世代の事を考えたらこのくらいでないといけないのかもしれない。
次世代かぁ……なんか想像もつかないけど、今の魔王様の治世は長いだろうからまだ考えなくても……などとしんみりしはじめたところで、やっぱりジラソレの声で現実に返った。
「わははは~! どんどん行くぞ! おめでたい競技の次は大玉ころがしだ~! わはははっ」
次も全員参加なので園児たちは席に戻らず、そのまんま並び直すだけ。私も早く子供達を並べるのを手伝わないと。
二列に並んで行うのだけど、白が一人足りないので、背丈の近いメイア先生が入ってくださる予定だったのだが……。
「ココナさん、飛び入りですがこちらに参加して頂いてよいですか?」
本部席から、きらびやかな衣装を身につけた子供を抱きかかえて、ユーリちゃんが走ってきた……って、ええっ? 確かに背丈も園児たちと同じ位の子だけど、この方は!
「夜王様……!」
それはホボルの国王、夜王様だった。結婚式に参列しておいでだとは知っておりましたが……そういえば夜はご立派なイケメンのお姿だそうですが、昼間の見た目は日光を避けるため幼児でしたね。
「うむ、人数が足りんと聞いて。メイア先生もお歳だし、出たいと魔王様と王子に頼んでみたらよいとの事だったので」
「た、助かりますけど……恐れ多いような」
「どうせ日暮れまで大人の部にも参加できんのでここで出してくれ」
夜王様も出るおつもりだったのですね、運動会に……。
急遽飛び入り参加ですが子供達に一国の王だからという遠慮など微塵もない。混じってしまうと完璧に同世代に見える方だし。実年齢は魔王様より年上なのですが……。
「おともらち、ふえたぉー!」
というわけで大歓迎の元、両チーム同じ人数で参ります。一応大人的にはご無礼があってはいけないということで、宰相の娘であるリノちゃんとチームを組んで頂きました。何もないところで転べる娘をあてがう方が余程ご無礼な気もしなくもないのは黙っておこう。
『羨ましいぞ、夜王よ! ワシも出たいのにっ!』
先代、そもそも体が無いので出られませんから。
ルールは簡単。後ろから大きな玉を送り、先頭の二人が受け取って、転がして走り、また後ろに回って玉を送る。全員早く走り終えた方が勝ち。もう少し大きい子や大人だったらコーンを回ってというコースを設定するところだが、なにぶん幼稚園児なんで受け取った玉を転がしながら後ろに回るだけですが。軽いけど自分たちほどある玉を扱うだけで大変です。
バラ組の巨人族の双子はそれぞれしゃがんでの参加。転がす時は立っていいけどね。白はリノちゃん夜王様組、赤はペルちゃんさんちゃん組がアンカー。大きな大きな紅白の玉がその最後尾のチームに手渡される。
あ、玉はやっぱり生きてます。空気をいっぱい吸い込んだ虫さんです。
「頑張りましょうぞ」
「あい!」
夜王様もリノちゃんも気合満々です。
「よーい、どん!」
パーン。走らなくてもよくなったメイア先生の合図で、競技開始。
「んしょ、んしょ!」
おお、どちらの組も順調に玉を送っております。タッチの差でやや赤が早く一番前に。モモちゃんとシュネちゃんの女の子チームがいい感じで転がしていきます。一方白も負けじとルネ君とジロ君が転がし始めた。年中年長のコンビは危なげない。コースアウトすることもなく二回目の玉送り。
その後第九組まではやや赤がリードしつつも無難に進んでいた。
「あっ!」
赤の玉があと少しで次の走者に渡るところで落ちてしまった。慌てて拾ったのはひまわり組のボウちゃん。にゅるん、と髪と足の蔦を長く伸ばして、そう遠くへ転げないうちに拾い上げた。
「……今のはいいんですかね?」
ウリちゃんは少々納得が行かない様子。確かに微妙に反則っぽい気がしなくもなかったけど。
「か、体の一部なんでいいんじゃない?」
ということにしておきましょう。
玉が落ちた隙に大きく逆転した白。ついに最終走者のリノちゃん夜王様チームに玉が渡った。
転がしはじめは息がぴったりで申し分なかった。だが、体操服の他の子に比べ、夜王様は丈の長い正装だ。その裾をリノちゃんが踏んだ。
幼児体型は頭が重い。顔からマトモに転んでしまわれた夜王様。
「……」
うわー、やっちまいましたかー! しかも転んだ上を玉で轢いていきますかリノちゃん!
夜王様はすぐに起き上がって何事も無かったかのように一緒に転がして行かれる。赤のペルちゃんさんちゃんチームもすごい勢いで追い上げ。
だが結局白がタッチの差でゴール。
ああ~という客席からの声は、赤が負けたことへか、それとも……。
「わははは! 白の勝ち! 赤も頑張った! みんなに拍手~!」
またも負けちゃったペルちゃん王子だったけど、じぃじばぁばも魔王様達も和やかムードなのでよいでしょう。
だが……。
貴賓席に戻られた夜王様に駆け寄る。
「夜王様、すみませんでしたウチの娘が……」
思い切り謝ってはみたものの、横でウリちゃんとユーリちゃんがお腹を抱えて笑ってるので、イマイチ説得力が無いですね。魔王様まで笑いを堪えておいでの顔だ。
「よい。楽しかった! 私も幼稚園に入りたい。駄目かなココナさん」
にっこりと満面の笑みを見せられた夜王様は、本当に愛らしくて、ひまわり組にいても違和感は無い。さぞスモックもお似合いでしょうが……。
駄目です。実年齢百九十歳は入園をお断りさせていただきます。
今年は午前だけなので、障害物競争の後少し休憩しただけで、ここまで立て続けにやって来て大丈夫かなと心配した子供達ですが、疲れた様子も見せずにニコニコ顔で二組にわかれた。輪を描くように並んだ赤白各チームの真ん中には、少し大きめの壺が一つづつ。
「みんなー、お座りしてくださーい」
「あーい!」
声を掛けると、足のある子は三角座りで、それ以外の子も地面に身を低くしてお座りする。いつもはなかなか座らないひまわりさんのチビちゃん達も、バラ組やスミレ組のお兄さんお姉さん達がちゃんとリードしてくれて、みんなお行儀よく出来ました。エライなぁ、みんな。
準備完了というところで競技についての説明です。
「はーい、では会場の皆さんにルールを説明しますね」
ジラソレに代わって農業大臣エイジ君が、拡声草を握って競技場の真ん中に颯爽と現れた。横で小さく「きゃー」とてんちゃんが悶えてるのは見なかった事にする。子供達がお利口にしてるんだから補助職員も大人しくね。
「赤組白組、双方の輪の真ん中にある壺には土が入っています。そこに占い草の種を一粒づつ撒きます。周りで子供達が気合を込めて伸びろ伸びろと念じながら踊り、先に花を咲かせた方が勝ちです」
エイジ君の説明に、ああーと声を上げたのはドドイル国民だろう。この国の人はほとんど知ってる、魔王節(元旦)のお祭で毎年選ばれた魔女が行う一年の動向を占う行事と同じだからだ。正式名称は知らない。
いつから始まったのか定かで無いが、子供達が園の畑に種を蒔く時にジラソレと一緒に「にょきにょき体操」という謎の体操をすることから名前をつけた。別に体操に意味があるわけでなく、ただ笑いながら「元気に育てよ」という願いを込めた体操なのだが、ここ数年は定番になっている。実際に農業経験豊富なエイジ君によると、体操をしなかった種とした種では生育の具合が違うというデータもあるのだそうで、子供は笑いながら無意識に種を育むための魔力を送っているからだろうという事だ。
占い草は軽く魔力を送ってやるだけですぐに伸びて花を咲かせるのだが、そんな一個の種に園児が寄ってたかって無意識に魔力を送れば、あっという間に咲くだろう。そんなわけで今回採用となったのだ。実は勝敗は関係ない。園児が結婚式に捧げるものだったりする。
「それではみんな、用意はいいかな?」
エイジ君の声にスミレ組の紅白代表が立ち上がった。種を蒔く係である。
「にょきにょき競争開始!」
ぱーんの音で子供達の歌がはじまる。
「ま~ずは、指でぷすっ」
「ぷすっ♪」
年中の種まき係さんが土にくぼみを作りますよ。
「種をころん♪」
「ころん♪」
くぼみに種が蒔かれた。
「土をふんわり」
「ふんわり♪」
土をかけて種まき終了。さあ、次は年少の水撒き係さんが立ち上がる。赤組はペルちゃん。白組はウチのリノちゃん。
「お水をじゃー♪」
「じゃー!」
よしよし、ちゃんと出来たね二人とも。
「わはははは! いくぞ~!」
「ははははは~!」
ジラソレも加わって、全園児のにょきにょき体操がはじまった。
「にょきにょき、にょきにょき、おっきくな~れ!」
「おっきくな~れ♪ にょきにょき!」
畑でいつもやってるにょきにょき体操。うう、いつ見てもこれ、ものすごく可愛い。頭の上で両手を合わせて体をくねくねさせるのだが、本人たちは全身をくねくねさせてるつもりなんだろうが、実際は何故かみんなお尻をぽこんと突き出してそれをふりふりしてるだけなものだから、何とも言いようのないスタイル。中にはラミアや蔦魔族などホントにくねくねしてる子もいるんだけど、多分大人がやっても気持ち悪いだけのところを、子供がやるから可愛いんだろうな。
あっという間に芽が出た。
「の~びろのびろぉ! にょきにょき! わははは」
子供達の声に合わせてしゅるしゅると壺から空に向かって伸びていく芽。ぱかんと双葉が広がった。
「おあにゃ~咲いてくらさいぉ~!」
一際大きな声を上げてるのはリノちゃんだ。
うっ、流石はパパと魔王の眷属である私の子。無意識とはいえ薄紫に光ってめっちゃ魔力を送ってるし。案の定白組の苗が大きく伸び、早くも蕾をふくらませはじめた。
「赤組さんもがんばってー!」
この声援はザラキエルノ様だな。ちらっと貴賓席を見るとクマちゃん神様を絞め殺しそうな勢いで握りしめ、身を乗り出しておいでです。
その声に答えるように、今度はペルちゃんが薄っすら金色に輝いている。おお、流石はこちらも最上位淫魔と高位天使の子。追いつくように蕾をつけて同じくらいの高さまで伸びた。
「にょきにょきにょきにょき……」
子供達の体操も最高潮。そして花が開く。
「ぱっかーん!」
輪になった子供達が一斉に頭の上で両手を広げたと同時に、大きな大きな蓮に似た花が「ぽん」と音をたてて開いた。
白組さんの花はオレンジ色。赤組さんの花は紫色。ほぼ同時に開花。
「勝負は引き分け!」
魔界ではオレンジの花は深い愛情。紫の花は長い平和。つまりこの結婚の行く末は深い愛情に満ちて長く平穏に続くということ。そんなおめでたい色の花が咲いたのを、会場の皆がニコニコ笑顔の大拍手で祝福した。
『可愛らしい踊りじゃったわ。なかなか粋な事をする』
先代もご満悦のご様子。
「思ったより二人の魔力が強かったので早く終わりましたが」
『よいよい、頼もしい事じゃ。リンデルもユーリも安心出来よう』
まあ、そうだよね。ユーリちゃんが魔王になった時、義弟とウチの娘が補佐しなくてはならないのだ。今の魔王様にとってのウリちゃんのように。次世代の事を考えたらこのくらいでないといけないのかもしれない。
次世代かぁ……なんか想像もつかないけど、今の魔王様の治世は長いだろうからまだ考えなくても……などとしんみりしはじめたところで、やっぱりジラソレの声で現実に返った。
「わははは~! どんどん行くぞ! おめでたい競技の次は大玉ころがしだ~! わはははっ」
次も全員参加なので園児たちは席に戻らず、そのまんま並び直すだけ。私も早く子供達を並べるのを手伝わないと。
二列に並んで行うのだけど、白が一人足りないので、背丈の近いメイア先生が入ってくださる予定だったのだが……。
「ココナさん、飛び入りですがこちらに参加して頂いてよいですか?」
本部席から、きらびやかな衣装を身につけた子供を抱きかかえて、ユーリちゃんが走ってきた……って、ええっ? 確かに背丈も園児たちと同じ位の子だけど、この方は!
「夜王様……!」
それはホボルの国王、夜王様だった。結婚式に参列しておいでだとは知っておりましたが……そういえば夜はご立派なイケメンのお姿だそうですが、昼間の見た目は日光を避けるため幼児でしたね。
「うむ、人数が足りんと聞いて。メイア先生もお歳だし、出たいと魔王様と王子に頼んでみたらよいとの事だったので」
「た、助かりますけど……恐れ多いような」
「どうせ日暮れまで大人の部にも参加できんのでここで出してくれ」
夜王様も出るおつもりだったのですね、運動会に……。
急遽飛び入り参加ですが子供達に一国の王だからという遠慮など微塵もない。混じってしまうと完璧に同世代に見える方だし。実年齢は魔王様より年上なのですが……。
「おともらち、ふえたぉー!」
というわけで大歓迎の元、両チーム同じ人数で参ります。一応大人的にはご無礼があってはいけないということで、宰相の娘であるリノちゃんとチームを組んで頂きました。何もないところで転べる娘をあてがう方が余程ご無礼な気もしなくもないのは黙っておこう。
『羨ましいぞ、夜王よ! ワシも出たいのにっ!』
先代、そもそも体が無いので出られませんから。
ルールは簡単。後ろから大きな玉を送り、先頭の二人が受け取って、転がして走り、また後ろに回って玉を送る。全員早く走り終えた方が勝ち。もう少し大きい子や大人だったらコーンを回ってというコースを設定するところだが、なにぶん幼稚園児なんで受け取った玉を転がしながら後ろに回るだけですが。軽いけど自分たちほどある玉を扱うだけで大変です。
バラ組の巨人族の双子はそれぞれしゃがんでの参加。転がす時は立っていいけどね。白はリノちゃん夜王様組、赤はペルちゃんさんちゃん組がアンカー。大きな大きな紅白の玉がその最後尾のチームに手渡される。
あ、玉はやっぱり生きてます。空気をいっぱい吸い込んだ虫さんです。
「頑張りましょうぞ」
「あい!」
夜王様もリノちゃんも気合満々です。
「よーい、どん!」
パーン。走らなくてもよくなったメイア先生の合図で、競技開始。
「んしょ、んしょ!」
おお、どちらの組も順調に玉を送っております。タッチの差でやや赤が早く一番前に。モモちゃんとシュネちゃんの女の子チームがいい感じで転がしていきます。一方白も負けじとルネ君とジロ君が転がし始めた。年中年長のコンビは危なげない。コースアウトすることもなく二回目の玉送り。
その後第九組まではやや赤がリードしつつも無難に進んでいた。
「あっ!」
赤の玉があと少しで次の走者に渡るところで落ちてしまった。慌てて拾ったのはひまわり組のボウちゃん。にゅるん、と髪と足の蔦を長く伸ばして、そう遠くへ転げないうちに拾い上げた。
「……今のはいいんですかね?」
ウリちゃんは少々納得が行かない様子。確かに微妙に反則っぽい気がしなくもなかったけど。
「か、体の一部なんでいいんじゃない?」
ということにしておきましょう。
玉が落ちた隙に大きく逆転した白。ついに最終走者のリノちゃん夜王様チームに玉が渡った。
転がしはじめは息がぴったりで申し分なかった。だが、体操服の他の子に比べ、夜王様は丈の長い正装だ。その裾をリノちゃんが踏んだ。
幼児体型は頭が重い。顔からマトモに転んでしまわれた夜王様。
「……」
うわー、やっちまいましたかー! しかも転んだ上を玉で轢いていきますかリノちゃん!
夜王様はすぐに起き上がって何事も無かったかのように一緒に転がして行かれる。赤のペルちゃんさんちゃんチームもすごい勢いで追い上げ。
だが結局白がタッチの差でゴール。
ああ~という客席からの声は、赤が負けたことへか、それとも……。
「わははは! 白の勝ち! 赤も頑張った! みんなに拍手~!」
またも負けちゃったペルちゃん王子だったけど、じぃじばぁばも魔王様達も和やかムードなのでよいでしょう。
だが……。
貴賓席に戻られた夜王様に駆け寄る。
「夜王様、すみませんでしたウチの娘が……」
思い切り謝ってはみたものの、横でウリちゃんとユーリちゃんがお腹を抱えて笑ってるので、イマイチ説得力が無いですね。魔王様まで笑いを堪えておいでの顔だ。
「よい。楽しかった! 私も幼稚園に入りたい。駄目かなココナさん」
にっこりと満面の笑みを見せられた夜王様は、本当に愛らしくて、ひまわり組にいても違和感は無い。さぞスモックもお似合いでしょうが……。
駄目です。実年齢百九十歳は入園をお断りさせていただきます。
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