私のレンズに写るものは 〜視覚障害を持つ少女〜

梅屋さくら

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3. 〜理人〜

 僕はベッドに座りながらいろいろなことに考えを巡らせるのが好きだ。
その日教わった公式を思い出したり、ブラックホールに思いを馳せたりすることもあるが、中学生あたりからはもっぱら光穂のことばかり考えてしまう。
なにも聞こえない僕だけど、それは良く捉えるといつでも静寂の中にいられるということになる。
 静寂はなにかを考えるのには最高の環境だ。
 バスケットボールが床とぶつかって鳴る音すら知らないのはいちプレイヤーとして悔しい点ではあるが。

 今日は光穂が男性に背負われていた場面を思い出す。
そしてその後の「平気」と言いながら見せた笑顔も。
 彼女が僕に弱さを見せたことはあまりない。
それは無理をする性格なのか、僕も障害を持っているからなのか……だめだな、最近はこうやってなんでも自分に障害があるからだと決めつけてしまう。
だから自分が光穂の近くにい続けられる自信がないのだろう。
「僕が光穂を守る」、そんな言葉は頭の中に浮かんだことは数えきれないほどあるのに、素直にそれを表現できない。

 そういえば小さいとき、光穂が目が見えないことで大泣きしていたっけ。
あのとき僕は自分も障害を持っていることが無性に嫌になった、というのもなかったとは言えないが、光穂が泣いたから僕が泣いた、のほうが正しいと思う。
それくらい彼女にはなんの根拠もないシンパシーを感じていたんだろう。

 そのシンパシーに恋という名前を見つけたのは小学校に入ってからだった。
 恋……なんて素敵な響きなんだ。
そう思ってその言葉を知った頃は何度も繰り返して恋とつぶやいたり恋とノートの端に書いたりした。
一度恋と書いたまま隣の席のやつにノートを見せてしまってしばらくいじられた。
「誰⁉︎」と言われて僕は拒んだのだが、すぐにその相手が光穂だとばれてしまった。
周りから見るとわかりやすい、らしい。

 それからも僕は唯一と言っても良い親友、光穂の行くところ行くところに付いて行っていた。
それはもっと仲良くなって付き合ったりしてやろうなんて考えたからではない。
単純に彼女といる時間が楽しかった。それだけだ。
 だから小学校高学年になってからかいが始まって僕らがそれまでよりは一緒にいられなくなったことは僕にとっては楽しい時間が奪われたようで辛かった。
 高校生になってからかいが止むと、僕らは自然と行動を共にすることが以前のように増えた。
 過去と違う点は、光穂の“女の子特有の甘い匂い”が鼻をふわりと包むとどきりと心臓が大きく動くようになった点だ。
彼女の鎖骨あたりが見えた時にも同じような感覚になるところも時の経過を感じさせる。

 今僕は日々体を鍛えている。
それはバスケットボールのためでもあるけれど、光穂を守れる男になるためでもある。
光穂を守れる男に……そんなことを言ったら親にもクラスメイトにも笑われるだろう。
それほど僕は彼女を姉のように思いどこへでもついていったし頼りきりだった。
 でももう高校生だ。
そろそろ僕は立派な男だ、と示しても良いように思うのだ。
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