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19. 〜光穂〜
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理人が一緒に清也の家まで付き添ってくれた。
「ここだよ。じゃあ、いってらっしゃい」
彼はそれだけ言って私の肩をぽんぽんとしてから去っていった。
ありがとう、と伝える前に遠くへ行ってしまった。
手に提げている、理人が選んで買ってくれたプリンやゼリーやスポーツドリンクが入ったビニール袋ががさがさと騒がしい。
そして、私の心臓の音も騒がしい。
コンコン。
ノックして少し経って、「はーい」という声がこちらに近付いてくる。
ガチャっと開いたドア、サンダルのような軽い足音。
「光穂ちゃん?」
「突然ごめんなさい、理人から風邪だって聞いて来ちゃいました。お邪魔して良いですか?」
私としてはかなり積極的に頑張ったと思うのだが、清也はうーんと唸って、頭をぽりぽりと掻く。
「ありがたいけどうつしたくないしなあ」
「でもやっぱり風邪のとき1人だと大変なことも多いですよね?」
私はここで積極的にいってみる。
するとまた彼は頭を掻いて、今度はドアを手で押さえたまま一歩下がった。
「じゃあ、いらっしゃい」
嬉しくて思わず笑顔になった。
「お邪魔します!」
初めて入った清也の部屋は彼の匂いに満ちていてなんだかすごくどきどきした。
腕を引かれてソファに座り、私は買ってきたものを差し出した。
清也はベッドに座ったようで、ぎしぎしと軋む音が聞こえる。
「ありがとう。次の撮影の件だけど……1週間先延ばしして良いかな」
私はもちろん承諾の返事をして、彼に横になるよう促した。
もう熱は平熱に近いが、どうも体がだるくて立っているのがつらい、と彼は言っていた。
少し経つと静かな寝息が聞こえてきた。
とても穏やかで、聞いているこちらも眠くなる。
そうだ、と思い立ち、バッグに入れてきたタオルを取り出した。
そして手探りで水道を探し、タオルを濡らす。
寝息の方に近寄ってタオルを清也の額にそっと乗せると彼はふふっと微笑んだような声を出した。
それが笑ったのかただ息が漏れたのかはわからないが、清也が近くにいることをより強く感じて嬉しかった。
私はそれから、先ほど座ったソファに戻って清也の寝息に耳を立てた。
この穏やかな心地よい時間から曲のイメージがどんどん膨れ上がってくる。
「るるる……るる……」
なるべく起こさないように歌うつもりが、気持ちが良くていつも家でするように歌った。
すると突然、清也が声を発した。
「綺麗な声、だね」
その言葉には笑みが含まれていて、優しくて温かい声だった。
「すみません、起こしちゃって」
「いや素敵な歌で目覚めて幸せな気分だよ。作曲のほうはどう?」
ここで私は作曲に行き詰まっていることを話した。
初めての挑戦で不安であることも。
すると清也はベッドから体を起こして私の頭にその大きな手をぽんと乗せた。
そして手をゆっくりと動かして私の髪にそっと触れるように撫でた。
「誰だって最初は不安だと思う。だけど俺は今の歌声聞いて、光穂ちゃんの作った曲を聴いてみたいと思った」
彼の手が止まり、部屋の中が静けさに包まれた。
「だから俺のために曲を作ってくれないかな?」
そのとき、私は心の声を聞いた。
ああ、私、清也さんのこと好きなんだ。
「ここだよ。じゃあ、いってらっしゃい」
彼はそれだけ言って私の肩をぽんぽんとしてから去っていった。
ありがとう、と伝える前に遠くへ行ってしまった。
手に提げている、理人が選んで買ってくれたプリンやゼリーやスポーツドリンクが入ったビニール袋ががさがさと騒がしい。
そして、私の心臓の音も騒がしい。
コンコン。
ノックして少し経って、「はーい」という声がこちらに近付いてくる。
ガチャっと開いたドア、サンダルのような軽い足音。
「光穂ちゃん?」
「突然ごめんなさい、理人から風邪だって聞いて来ちゃいました。お邪魔して良いですか?」
私としてはかなり積極的に頑張ったと思うのだが、清也はうーんと唸って、頭をぽりぽりと掻く。
「ありがたいけどうつしたくないしなあ」
「でもやっぱり風邪のとき1人だと大変なことも多いですよね?」
私はここで積極的にいってみる。
するとまた彼は頭を掻いて、今度はドアを手で押さえたまま一歩下がった。
「じゃあ、いらっしゃい」
嬉しくて思わず笑顔になった。
「お邪魔します!」
初めて入った清也の部屋は彼の匂いに満ちていてなんだかすごくどきどきした。
腕を引かれてソファに座り、私は買ってきたものを差し出した。
清也はベッドに座ったようで、ぎしぎしと軋む音が聞こえる。
「ありがとう。次の撮影の件だけど……1週間先延ばしして良いかな」
私はもちろん承諾の返事をして、彼に横になるよう促した。
もう熱は平熱に近いが、どうも体がだるくて立っているのがつらい、と彼は言っていた。
少し経つと静かな寝息が聞こえてきた。
とても穏やかで、聞いているこちらも眠くなる。
そうだ、と思い立ち、バッグに入れてきたタオルを取り出した。
そして手探りで水道を探し、タオルを濡らす。
寝息の方に近寄ってタオルを清也の額にそっと乗せると彼はふふっと微笑んだような声を出した。
それが笑ったのかただ息が漏れたのかはわからないが、清也が近くにいることをより強く感じて嬉しかった。
私はそれから、先ほど座ったソファに戻って清也の寝息に耳を立てた。
この穏やかな心地よい時間から曲のイメージがどんどん膨れ上がってくる。
「るるる……るる……」
なるべく起こさないように歌うつもりが、気持ちが良くていつも家でするように歌った。
すると突然、清也が声を発した。
「綺麗な声、だね」
その言葉には笑みが含まれていて、優しくて温かい声だった。
「すみません、起こしちゃって」
「いや素敵な歌で目覚めて幸せな気分だよ。作曲のほうはどう?」
ここで私は作曲に行き詰まっていることを話した。
初めての挑戦で不安であることも。
すると清也はベッドから体を起こして私の頭にその大きな手をぽんと乗せた。
そして手をゆっくりと動かして私の髪にそっと触れるように撫でた。
「誰だって最初は不安だと思う。だけど俺は今の歌声聞いて、光穂ちゃんの作った曲を聴いてみたいと思った」
彼の手が止まり、部屋の中が静けさに包まれた。
「だから俺のために曲を作ってくれないかな?」
そのとき、私は心の声を聞いた。
ああ、私、清也さんのこと好きなんだ。
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