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26. 〜理人〜
「光穂、今日放課後時間ある? 話したいことがあるんだ」
僕はそう誘って、放課後は光穂の家で夕飯をいただくことになった。
彼女は僕の言う“話したいこと”がなんなのかまったく見当もついていないようだった。
「お邪魔します」
ひさしぶりに来た光穂の家。
中学生まではよく遊びに来ていたが、高校生になってからは初めてかもしれない。
内観に大きな特徴はないが、ところどころに見られる木目の柱がこの家の穏やかな雰囲気を表している。
入ると同時に、ここまで車で送ってくれた光穂のお母さんが「なにかお菓子とジュース買ってくる」と家を出て行った。
「お母さん帰ってくるまで部屋で待ってよう」
ひさしぶりに入った光穂の部屋。
相変わらず色使いはめちゃくちゃだが、ふかふかした素材のものが多くて暖かい。
そして光穂の広い自然のような香り……最近は時々ふわりと香ってくるようなこの香りが、この部屋には満ちている。
体の奥から熱くなり、鼓動が速くなる。
なんだか脳の回転すら遅くなっている気がする。
必死で別のことを考えながら、僕は光穂に言われた通りベッドに座った。
「理人、話したいことって……」
僕は彼女の口元を手で押さえ、話し出そうとするのを制止した。
そして彼女が見えていないのはわかっているが、彼女と真っ直ぐ向き合い、目をじっと見る。
「僕は、光穂のことが好きなんだ。ずっと」
ついに、言ってしまった。
今までの関係が壊れるかもしれないのに。
それでも想いを打ち明けないではいられなかったのだ。
僕が告白した瞬間、光穂の顔が困ったようにくしゃっと動いた。
そしてまた何かを言う前に制止して、
「待って、光穂は清也さんのことが好きなんでしょう?」
と問う。
すると彼女は顔を赤らめながら頷いた。
もうわかっていたことなのに、わかっていながら自分で問うたのに、いざその結論を彼女から聞くと頭に体中の血が上っていく感覚がした。
目の前がぐるぐると回って見えた。
「僕の方が光穂のことわかってあげられるのに」
ほぼ無意識のまま、僕は光穂にそう叫んでいた。
「僕らは今までも2人で分かり合ってきたじゃないか。清也さんだってきっと結局僕らのような障害者のことなんてわかってくれないんだ、いつか光穂も傷つくことに……!」
光穂の今まで見たことがない表情を見て、僕ははっと我に返って口をつぐんだ。
その表情を一言で表すなら、“虚無”だった。
彼女の瞳は僕を通り過ぎてもっと後ろの方にあって、どこか虚ろ。
僕は、光穂を激しく傷付けた。
涙が体の奥底から溢れ出してくる。
「うん、ごめん」
謝らないとと思いつつなにも声を発せられない僕より先に、光穂が謝った。
それは僕の涙をさらに熱くさせた。
「ごめん……」
僕はそれだけつぶやいて、引き止める光穂を振り払って彼女の家を後にした。
そのまま公園に走って向かったが、走っている間も涙が止まらなかった。
冬の冷たい風が僕の顔を打つ。
あの表情の光穂が頭に焼き付いて離れない。
僕はそう誘って、放課後は光穂の家で夕飯をいただくことになった。
彼女は僕の言う“話したいこと”がなんなのかまったく見当もついていないようだった。
「お邪魔します」
ひさしぶりに来た光穂の家。
中学生まではよく遊びに来ていたが、高校生になってからは初めてかもしれない。
内観に大きな特徴はないが、ところどころに見られる木目の柱がこの家の穏やかな雰囲気を表している。
入ると同時に、ここまで車で送ってくれた光穂のお母さんが「なにかお菓子とジュース買ってくる」と家を出て行った。
「お母さん帰ってくるまで部屋で待ってよう」
ひさしぶりに入った光穂の部屋。
相変わらず色使いはめちゃくちゃだが、ふかふかした素材のものが多くて暖かい。
そして光穂の広い自然のような香り……最近は時々ふわりと香ってくるようなこの香りが、この部屋には満ちている。
体の奥から熱くなり、鼓動が速くなる。
なんだか脳の回転すら遅くなっている気がする。
必死で別のことを考えながら、僕は光穂に言われた通りベッドに座った。
「理人、話したいことって……」
僕は彼女の口元を手で押さえ、話し出そうとするのを制止した。
そして彼女が見えていないのはわかっているが、彼女と真っ直ぐ向き合い、目をじっと見る。
「僕は、光穂のことが好きなんだ。ずっと」
ついに、言ってしまった。
今までの関係が壊れるかもしれないのに。
それでも想いを打ち明けないではいられなかったのだ。
僕が告白した瞬間、光穂の顔が困ったようにくしゃっと動いた。
そしてまた何かを言う前に制止して、
「待って、光穂は清也さんのことが好きなんでしょう?」
と問う。
すると彼女は顔を赤らめながら頷いた。
もうわかっていたことなのに、わかっていながら自分で問うたのに、いざその結論を彼女から聞くと頭に体中の血が上っていく感覚がした。
目の前がぐるぐると回って見えた。
「僕の方が光穂のことわかってあげられるのに」
ほぼ無意識のまま、僕は光穂にそう叫んでいた。
「僕らは今までも2人で分かり合ってきたじゃないか。清也さんだってきっと結局僕らのような障害者のことなんてわかってくれないんだ、いつか光穂も傷つくことに……!」
光穂の今まで見たことがない表情を見て、僕ははっと我に返って口をつぐんだ。
その表情を一言で表すなら、“虚無”だった。
彼女の瞳は僕を通り過ぎてもっと後ろの方にあって、どこか虚ろ。
僕は、光穂を激しく傷付けた。
涙が体の奥底から溢れ出してくる。
「うん、ごめん」
謝らないとと思いつつなにも声を発せられない僕より先に、光穂が謝った。
それは僕の涙をさらに熱くさせた。
「ごめん……」
僕はそれだけつぶやいて、引き止める光穂を振り払って彼女の家を後にした。
そのまま公園に走って向かったが、走っている間も涙が止まらなかった。
冬の冷たい風が僕の顔を打つ。
あの表情の光穂が頭に焼き付いて離れない。
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