地味な雑草は眼鏡を外すと美しき薔薇だった。

梅屋さくら

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Episode7.恋だった。

一年半後_結婚会見である。

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父が結婚を認めてくれてから1年半が経った、12月。
私は途切れないカメラのシャッター音と、たくさんのスーツを着た人に包み込まれて椅子に座っていた。
フラッシュを全身に浴びているため、視界は真っ白である。

「私、RIHOは、浅海さんと婚約致しました。
これから、2人で良い家庭を築いていけたら……そう考えておりますので、私と浅海共々、応援していただければと思います!」
「未だ未熟者の僕ですがRIHOさんを幸せに出来るように、より一層この仕事に向き合っていけるように頑張ります!」

あの私の転機となった『ミステリアスコンテスト』から3ヶ月が過ぎたとき、梓は私が出演したクイズ番組の観覧に来ていた。
彼はほとんどすべての番組の観覧に来てくれている。
そこで何やらテレビ番組のプロデューサーの目に止まったらしく、そのときすぐに声をかけられて芸能界に入るように勧められたそうだ。
私はその場にいなかったが、隣で見ていた楓によると、

「そこまで乗り気って言うわけじゃなかったんだけど、プロデューサーさんがもう梓にべた惚れで、無理矢理手に自分の名刺握らせて撮影の袖の方に連れて行っちゃったのよ。
けっこう長い間帰って来なかったんだけど、戻って来たら仕事受けたって言ってて。
なんで受けたの? って聞いたらね……」
「聞いたら……?」
「『この仕事受けたらあのRIHOちゃんと一緒の仕事させてあげられるよ』って言われたから、なんだって。
梓も葵ちゃんにべた惚れなんだよ?」

うっすら苦笑するように言った楓のその言葉の奥には、梓の愛の分だけ私も彼を愛してあげて欲しいと言うような気持ちも込められているような気がした。
きっと姉としての弟を想う気持ちなのだろう。

私と一緒にいられるからという理由でこの厳しいと言われる芸能界に入ることを決心した梓のためにも。
梓の幸せを願う姉の楓のためにも。
私も良くお世話になる、猪瀬のおばさんや、私たちの仲を応援してくれたみんなのためにも。
私は今まで梓がくれた愛や優しさの分だけ、彼に愛を返したい……そう思った。

芸能人同士、さらに、18歳同士での結婚に、予想していた通り集まった記者たちから質問が殺到した。
私たちが1人1人記者を指名する。

「では、そこの方……」
「お2人は18歳という若さでの結婚となりますが、どうお考えでしょうか?」

梓が、マイクを手に取って答える。

「かなり早い結婚だというのは重々承知した上での決断です。
婚約したのは、僕が16歳のときだったので、お互いの準備期間は長くありました。
僕も彼女を養っていくことになりますが、その覚悟はとっくに出来ています」
「私も、彼ならこれからの人生を共に歩める……そう思っております」

記者たちはすごい勢いで手に持ったメモに文字を記していく。
ボールペンが走る音と紙の音が、色々なところから聞こえて来た。

「では、そちらの赤と緑のネクタイを締めてらっしゃる方……」
「コンテストで優勝を果たし、来年には映画で主演も務めるRIHOさんと、人気急上昇中でニュースの司会も務めてらっしゃる浅海さんというビッグカップルの誕生ということになりますが、ファンの反応などについてどう思っていらっしゃいますか?」
「私たちを常に応援してくださっているファンの方々には、少し前にブログの方で報告させていただいたのですが、祝いの言葉をかけてくださる方が多い反面、あまり良い風には思っていない方も一部いらっしゃいました。
先ほど質問がありました通り、年齢のこともありますし、お互いの立場や、お仕事のこともあることは分かっていますが、そういう批判をここまで受けるとは予想外でした。
正直言って、少しショックです」

私たちのブログから結婚の報告をした。
どうやらあまり良い風には思われなかったようだ。
年齢的にも、立場的にも、素直に受け入れられることはないと覚悟はしていたのだが、まさかこんなにも反対派が多いとは想像出来なかった。
中には多くの、『私の梓を取るな』、『あなたのような子供には渡せない』という梓ファンからの強い嫉妬や、『どんな手を使って誘惑したの?』、『いくら払ったの?』なんていう誹謗中傷のような非の感情を感じるコメントがあった。

今日の会見は質問時間も多く取らずに終わった。
またもう一度会見を開くこととなった。

ここからが、私たち『夫婦』の闘いである……そう肌身をもって感じた。
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