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しおりを挟む「きゃーっ!今この人に触られたんです!」
ある日、通勤中の電車内で女子高生に痴漢をされたと訴えられた。俺は「違う、やっていない」と言ったが、誰も信じてくれず次の停車駅で引き摺る様に電車を降ろされて、誰が呼んだのか駆けつけた駅員にとりあえず話を聞くだけだからと事務室に連れて行かれた。
話を聞くだけと言っていたのに、その後、警察署に連れて行かれ、取調べを受けた。そこでもやっていないと散々言っても信じてもらえず、「とりあえず今日は帰っていいですよ。また後日来てもらいます」と言われて、ようやく警察署から出ることができた。日はもう傾き始めていた。
そして警察署を出て少し歩くと、会社を無断欠勤してしまったことに思い至り、慌てて会社に電話しようとスマホを取り出していたら、近づいて来た黒いバンから男が降りて来て乱暴に車に乗せられた。
逃げようとした瞬間、車の奥から聞き覚えのある女の声が聞こえて気を取られてるうちに車は発信してしまった。振り向くと、車の一番後ろの席にさっき俺に痴漢されたと泣いていた女子高生が笑顔でそこにいた。
「おじさん♪ さっきぶり~。警察はどうだった? 楽しかった? 怖かった? 怖かったよね? もう行きたくないでしょ? それにこれ以上騒ぎになったらおじさんの人生オシマイデショ?」
「これ以上の騒ぎ?」
「そう裁判とかw 裁判になったらみーんながおじさんがやったって知っちゃうもんね」
「俺はやってない」
「いいよ、いいよ。ここでまでそんなこと言わなくったって。そもそもだーれも信じないよ。おじさんなことなんか。みんな、かわい~女子高生の味方❤︎ だから、そんな、かわいそーななおじさんにチャンスをあげるね。お金払ってくれたら示談にしてあげるよ」
「示談……?」
「うーん、正確には示談じゃないかな? ぜーんぶなかったことにしてあげる。私の勘違いでしたごめんなさいって警察に言ってあげるw」
「なんだ、それ……?」
「とりあえず、百万でいいよ♪」
「ひゃっ百万?!、そんな大金払えるわけないだろ!」
「えー? 裁判になっちゃうよー。それに痴漢してくださいって書き込み信じて痴漢したおじさんが悪いんじゃん」
「はっ? なんだそれ……」
「なんだそれって知らないの?おじさん、こういうのツツモタセって言うんだって。ねえ、そう言うんだよね?」
「お前、自分からバラしてんじゃねぇよ」
俺を無理やり車に連れ込んで、今まで黙って運転していた男が呆れたような声で言った。
「いいじゃーん、もうバレたって証拠なんてないんだし」
「お前なー、そういう問題じゃねぇよ。はあ、まあいいや。ということでお兄さん、お金払ってくれるよね? お金さえ払ってくれれば、俺たちもうお兄さんに関わらないし、被害届も取り下げるから」
「なんで俺がやってないのに、お前たちに金を払わないといけないんだ!」
「あっそ。おじさん、意外に頑固だね。やる事やったくせに。どうなってもいいんだー? じゃあ仕方ないよね。車止めて」
女子高生の声のトーンが少し低くなった様に感じた。そして、急に車が止まった。車に乗せられてかなり時間が経っていた様な気がした。窓の景色を見ている余裕もなく、暗くなり、景色自体よく見えなくなって来ていたため、一体どんな山奥に連れてこられたのかと思った。
殺される? 一瞬そう頭をよぎったが、車から引き摺り下ろされただけだった。どうやら車はこの辺りをぐるぐる周っていただけだったようだ。
「おじさんとお話をしてこのままATMでお金下ろしてもらおうと思ってたけど、おじさん、まだあんま怖くなかったみたいだからもっと怖い思いしてもらうね。そしたらお金払いたくなるかもだし」
「あーあ、お兄さん、大人しく払っておけば良かったのに。まぁ気が変わったら。いつでも連絡くれよ」
そう言って男は連絡先の紙を俺のスーツのポケットに押し込んで、さっさと車に乗り、女子高生と共に去って行った。
一先ず、俺は自宅のアパートに帰ることにした。警察に言っても信じてはもらえないだろう。
法律に疎い俺があいつらの罪を暴いて、冤罪を晴らすには弁護士を雇うしかないだろう。そのためにも一度家に帰って対策を考えなくてはと思った。
夜遅く、自宅に着いた。とにかく、明日は会社に行って無断欠勤した謝罪をして、休暇申請をして、それから弁護士事務所を探してと考えながら眠りについた。
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