当て馬悪役令息に転生したはずが何故か俺がヒロインに狙われています

ちか

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 すると翌朝、何度も鳴らされた呼び鈴のけたたましい音で目が覚めた。驚き、玄関に近づき、のぞき窓からそっと覗いてみるとそこには誰も居なかった。チェーンを外し、ゆっくりと戸を開けてみても近くには誰も居なかった。部屋に戻ろと振り返るとそこにはまた貼り紙や落書きがされていた。

 それからの毎日は地獄だった。毎日、貼り紙や落書きがされ、昼夜問わず、ピンポンダッシュがされるようになった。そして、警察にまた話を聞きたいと呼ばれ取り調べをされた。それは少しずつ俺の精神を蝕んでいった。

 そんな中、申請した休暇が終わりそうな頃、上司から連絡があり、あの時言っていた様に遠回しに会社を辞めたらどうかということを言われた。それは俺の為の提案であり、あくまでも俺の意思で辞めるようにということが伝わって来た。あんな事を聞いてしまった会社に例え、冤罪が晴れようと今まで通り働けない、あんな所でもう働きたくないと思い、辞める旨を伝えた。後日書類を送るのでそれに必要事項を書いて会社に送ってくれと言われた。
 そうして俺は職を失った。

 そして彼女からの連絡は一切なかった。あの時、弁護士事務所からの帰りに送ったメッセージに既読がついて以降、返信はなく、新たにメッセージを送っても既読すらつかなくなった。きっとブロックされてしまったのだろう。彼女とは会社の同僚に誘われて行った飲み会で出会ったうちの系列会社の人だった。俺にとっては人生初の彼女だった。大切にしなきゃと思っていたのに……。

 これは自然消滅ってことだよな。会いに行っても迷惑かけるだけだろうしな。
 そうして俺は彼女を失った。

 いつもの様に貼り紙、落書きの片付けをしていたら、とうとう大家さんにはっきりと出ていってくれと言われた。毎日この片付けをしている時に大家さんや他の住民から冷たい目で見られていたのは気づいていた。それでも気づかないふりをして新しい引越し先が見つかるまではと図々しく居座っていたがそれもこれまでのようだった。

 いつかその日が来るだろうと思っていたため、新しいアパートを探してはいたが、なかなか決まらず、この日が来てしまった。それに引越しても同じことの繰り返しになるのでは? 不動産仲介業者からもしくは引越し業者から新しい住所がバラされるのでは? と俺は少しずつ人が信用できなくなってきていた。
 新しい引越し先も見つからないため、必要最低限の荷物以外を処分し、少しでも費用を抑えるため、依頼した弁護士事務所の近くの簡易宿泊所にしばらくの間泊まることにした。
 そうして俺は住むところを失った。

 弁護士の先生は取り調べの際、心強い味方であった。依頼したから、仕事だからとはいえ、味方がいることが嬉しかった。度々、弁護士事務所を訪れて進捗状況を尋ねた。しかし、なかなか難しいのか、先生の表情はすぐれず、あまり進捗状況は良くなかった。
 そんなある日、とうとう、先生に言われてしまった。「すみません、もう弁護を降ろさせてください」と。

 俺はなぜ、どうしてと食い下がって理由を聞いた。すると弁先生は自分や自分の家族までネットで晒され、誹謗中傷の被害に遭っていると言う。それで娘さんが学校に行けなくなり、引きこもるようになってしまったらしい。正義のために戦う、屈しないそう思って続けて来たが、そのことで奥さんとも険悪になってしまい、先生も限界に来てしまったそうだ。

 先生に謝られてしまった。「こんなこと弁護士としてあり得ないことは重々承知しています。こんな最低なことをして申し訳ないです。ですが、それでも今は自分の家族を守りたいんです。未熟で申し訳ないです」と。成功報酬だったから費用の請求もないし、着手金も返すと言われたが、着手金はそのままでいいと返金を拒否した。俺のせいで申し訳ないと思い、謝罪とお礼を言って事務所を後にした。
 最後の希望が潰えた気がした。

 そして、俺はあの紙の連絡先をスマホに打ち込んだ。
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