当て馬悪役令息に転生したはずが何故か俺がヒロインに狙われています

ちか

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6話

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 女性の使用人と目があった瞬間、体がこわばってしまった。さっきまで意気揚々としていた気持ちが急激に萎み始めた。しかし、俺に気づき、驚いた父が「ディートリヒ?」と声をかけてくれてハッとした。そして二番目の兄に視線を向けると泣きそうな顔をしていた。それを見た俺はもう一度勇気を振り絞った。食堂全体が緊張感に包まれた空気になっていた。こわばって動かない体を奮い立たせ二番目の兄に近づいて頭を下げた。

「……ごっごめんなさい」

「えっ?」

 緊張した面持ちだった兄は虚をつかれた顔になった。

「ぁっにいさま、きのうはおれのせいでおこられてしまってごめんなさい」


「っ!!……俺の方こそ無理強いして怖がらせてごめんな」

「ううん。にいさまはっ、わるくないっ。おれが、へんなこだから……ふつうにできないからわるいんだ。ごめんなさい」

 どうも昨日泣いてしまったせいか、今日も涙腺が緩い。

「そんなことない。お前は変な子じゃない。かわいい俺の弟だ。叩いて怒鳴ったこともごめんな」

「にいさまが……いじわるでそうしたんじゃないってちゃんと……わかってる。しんぱいしてくれたのに……たすけてくれたのに……ないてごめんなさい」

「もう謝らないで。頭をあげて。それにちゃんと昨日もディーは庇ってくれたじゃないか。だから大丈夫だ。父上も話を聞いてくれたし謝ってくれたよ」

 おずおずと頭を上げてエドガー兄様を見上た。するとエドガー兄様はしゃがんで俺に目線を合わせながら頭を撫でて抱きしめてくれた。
 驚いたが、あったかくてなんだかとても安心した。顔の筋肉もいつもより柔らかくなった気がした。

「!!!」

 俺はいつの間にか笑顔になっていたようでそれを見たその場の者たちの衝撃はすごかったらしいと後になって聞いた。


「ずるいぞ!エドガー!」

 ルードヴィヒ兄様の声が響いた。

「俺だって兄様って呼ばれるのをずっと待っていたのに。抜け駆けするなんて」

「ルードヴィヒ兄上……これは抜け駆けでは……」

「そうだぞ。エドガー、ずるい」

「ずるいわ」

「そんな、父上と母上まで……」

「?」

「ディー、ルードヴィヒ兄様だぞ。言いづらかったらルー兄様でもいいぞ」

「ルードヴィヒ、ずるいぞ。ディー、父様だぞ」

「母様よ」

 なんか今日はみんなの圧が強い気がする……いつも距離をとって見守ってくれているのに……どうしたんだろ

「父上達、昨日俺に無理強いはしてはいけないと叱りましたよね?それに見守るはずでは?急にそのようなことを言ってはディーが戸惑ってしまいます!」

「「「うっ……すまない(ごめんなさい)」」」

「あっエドガーにいさまありがとう。でもおれ、だいじょうぶ。ルーにいさま、とうさま、かあさま、いままでしんぱいかけてごめんなさい」

「謝らないで」

「そうだぞ。こういう時はありがとうだ」

「ありがとう」

 そう言うとみんなにっこりと笑った。


 
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