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10話
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お披露目には父様と母様と一緒に行くことになった。兄様達も来たがっていたが、今回は七歳の子と十八歳以上保護者と参加資格が決まっていたため、参加出来なかった。
すぐに帰ってくるだろうに今生の別れのようにお見送りされた。いや、むしろ引き止められていたとすら思う。
一番攻撃力が高かったのはイリスだったが……あの顔を見たら罪悪感が半端なかった。
そうして泣く泣く(一体どちらがなのか)出発した。
普段俺たちは領地の屋敷に住んでいるが、このように王宮での催し物があったり、社交シーズンになると王都にあるタウンハウスに住む。
まぁ、ずっと王都に留まる貴族もいるらしい。それは仕事のためという場合がほとんどだが、そうでないものも一定数いるという。
父様は本当ならタウンハウスに住む方が仕事の上では都合がいいのだが、基本家族大好き人間のため、そして不安定な俺のためになるべく領地で仕事をしている。たまにどうしてもという場合はしばらくタウンハウスに滞在しているようだ。
うちの領地と王都とは移動に片道三日ほどかかるが、まだかなり近い方である。
今回は兄様達は領地の屋敷で留守番。俺、父様、母様がタウンハウスに滞在することになった。
今まで屋敷から出た事のない俺にとっては馬車からの景色もとても新鮮だった。その風景を見て改めて、異世界に俺はいるんだなと思った。
ただ、遠出と言えば新幹線や飛行機でしかしたことがなく、今世初の遠出はぶっちゃけ結構大変だった。
初めての宿は少しテンションが上がったが、疲れてすぐ眠ってしまいほとんど記憶にない。
だって……
揺れとか揺れと揺れとか。
お尻とかお尻とかお尻とか。
それはもう大変だった。
道の整備とか、サスペンションって必要なんだなと思った。
そんなことを考えている間にタウンハウスへと到着した。
タウンハウスへは余裕を持って到着したため、旅の疲れを少しは癒すことが出来た。
そしていよいよお披露目当日である。
王宮に向かう道を見てまた異世界感にワクワクした。この時は不安よりもワクワク感が勝っていたからあまり緊張はしていなかった。
王宮に到着したが馬車に乗っている時から異世界見学の気持ちが抜けないまま王宮の庭園に案内されると、男爵家を始め、侯爵家までの入場が済んでいた。初めて見る大勢の人達。
ここに来てようやく現実を直視して緊張して来た。
ここにいるほとんどは俺と同い年の子ども。そう言い聞かせながら、なるべく女性を視界に入れないようにした。屋敷から出たのが初めてで分からなかったが、どうやら屋敷の女性使用人に慣れたおかげか、女性がいる空間や遠目に視界に入るくらいならどうやら大丈夫なようだ。
心配そうにこちらを見ていた両親に大丈夫という意味を込めてにっこりと微笑んだ。俺のその表情を見て、両親も一安心したようで、「挨拶までの辛抱だ。もう少し頑張ろう」と声をかけてくれた。
そこでちょうど王族が入場して来た。王子は確か三人いたはずだが、俺と同い年のエルンスト王子殿下だけが国王陛下と王妃殿下と共に入場して来た。エルンスト王子は王族な証である国王陛下と同じ金眼で王妃殿下と同じ紺色の髪色でとても綺麗な容姿をしていた。だからきっと彼はあの乙女ゲームの登場人物だろうなとふと思った。
彼を見て久しぶりにこの世界が乙女ゲームの世界もしくはとても酷似している世界であることを思い出した。
そして、この場にはきっと他にも登場人物がいるのだろう。彼女はなんて言ってたっけ?
思考が深くなりかけたその時、王族への挨拶の時間となった。
父様に手を引かれ、後ろには母様がついて来る形で陛下の御前へと来た。
父様、俺、母様の順に横に並び、父様が陛下に挨拶の口上を述べた。それに合わせ、俺と母様も礼をする。次に王妃殿下から声をかけられたが、母様が返すことで難なく済んだ。そしていよいよエルンスト王子から俺に声がかけられたが、彼の態度はなんというか、悪かった。この場が嫌なのか、俺が嫌なのか分からないが、機嫌の悪さが表情に出ていた。
俺はなるべく関わりたくないと無難な挨拶を交わしてさっさと父様達と一緒に下がった。
挨拶が終わると父様達に頑張ったなと言ってもらえた。そのまま、そっと会場を後にしようとしていたのだが……
すぐに帰ってくるだろうに今生の別れのようにお見送りされた。いや、むしろ引き止められていたとすら思う。
一番攻撃力が高かったのはイリスだったが……あの顔を見たら罪悪感が半端なかった。
そうして泣く泣く(一体どちらがなのか)出発した。
普段俺たちは領地の屋敷に住んでいるが、このように王宮での催し物があったり、社交シーズンになると王都にあるタウンハウスに住む。
まぁ、ずっと王都に留まる貴族もいるらしい。それは仕事のためという場合がほとんどだが、そうでないものも一定数いるという。
父様は本当ならタウンハウスに住む方が仕事の上では都合がいいのだが、基本家族大好き人間のため、そして不安定な俺のためになるべく領地で仕事をしている。たまにどうしてもという場合はしばらくタウンハウスに滞在しているようだ。
うちの領地と王都とは移動に片道三日ほどかかるが、まだかなり近い方である。
今回は兄様達は領地の屋敷で留守番。俺、父様、母様がタウンハウスに滞在することになった。
今まで屋敷から出た事のない俺にとっては馬車からの景色もとても新鮮だった。その風景を見て改めて、異世界に俺はいるんだなと思った。
ただ、遠出と言えば新幹線や飛行機でしかしたことがなく、今世初の遠出はぶっちゃけ結構大変だった。
初めての宿は少しテンションが上がったが、疲れてすぐ眠ってしまいほとんど記憶にない。
だって……
揺れとか揺れと揺れとか。
お尻とかお尻とかお尻とか。
それはもう大変だった。
道の整備とか、サスペンションって必要なんだなと思った。
そんなことを考えている間にタウンハウスへと到着した。
タウンハウスへは余裕を持って到着したため、旅の疲れを少しは癒すことが出来た。
そしていよいよお披露目当日である。
王宮に向かう道を見てまた異世界感にワクワクした。この時は不安よりもワクワク感が勝っていたからあまり緊張はしていなかった。
王宮に到着したが馬車に乗っている時から異世界見学の気持ちが抜けないまま王宮の庭園に案内されると、男爵家を始め、侯爵家までの入場が済んでいた。初めて見る大勢の人達。
ここに来てようやく現実を直視して緊張して来た。
ここにいるほとんどは俺と同い年の子ども。そう言い聞かせながら、なるべく女性を視界に入れないようにした。屋敷から出たのが初めてで分からなかったが、どうやら屋敷の女性使用人に慣れたおかげか、女性がいる空間や遠目に視界に入るくらいならどうやら大丈夫なようだ。
心配そうにこちらを見ていた両親に大丈夫という意味を込めてにっこりと微笑んだ。俺のその表情を見て、両親も一安心したようで、「挨拶までの辛抱だ。もう少し頑張ろう」と声をかけてくれた。
そこでちょうど王族が入場して来た。王子は確か三人いたはずだが、俺と同い年のエルンスト王子殿下だけが国王陛下と王妃殿下と共に入場して来た。エルンスト王子は王族な証である国王陛下と同じ金眼で王妃殿下と同じ紺色の髪色でとても綺麗な容姿をしていた。だからきっと彼はあの乙女ゲームの登場人物だろうなとふと思った。
彼を見て久しぶりにこの世界が乙女ゲームの世界もしくはとても酷似している世界であることを思い出した。
そして、この場にはきっと他にも登場人物がいるのだろう。彼女はなんて言ってたっけ?
思考が深くなりかけたその時、王族への挨拶の時間となった。
父様に手を引かれ、後ろには母様がついて来る形で陛下の御前へと来た。
父様、俺、母様の順に横に並び、父様が陛下に挨拶の口上を述べた。それに合わせ、俺と母様も礼をする。次に王妃殿下から声をかけられたが、母様が返すことで難なく済んだ。そしていよいよエルンスト王子から俺に声がかけられたが、彼の態度はなんというか、悪かった。この場が嫌なのか、俺が嫌なのか分からないが、機嫌の悪さが表情に出ていた。
俺はなるべく関わりたくないと無難な挨拶を交わしてさっさと父様達と一緒に下がった。
挨拶が終わると父様達に頑張ったなと言ってもらえた。そのまま、そっと会場を後にしようとしていたのだが……
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