つがいなんて冗談じゃない

ちか

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噴水広場

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 ようやく街を自由に歩ける。何だか、同じ空なのに酷く広く感じた。

 街の案内表示に従ってしばらく街の広場の方向に向かって歩いてみた。

 でも何だか、視線を感じる気がする。さっきの貴族街では格好だったのは分かるが、今はそんなにわけではないのに。

 その理由が広場の噴水に映った自分の姿を見て分かった。抜け出すのに地面に四つん這いになったりしたから葉っぱやら土がついてしまっていた。わたしは慌てて服の袖で顔を拭い、付いていた葉っぱを落とし手櫛で髪を整えた。もうもう一度、水面を見て確認したが何とか見られる見た目には取り繕えた。

 そうして噴水の縁に座り、ようやく落ち着きを取り戻し、浮かされた熱が冷め、別の不安が湧き出てきた。

 どうしよう。とりあえず抜け出したい一心で何も考えずにそのまま来ちゃった。

 今更ながら頭が冷静になって来た。サァーっと血の気が引いて来た。

 どうしよう?まだみんな見てる?目が怖い。下を向いて顔を上げられない。どうしよう?あっお金がないと何も出来ないよね?何か売る物?服を売ったらいい?それでもっと安い服を買う?残りのお金でなんとかする?

 でも戻らなきゃいけないし、戻ったら服が違うのはおかしいし……あれ?わたしどうしたらいいんだろう?どうしたいんだろう?

「君っ!」

 ビクッ!!

 左横から肩に手を触れられ声をかけられた。振り返り見上げると簡易的な甲冑のような物を身に付けた男の人がいた。その腰には剣がぶら下がっていた。
 彼はじっと私を見つめて来た。その力強い目に気圧された。

 怒られた訳じゃないのに、何だかいっぱいいっぱいだった心が限界を迎えたのか、グスッグスッと泣き出してしまった。私のその様子に男性は慌てて、屈んでわたしの目線近くに顔を寄せて「大丈夫か?驚かせてすまない。落ち着いて欲しい」とか何だか色々話しかけてくれていた。

 ようやく涙が止まり、落ち着いて来た頃、わたしの様子を見て彼が改めて話しかけてくれた。

「大丈夫?落ち着いたかな?」

「はい、どうもご親切に。急に泣き出してしまってすみませんでした」

「いや、こちらこそ、急に声をかけて驚かせてしまって申し訳ない」

「いえ、本当にこちらこそすみませんでした」

「私はこの辺りを巡回している騎士なのだが、先ほど噴水広場に手助けが必要な子どもがいると通報があって確認に来たのだ」

「通報……ですか……」

「あぁその、非常に言いづらいのだが暴行されて逃げてきたのだろうか……」

 っ!!!

 暴行ってどういう……殴られたとか?

「いやっその申し訳ないのだが、君は男性に……」


 えっあっそっち?!

 つ、つまり、先ほどの葉っぱがついて薄汚れた姿で項垂れているところを街の人には私が男性に乱暴されて逃げて来た人に見えていて、騎士さんに通報されてしまったってこと?!

「っ!いえ!大丈夫です。こ、これはちょっと転んで汚れただけです。それでちょっと休憩していただけで……」

「いや、だがしかし……」

「いえ、本当に何もありません。大丈夫です」

「……そうか、わかった。失礼した。小さなレディにそのようなことを言ってしまい申し訳ない。もし、何かあれば巡回中の騎士に遠慮なく声をかけてくれ。もしくは詰所に来てくれても構わない」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

「他に私に出来ることはあるかな?」

 そう聞かれてとりあえずわたしは調べ物をしに図書館に行きたいと思った。

「あっ、あのそれでは図書館ってありますか?」

「図書館?あぁ、それならそこの大通りを真っ直ぐ行った所にあるよ」

「分かりました。それで図書館って誰でも入れますか?」

「えっ?あぁ大丈夫だよ。かつては制限があったようだが、今は開かれた図書館として存在している」

「開かれた図書館……」

「あぁ街にあるのは平民でも利用出来るということだ。印刷技術が向上して紙の本が増えたからな。それらの本を集めた図書館だ。まぁ従来の本や貴重書などは貴族図書館のみでしか閲覧を許されないし、そこに入るには貴族もしくは貴族から許可証を得た物しか利用できないがな」

 そこでも少しはこの国のこととかこの世界のことがわかるかな?

「ありがとうございます。それでは行ってみたいと思いますのでここで失礼します」

 図書館の場所を教えてもらい、ぺこりと軽く頭を下げ、わたしはそそくさとその場をあとにした。

 その後ろで訝しむ表情を彼がしていたとも知らずに。
 
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