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捨てる全知全能あれば拾う人あり
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♦……side:???
ある少女は、走っていた。赤い髪を揺らし、街の中を駆け抜けていた少女は、路地裏に入った瞬間にその手を後ろに伸ばす。
「『咲け、焼け落とす毒の花』」
赤い布を巻いたその手に赤色の魔法陣が現れると、コンクリートの隙間から赤い光が輝いた。
「『焔華』」
コンクリートの隙間から咲いた炎の花は、少女を追っていた男の一人の足に絡み付き、その黒い服を焼き焦がしながらふくらはぎを刺した。
「ぐ、ッ!?」
男はその場に膝を突き、地面に倒れた。体を内側から焼き尽くす炎の毒に、男は煮え上がる体で少女に手を伸ばすも意識を失った。
「クソ馬鹿がッ、ふざけやがって……! こんな街中で追って来るなんて、どこのクソ馬鹿だよッ!?」
荒い口調で悪態を吐く少女に、男達は答えない。仲間を一人失っても、彼らは表情すら揺らがなかった。
「テメェら、管理局に噛みつかれても良いのかッ!」
「『闇の腕』」
少女の叫びに反応すら見せずに男の一人が魔法陣を展開すると、少女の影から一片の光も反射しない闇で出来た腕が現れ、少女の足を掴みにかかった。
「チィッ」
少女が足を地面に擦ると炎が足から噴き上がり、少女はその足で闇の腕を蹴りつけた。闇の腕は弾け飛ぶが、その間に男達は少女に距離を詰めている。
「クッソ……!」
少女は大地を蹴り、火花を散らしながら勢いよく跳び上がると、ビルの壁を蹴って更に上へ上へと登った。
「人払いもしねぇで、クソ馬鹿が……!」
少女は苛立たし気に息を吐くと、何かを唱えて魔法陣を展開させた。すると、歩けば当然のように注目を集めるであろう赤髪の美少女の気配がすーっと薄くなった。それで追手を誤魔化すことは出来ないだろうが、この状態ならビルの上を好き放題に飛んでも気付かれる可能性は低い。
(やっぱり、まだ追って来てやがる……)
少女はビルの上を跳びながら、地上の景色を見下ろした。だが、そこにはこちらを正確に追って来る男達の姿があった。気配を無くす魔術は相手も使っているのか、信号を無視して走り込んでも誰も気付いていない。
山の中なら、ある程度は派手に魔術を使える。それまでの辛抱だ。少女はそれだけを頼りに、山の方へと駆け抜けていった。
最後にビルから大きな跳躍を見せた少女は、燃える足で地面を蹴って山の麓へと飛び込んだ。入り組んだ木々の中を駆け抜けると、突然氷の矢が目の前を通り過ぎた。
「ッ、まさか……」
誘い込まれた。それを悟った頃には、もう遅かった。あちらこちらから、黒い服の人間が顔を出す。山での戦闘を狙っていたのは、向こうも同じだったのだ。
「クソッ、ざけやがって……ッ!」
助けは呼べない。そんな余裕も無ければ、助けが来るまで耐える時間も無い。
「『紅蓮の花よ。全てを裂いて、咲き誇れ』」
少女はそう言って、自身の手を地面に叩き付けた。すると、地面に大きな赤色の魔法陣が広がった。
「『威薔薇』」
その地面から、大きな炎が生える。美しい薔薇の形をしたそれは、茎や葉軸に大量の棘を生やしていた。魔術士達が警戒して足を止めた瞬間、その炎の棘が薔薇から射出され、周辺に居た男達を貫いていく。
「ぐッ!?」
「がァッ!」
炎の棘は皮膚を裂き、肉に突き刺さり、触れた部分を焼き焦がしていく。それは灼熱の釘を体に撃ち込まれているようなもので、まともに食らったものは悶絶し、体に数発受けたものは耐え切れずその場に蹲った。
「『水弾』」
「『氷槍』」
しかし、警戒していた者や咄嗟に魔術で盾を張った者は炎の棘を防いでおり、直ぐさま攻撃に転じた。少女はそれらを機敏な動きで避けると、指を鳴らして巨大な炎の薔薇を弾けさせ、周囲に炎を撒き散らして魔術士達の目を晦ませた。
「ハァ、ハァ……!」
荒い息を吐きながら走り抜けていく少女は、背後から飛来した闇で固められた巨大な槍を回避し、目の前の木々が薙ぎ倒されるのを見た。
「『汝、恐怖せよ。絶望の果てに首を垂れよ』」
空を飛んで現れた敵の男を見た少女は、咄嗟に指先を男に向け、炎の魔力で作った弾丸を放ち、男の眼前に広がっていた闇の魔法陣を貫いた。乱された魔法陣は崩壊し、男は忌まわし気に少女を睨んだ。
「『闇の腕』」
「『侵蝕する奈落の影』」
足元から湧き上がる闇の腕に、影を伝って近付き、自身の影に侵蝕して命を狙う奈落の影。対処しなければ死ぬと見た少女は足元に魔術で炎をぶちまけ、闇の腕も奈落の影も焼き尽くした。
「『鉛弾』」
「『呪い烏』」
しかし、放たれた鉛の弾丸が足を止めた少女の肩を貫き、眼球まで真っ黒な小さいカラスが少女に迫り、ついばんで傷口から呪いを流し込もうとする。
「ハァ、クソったれ……!」
少女は魔力を込めた拳でカラスを殴りつけて霧散させ、血の流れ出る肩を抑えながらその場から跳び退いた。直後、少女の居た場所に魔術が殺到する。
「ッ、くっそ……」
敵の人数すら分かっていない。助けは呼べない。戦っても勝ち目は薄い。逃げたところで希望は無い。街中に逃げ込んでも、こいつらは容赦なく殺しに来るという確信があった。
少女はそれでも木々の中を駆け抜けて、生存の活路を探す。木々の入り組んだ地形を利用すれば、少しずつ敵の数を減らすことも可能かもしれない。
「ッ!」
しかし、その少女の考えを嘲笑うように現れたのは、太陽の光が差し込む開けた地形だった。木の一本も無いその場所を、それでも少女は駆け抜けるしか無かった。
「クソッタレが……!」
少女はその開けた地形に飛び込みながら、魔術で後ろに炎の壁を作った。割と広範囲まで伸ばした為、魔力の消費は痛いが、これで敵を足止めしながら視界を遮ってこの広場を通り抜けることが出来る。
「……ぐぁッ!?」
間に合わなかった。炎の壁を突破してきた敵が魔術を放ち、少女の足に穴が開いた。耐え切れずその場に転倒した少女は、顔を上げて再び立ち上がろうとして……それを見つけた。
「これ、は……!」
地面を焼き焦がして僅かに地中に沈んだそれは、未だ形を保っていた。ピリピリと青白い電気を帯びた、魔力に満ちた炎の鞭。少女は咄嗟にそれに手を伸ばし、拾い上げた。炎の魔力で手元を覆えば、火傷もしない。
「ッ、おらッ!!」
振り返りながら炎の鞭を振るい、迫っていた鉄の槍を弾き飛ばした。
「ハッ、ハハッ……! 滅茶苦茶お誂え向きじゃねぇか……!」
少女は改めて炎の鞭を見て、その異様さを確認した。不必要なまでに込められた魔力と、異常なまでに安定した構造はその鞭を半永久的に存在可能にしており、不自然なまでに効率化された術式は一の魔力で十の効果を得られるが如き奇跡を実現している。
きっと、誰が同じ魔術を作ろうとしてもここまで全てが完璧な術式は作れないだろう。この宇宙で最も完成した術式であると、少女は握っただけで直感的に理解した。
「こんだけ高度な魔術で、何で干渉阻害もナシなのかは全くの謎だが……いや」
宇宙一と言える程に完璧な術式であるにも関わらず、その魔術には普通存在する普遍的な機能が欠けていた。それは、本人のみが扱えるようにして他者からの干渉を避けるセキュリティだ。それが無ければ、術式の完成時に対象を勝手に変更されたり等ろくなことは起きない。魔術戦を想定しているのであれば、この機能は付けない手は無かった。
現に、それがないこの魔術は既に少女の魔力によって持ち主を乗っ取られていた。
「どこの誰だか知らねぇが、ありがとな」
にやりと笑い、少女は青白く電気を帯びる炎の鞭を掲げ、その形状を三つ又に変形させると迫りくる敵に向かって振り回した。
ある少女は、走っていた。赤い髪を揺らし、街の中を駆け抜けていた少女は、路地裏に入った瞬間にその手を後ろに伸ばす。
「『咲け、焼け落とす毒の花』」
赤い布を巻いたその手に赤色の魔法陣が現れると、コンクリートの隙間から赤い光が輝いた。
「『焔華』」
コンクリートの隙間から咲いた炎の花は、少女を追っていた男の一人の足に絡み付き、その黒い服を焼き焦がしながらふくらはぎを刺した。
「ぐ、ッ!?」
男はその場に膝を突き、地面に倒れた。体を内側から焼き尽くす炎の毒に、男は煮え上がる体で少女に手を伸ばすも意識を失った。
「クソ馬鹿がッ、ふざけやがって……! こんな街中で追って来るなんて、どこのクソ馬鹿だよッ!?」
荒い口調で悪態を吐く少女に、男達は答えない。仲間を一人失っても、彼らは表情すら揺らがなかった。
「テメェら、管理局に噛みつかれても良いのかッ!」
「『闇の腕』」
少女の叫びに反応すら見せずに男の一人が魔法陣を展開すると、少女の影から一片の光も反射しない闇で出来た腕が現れ、少女の足を掴みにかかった。
「チィッ」
少女が足を地面に擦ると炎が足から噴き上がり、少女はその足で闇の腕を蹴りつけた。闇の腕は弾け飛ぶが、その間に男達は少女に距離を詰めている。
「クッソ……!」
少女は大地を蹴り、火花を散らしながら勢いよく跳び上がると、ビルの壁を蹴って更に上へ上へと登った。
「人払いもしねぇで、クソ馬鹿が……!」
少女は苛立たし気に息を吐くと、何かを唱えて魔法陣を展開させた。すると、歩けば当然のように注目を集めるであろう赤髪の美少女の気配がすーっと薄くなった。それで追手を誤魔化すことは出来ないだろうが、この状態ならビルの上を好き放題に飛んでも気付かれる可能性は低い。
(やっぱり、まだ追って来てやがる……)
少女はビルの上を跳びながら、地上の景色を見下ろした。だが、そこにはこちらを正確に追って来る男達の姿があった。気配を無くす魔術は相手も使っているのか、信号を無視して走り込んでも誰も気付いていない。
山の中なら、ある程度は派手に魔術を使える。それまでの辛抱だ。少女はそれだけを頼りに、山の方へと駆け抜けていった。
最後にビルから大きな跳躍を見せた少女は、燃える足で地面を蹴って山の麓へと飛び込んだ。入り組んだ木々の中を駆け抜けると、突然氷の矢が目の前を通り過ぎた。
「ッ、まさか……」
誘い込まれた。それを悟った頃には、もう遅かった。あちらこちらから、黒い服の人間が顔を出す。山での戦闘を狙っていたのは、向こうも同じだったのだ。
「クソッ、ざけやがって……ッ!」
助けは呼べない。そんな余裕も無ければ、助けが来るまで耐える時間も無い。
「『紅蓮の花よ。全てを裂いて、咲き誇れ』」
少女はそう言って、自身の手を地面に叩き付けた。すると、地面に大きな赤色の魔法陣が広がった。
「『威薔薇』」
その地面から、大きな炎が生える。美しい薔薇の形をしたそれは、茎や葉軸に大量の棘を生やしていた。魔術士達が警戒して足を止めた瞬間、その炎の棘が薔薇から射出され、周辺に居た男達を貫いていく。
「ぐッ!?」
「がァッ!」
炎の棘は皮膚を裂き、肉に突き刺さり、触れた部分を焼き焦がしていく。それは灼熱の釘を体に撃ち込まれているようなもので、まともに食らったものは悶絶し、体に数発受けたものは耐え切れずその場に蹲った。
「『水弾』」
「『氷槍』」
しかし、警戒していた者や咄嗟に魔術で盾を張った者は炎の棘を防いでおり、直ぐさま攻撃に転じた。少女はそれらを機敏な動きで避けると、指を鳴らして巨大な炎の薔薇を弾けさせ、周囲に炎を撒き散らして魔術士達の目を晦ませた。
「ハァ、ハァ……!」
荒い息を吐きながら走り抜けていく少女は、背後から飛来した闇で固められた巨大な槍を回避し、目の前の木々が薙ぎ倒されるのを見た。
「『汝、恐怖せよ。絶望の果てに首を垂れよ』」
空を飛んで現れた敵の男を見た少女は、咄嗟に指先を男に向け、炎の魔力で作った弾丸を放ち、男の眼前に広がっていた闇の魔法陣を貫いた。乱された魔法陣は崩壊し、男は忌まわし気に少女を睨んだ。
「『闇の腕』」
「『侵蝕する奈落の影』」
足元から湧き上がる闇の腕に、影を伝って近付き、自身の影に侵蝕して命を狙う奈落の影。対処しなければ死ぬと見た少女は足元に魔術で炎をぶちまけ、闇の腕も奈落の影も焼き尽くした。
「『鉛弾』」
「『呪い烏』」
しかし、放たれた鉛の弾丸が足を止めた少女の肩を貫き、眼球まで真っ黒な小さいカラスが少女に迫り、ついばんで傷口から呪いを流し込もうとする。
「ハァ、クソったれ……!」
少女は魔力を込めた拳でカラスを殴りつけて霧散させ、血の流れ出る肩を抑えながらその場から跳び退いた。直後、少女の居た場所に魔術が殺到する。
「ッ、くっそ……」
敵の人数すら分かっていない。助けは呼べない。戦っても勝ち目は薄い。逃げたところで希望は無い。街中に逃げ込んでも、こいつらは容赦なく殺しに来るという確信があった。
少女はそれでも木々の中を駆け抜けて、生存の活路を探す。木々の入り組んだ地形を利用すれば、少しずつ敵の数を減らすことも可能かもしれない。
「ッ!」
しかし、その少女の考えを嘲笑うように現れたのは、太陽の光が差し込む開けた地形だった。木の一本も無いその場所を、それでも少女は駆け抜けるしか無かった。
「クソッタレが……!」
少女はその開けた地形に飛び込みながら、魔術で後ろに炎の壁を作った。割と広範囲まで伸ばした為、魔力の消費は痛いが、これで敵を足止めしながら視界を遮ってこの広場を通り抜けることが出来る。
「……ぐぁッ!?」
間に合わなかった。炎の壁を突破してきた敵が魔術を放ち、少女の足に穴が開いた。耐え切れずその場に転倒した少女は、顔を上げて再び立ち上がろうとして……それを見つけた。
「これ、は……!」
地面を焼き焦がして僅かに地中に沈んだそれは、未だ形を保っていた。ピリピリと青白い電気を帯びた、魔力に満ちた炎の鞭。少女は咄嗟にそれに手を伸ばし、拾い上げた。炎の魔力で手元を覆えば、火傷もしない。
「ッ、おらッ!!」
振り返りながら炎の鞭を振るい、迫っていた鉄の槍を弾き飛ばした。
「ハッ、ハハッ……! 滅茶苦茶お誂え向きじゃねぇか……!」
少女は改めて炎の鞭を見て、その異様さを確認した。不必要なまでに込められた魔力と、異常なまでに安定した構造はその鞭を半永久的に存在可能にしており、不自然なまでに効率化された術式は一の魔力で十の効果を得られるが如き奇跡を実現している。
きっと、誰が同じ魔術を作ろうとしてもここまで全てが完璧な術式は作れないだろう。この宇宙で最も完成した術式であると、少女は握っただけで直感的に理解した。
「こんだけ高度な魔術で、何で干渉阻害もナシなのかは全くの謎だが……いや」
宇宙一と言える程に完璧な術式であるにも関わらず、その魔術には普通存在する普遍的な機能が欠けていた。それは、本人のみが扱えるようにして他者からの干渉を避けるセキュリティだ。それが無ければ、術式の完成時に対象を勝手に変更されたり等ろくなことは起きない。魔術戦を想定しているのであれば、この機能は付けない手は無かった。
現に、それがないこの魔術は既に少女の魔力によって持ち主を乗っ取られていた。
「どこの誰だか知らねぇが、ありがとな」
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