ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

文字の大きさ
23 / 189

全知全能と相談事務所

しおりを挟む
 事務所の中に入れられた柚乃は、古びたソファに座らされていた。そのまま待っていると、二階からさっきの男が若い男と水色髪の若い女を連れて降りて来た。

「悪い、待たせたな」

「こんにちは! どうしました~?」

 厳つい顔の男と若い女が言うと、柚乃は俯いていた顔を跳ね上げてそちらに向けた。

「は、はい! こんにちは! 宇尾根 柚乃です!」

「瑞樹です! よろしくね~!」

「あー、黒崎です」

「御岳だ」

 緊張した様子で挨拶を返した柚乃に瑞樹はにこにこと笑って答え、黒崎は視線を合わせずに答えた。

「それで、相談ってのは何だ?」

「あの、私……一番仲良い友達が居るんですけど」

 話し始めた内容は、柚乃が元から用意していたものでは無かった。元々、柚乃は相談事務所の名前からもっと内面的な話を用意していたのだが、直前で予定を変えた。

「限定品の大事なバッジを落としちゃったみたいで……私と友達で一日中探して回ってもみつからなくて、最近はずっと凹んでるんです。良かったら、それを探して貰えたりしませんか?」

「探し物か。例え見つからなくてもある程度は報酬を貰うことになるが、構わないか?」

「はい、それで大丈夫です!」

 快く返事を返しながら、柚乃は周囲をちらちらと見て、茜がどこに行ったのか探していた。確かに、この建物に茜は居た筈だが、どこかに出掛けてしまったのか、それとも……

「おい、お前……さっき、うちの前に居た奴だろ」

 二階から階段で下りて来る途中で、茜は柚乃を睨み付けた。

「人を待ってるのかと思ったが、やけにうちの事務所の方を見てやがると思ったんだよ」

「い、いゃ、あの……」

 柚乃は恐怖と同時に湧き上がる喜びに、顔が笑ってしまいそうになるのを堪えながら弁明の言葉を考えた。

「落ち着きなさいよ、茜。きっと、うちに入ろうかどうか凄く悩んでたんでしょ。うちの事務所って、見た目が薄汚れてるから入るのを躊躇する気持ちも分かるわ。特に、女子高生なら」

「……確かにな。見たところ、同業者には見えねぇ。ビビらせちまって悪かった」

「え、えへ、ごめんなさい……」

 茜本人と話せて遂に笑みが表に出てしまった柚乃だが、不審がられることは無く茜は申し訳なさそうに謝った。
 そこで、柚乃は茜の言葉の一部に疑問を浮かべた。

「そういえば、同業者ってなんですか?」

「あ? 気にしねぇで良いぞ」

「あー、アレよ。同業者が悪い噂を流したり弱点を探る為に偵察に来てたんじゃないかと疑ってただけ。前にもそういうことがあったから」

「なるほど、そういうことなんですねっ!」

 瑞樹の説明に納得したように頷いた柚乃だったが、茜の態度と合わせてそれが単なる誤魔化しであることは察していた。但し、それ以上を踏み込む勇気は無かった。

「まぁ良い、取り敢えず話を進めるぞ。依頼は物探しで、報酬は学生料金がどうとか言ってたが……」

「は、はい! 二万円しか持ってないです!」

「……まぁ、十分だ。それで、場所はどこだ?」

 仕事の話を進める御岳に、柚乃も茜から視線を外し、話に集中した。





 ♦……side:宇尾根 治



 魔術、使いたーい! 魔術、魔術魔術魔術使いたーい!!!

「魔術、使いたいねぇ」

 ベッドの上で、僕は呟いた。そう、魔術が使いたいのである。茜さんのことがあって、ちょっと魔術を使うのが怖くなっている僕だが、魔術使いたい欲が満ち満ちてしまっているのだ。ベッドの上で呟いてしまう程に。

 魔術、使いたい。魔術、使いたいのである。

 全知全能の力であれば、今度こそ絶対的に安全な場所を見つけることも出来るけど、前みたいに必死こいてチャリ漕いでいくのも面倒臭い。
 それに何より、規模の大きい魔術なんて使えっこないのである。一応、全知全能パワーで外から見えなくしたり認識を歪めたりして使うことも出来はするけど、魔術の影響で何らかの被害が出てしまうのも忍びない。まぁ、それすらどうにでも出来てしまうのが僕なんだけどさ……不自然に世界を歪ませ過ぎてしまうことを僕は望んでない。なんていうか、風情が無いじゃん?

「うーん……」

 とは言え、いい方法は思いつかない。何か無いものか。全知全能に頼る? いやぁ、ここで頼ったらちょっと自分が無いよね。

 僕は何かしらのアイデアが落ちていないかとスマホを開いた。ネットニュースやらツイックスやらを眺めていくと、一つの広告が目に入った。

「異世界……」

 いや、異世界なら魔術を撃ちまくっても良いって訳じゃない。でも、その広告は確かに僕に一つのアイデアを齎した。

 異世界、行ったって良いし……好きな魔術を全部使う為には、寧ろ自分で世界を創るべきだ。

「……良し、やっちゃおう」

 僕はベッドに座り込んだままゆったりと腕を伸ばし、目を細めてを見た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...