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全知全能とギルド
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レティシアに連れられて冒険者ギルドにやって来た僕は、思っていたよりもずっと広かったその施設に目を輝かせながらも、時間があるので一先ずは手続きを済ませることにした。
「ここに並ぶのよ。まぁ、でも手伝うって言ったからついて行ってあげるわ」
「助かるよ」
僕一人だと、絵空が言ってたみたいな……新人いびりイベントみたいなのが起きてもおかしくないからね。
「おい、レティシア。どういうつもりだ……そんなガキ連れて来て、まさか冒険者に仕立て上げようってワケじゃねぇよな?」
フラグだったらしい。僕は低い声のした方に恐る恐る顔を向け、その男の容貌を見た。背は高く、使い古された形跡がある革の鎧を身に纏い、顔には傷が付いている。その表情は険しく、僕というよりはレティシアを睨み付けていた。
「なによ。だったら、文句ある?」
「あるさ。あるに決まってんだろ」
ずいと、男は一歩踏み出してレティシアに距離を詰めた。でも、僕はレティシアが相当強い冒険者であると聞いているので動かない。何なら喋らない。多弁は銀、沈黙は金だ。
「こんな碌に筋肉もついてない、杖もナイフも持ってないようなガキ。ウォーリアーは勿論、ウィザードにもスカウトにもなれやしないぜ。森に出て、そのまま死ぬだけだ。テメェが弟子にして育てるってのも止めろよ? 素人を一から育てられるような時間なんて、ありゃしねぇんだ」
「治はウィザードよ」
レティシアが短く言い返すと、男は怪訝そうに僕の方を確かめた。
「やっぱりな、ただのガキだ。いや、それよりもずっと少ねぇな。ウィザードは疎か、ただのメイジになるにも全然魔力が足りねえよ」
「魔力量は偽装してるんでしょう? ね、治」
こ、こっちに振られた!? 確かに、最近は魔力も増えて来たから一応は一般人レベルに落としてるけど……魔素で溢れてるこっちの世界じゃ、これでもかなり少ない部類になっちゃうのかな。
「う、うん。そうだよ、本当はもうちょっとあるね」
擬装を解除したら、今の倍くらいはある。逆に言えば、その程度でしかない。魔力保有量というのは、そんな急激には伸びないのだ。
「魔力擬装……? このガキが、俺でも気付けないレベルの偽装をしてるってのかよ?」
「えぇ、そうよ。少なくとも、治は私が認めるレベルのメイジ……いや、ウィザードね。貴方と戦っても、良い勝負するんじゃないかしら?」
「ッ! このガキが、俺と……? つまり、煌銅級の実力はあるって言いてぇのか……?」
「……ウィザードとしては、そうね。冒険者としての実力で言えば、無いかも知れないけど」
話を聞くに、この男の冒険者等級は煌銅級なんだろうね。真銀級でめっちゃ凄いってことは、煌銅級でも結構凄いんではなかろうか。
「…………分かったよ。アンタがそこまで言うなら、認めてやるさ。ただ、俺には完全にビビってるようにしか見えねえがな」
人を殺しそうな目で男は僕を見た。実際、ビビってるだけでしかない。あんまりハードルを上げるのは止めて欲しい。
「ふん、別にアンタに認められなくても治は冒険者になるわよ」
「そうかよ……おい、ボウズ」
「は、はい……!」
男は僕に顔を近付けると、そのスカーフェイスで僕を睨んで言った。
「ウィザードとして冒険者になるなら、とにかく慎重にやれ、だがビビんじゃねえ」
「えっと……?」
一見矛盾しているような言葉に、僕は首を傾げた。
「ウィザードってのは立ち位置が重要だ。動きもな。相手に狙われにくい位置を常に探して、隙を作らない行動を徹底する。その上で、例え近付かれてもビビんじゃねえ。絶対に詠唱を止めないといけない時以外は詠唱を止めんなってことだ」
「……なるほど」
「盾になれる奴が近くに居れば代わりに防いでくれるし、詠唱が完了して魔術が出れば、攻撃される前にぶっ飛ばせるかも知れねぇ。詠唱のキャンセルは常に最終手段だ。詠唱を止めた時は、その時間だけお前は戦場から消えていたと思え。そのくらい、時間を無駄にして仲間に負担をかけることになるって意味だ」
僕は誤解していたようだ。先ずは、この男が所謂悪い人であると。絵空のせいで、先入観が付いていた。次に、この人が戦士であると。立派な筋肉とスカーフェイスによって、ムキムキの脳筋戦士であると誤解していた。実際は、ゴリゴリのメイジ……いや、ウィザードだった。
「ありがとうございます。肝に銘じます」
「おう、そうしとけ」
男は初めてにやりと笑い、僕らに背を向けて去って行った。その腰には、鞘付きナイフと短杖が括り付けられていた。
「……怖い人かと思ったら、凄い親切な人だった」
「今まで無謀に冒険者になって死んでいった子を見て来たからでしょう。だから、私がアンタを連れて来たのを見て、同じ景色を見て来た筈の私が無駄死にさせる気かって怒ってたんでしょうね」
なるほどね……それで、最初から怒りが滲んでる感じだったんだ。
「だったら、最初からもうちょっと穏便に説明してくれたら良いのに……」
それとも、冒険者ってのはやっぱり舐められたら負けみたいなところがあるんだろうか。喧嘩腰で来られたら、喧嘩腰で返さなきゃダメみたいな。
「別に、あんなの穏便な方よ。向こうがキレてるのに、こっちが懇切丁寧にしてやる必要も無いでしょ?」
「うーん……」
寧ろ、僕は相手が怒ってたら出来るだけ丁寧に喋るけど……これが、文化の違いという奴だろうか。カルチャーショックだ。
「ま、取り敢えず登録するわよ。ダナウのアホのせいで無駄に時間使っちゃったから、急ぎましょ」
「いや、いいアドバイスを聞けたし良かったよ」
そうだった。僕は登録の為に来てたんだった。ダナウさんの顔が怖すぎて忘れてしまっていた。僕はレティシアに導かれ、受付への列に並んだ。
「ここに並ぶのよ。まぁ、でも手伝うって言ったからついて行ってあげるわ」
「助かるよ」
僕一人だと、絵空が言ってたみたいな……新人いびりイベントみたいなのが起きてもおかしくないからね。
「おい、レティシア。どういうつもりだ……そんなガキ連れて来て、まさか冒険者に仕立て上げようってワケじゃねぇよな?」
フラグだったらしい。僕は低い声のした方に恐る恐る顔を向け、その男の容貌を見た。背は高く、使い古された形跡がある革の鎧を身に纏い、顔には傷が付いている。その表情は険しく、僕というよりはレティシアを睨み付けていた。
「なによ。だったら、文句ある?」
「あるさ。あるに決まってんだろ」
ずいと、男は一歩踏み出してレティシアに距離を詰めた。でも、僕はレティシアが相当強い冒険者であると聞いているので動かない。何なら喋らない。多弁は銀、沈黙は金だ。
「こんな碌に筋肉もついてない、杖もナイフも持ってないようなガキ。ウォーリアーは勿論、ウィザードにもスカウトにもなれやしないぜ。森に出て、そのまま死ぬだけだ。テメェが弟子にして育てるってのも止めろよ? 素人を一から育てられるような時間なんて、ありゃしねぇんだ」
「治はウィザードよ」
レティシアが短く言い返すと、男は怪訝そうに僕の方を確かめた。
「やっぱりな、ただのガキだ。いや、それよりもずっと少ねぇな。ウィザードは疎か、ただのメイジになるにも全然魔力が足りねえよ」
「魔力量は偽装してるんでしょう? ね、治」
こ、こっちに振られた!? 確かに、最近は魔力も増えて来たから一応は一般人レベルに落としてるけど……魔素で溢れてるこっちの世界じゃ、これでもかなり少ない部類になっちゃうのかな。
「う、うん。そうだよ、本当はもうちょっとあるね」
擬装を解除したら、今の倍くらいはある。逆に言えば、その程度でしかない。魔力保有量というのは、そんな急激には伸びないのだ。
「魔力擬装……? このガキが、俺でも気付けないレベルの偽装をしてるってのかよ?」
「えぇ、そうよ。少なくとも、治は私が認めるレベルのメイジ……いや、ウィザードね。貴方と戦っても、良い勝負するんじゃないかしら?」
「ッ! このガキが、俺と……? つまり、煌銅級の実力はあるって言いてぇのか……?」
「……ウィザードとしては、そうね。冒険者としての実力で言えば、無いかも知れないけど」
話を聞くに、この男の冒険者等級は煌銅級なんだろうね。真銀級でめっちゃ凄いってことは、煌銅級でも結構凄いんではなかろうか。
「…………分かったよ。アンタがそこまで言うなら、認めてやるさ。ただ、俺には完全にビビってるようにしか見えねえがな」
人を殺しそうな目で男は僕を見た。実際、ビビってるだけでしかない。あんまりハードルを上げるのは止めて欲しい。
「ふん、別にアンタに認められなくても治は冒険者になるわよ」
「そうかよ……おい、ボウズ」
「は、はい……!」
男は僕に顔を近付けると、そのスカーフェイスで僕を睨んで言った。
「ウィザードとして冒険者になるなら、とにかく慎重にやれ、だがビビんじゃねえ」
「えっと……?」
一見矛盾しているような言葉に、僕は首を傾げた。
「ウィザードってのは立ち位置が重要だ。動きもな。相手に狙われにくい位置を常に探して、隙を作らない行動を徹底する。その上で、例え近付かれてもビビんじゃねえ。絶対に詠唱を止めないといけない時以外は詠唱を止めんなってことだ」
「……なるほど」
「盾になれる奴が近くに居れば代わりに防いでくれるし、詠唱が完了して魔術が出れば、攻撃される前にぶっ飛ばせるかも知れねぇ。詠唱のキャンセルは常に最終手段だ。詠唱を止めた時は、その時間だけお前は戦場から消えていたと思え。そのくらい、時間を無駄にして仲間に負担をかけることになるって意味だ」
僕は誤解していたようだ。先ずは、この男が所謂悪い人であると。絵空のせいで、先入観が付いていた。次に、この人が戦士であると。立派な筋肉とスカーフェイスによって、ムキムキの脳筋戦士であると誤解していた。実際は、ゴリゴリのメイジ……いや、ウィザードだった。
「ありがとうございます。肝に銘じます」
「おう、そうしとけ」
男は初めてにやりと笑い、僕らに背を向けて去って行った。その腰には、鞘付きナイフと短杖が括り付けられていた。
「……怖い人かと思ったら、凄い親切な人だった」
「今まで無謀に冒険者になって死んでいった子を見て来たからでしょう。だから、私がアンタを連れて来たのを見て、同じ景色を見て来た筈の私が無駄死にさせる気かって怒ってたんでしょうね」
なるほどね……それで、最初から怒りが滲んでる感じだったんだ。
「だったら、最初からもうちょっと穏便に説明してくれたら良いのに……」
それとも、冒険者ってのはやっぱり舐められたら負けみたいなところがあるんだろうか。喧嘩腰で来られたら、喧嘩腰で返さなきゃダメみたいな。
「別に、あんなの穏便な方よ。向こうがキレてるのに、こっちが懇切丁寧にしてやる必要も無いでしょ?」
「うーん……」
寧ろ、僕は相手が怒ってたら出来るだけ丁寧に喋るけど……これが、文化の違いという奴だろうか。カルチャーショックだ。
「ま、取り敢えず登録するわよ。ダナウのアホのせいで無駄に時間使っちゃったから、急ぎましょ」
「いや、いいアドバイスを聞けたし良かったよ」
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