ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と冒険者登録

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 受付への列に並んだ僕らは、結構じろじろと見られている気がした。さっきのダナウさんとの会話があったからというのもあるだろうけど、それとは関係なく入門の際もちらちら見られていたのだから、何か見られる理由があるということだろう。恐らくは、レティシアだ。

「レティシア。君って、有名人なんだね」

「ま、この街ではそうね」

 門番の人にも凄い敬われてるような感じだったし、街ではちょっとした英雄的な扱いを受けていたりするんだろうか。街に一人真銀級の冒険者が居れば安泰みたいな話もあったしね。

「次の方、どうぞ」

 受付嬢が、僕らの方を見て声をかける。どうやら番が来ていたらしい。割かし直ぐだった。僕はレティシアと共にカウンターの前まで進み、背の高く目の細い美人の受付嬢を見上げた。

「冒険者になりたいです」

 僕は受付嬢の細い目に若干の圧力を感じつつも、冒険者登録を申し出た。

「承りました。登録料は2000サクになりますがよろしいですか?」

「えっと……」

「はい、これで良いかしら?」

 レティシアが僕の代わりにお金を差し出すと、受付嬢さんの視線が若干冷たくなった気がした。

「それでは、こちらの用紙にご記入をお願いします」

 ペンと共に差し出された紙は、病院で症状なんかを書かされる奴よりも記入事項が少なかった。但し、その後に追加で渡された紙には注意事項とかルール的なものがびっしりと書かれており、それを確認してから最初に渡された紙に記入をしなければならないようだった。
 取り敢えず僕はざっと規約だか注意事項だかを読んだ後、名前と技能なんかを書き込んでいく。凄い、なんかこのペン、微妙に書きにくい……!

「よし、これで良いかな」

 僕はそう呟き、レティシアに見せた後で受付嬢に差し出した。

「ご確認いたします……はい、問題ありません。しかし、メイジであれば杖はお持ちになられた方が良いかと思いますが」

「あ、うん。後で買うよ」

「後で……ですか」

 魔術士なら、何で今持ってないんだよって思われたんだろうね。地球の魔術士だとあんまり杖の文化は無いっぽいんだけどなぁ……単純に魔術関連の技術力が地球よりも高いから、杖もそれだけ強力なんだろうか。

「失礼ですが、冒険者についての知識はどの程度お持ちでしょうか?」

「えっと、あんまり……」

「レティシア様がご同伴されているので、不要な心配かも知れませんが……そちらにガイドがありますので、必要でしたらギルド内でご自由にお読みになって下さい」

「あ、はい。ありがとうございます」

 そう伝えると、受付嬢は少々お待ち下さいと言って、僕の記入した用紙を手にカウンターの奥へと引っ込んでしまった。壁際にある本棚には幾つも本が並んでおり、その左上に勧められたガイドがあるのを見つけた。
 しかし、本とか紙とか、普通にあるんだね。流石に現代にあるようなプリンター用紙ほどの綺麗さは無いけど、昔って言ったらパピルスだとか羊皮紙だとか、あんまり質の良くない紙を使ってるイメージだった。

「別に、私が付き添わなくても大丈夫だったじゃない」

「いや、僕一人だったらダナウさんに追い返されてたかも知れないよ」

 ふぅ、と息を吐いて言うレティシアに、僕は返した。覚悟を決めた表情でギルドに入って来たなら兎も角、僕は能天気そうな顔をしているだろうし、ほぼ確実にダナウさんに追い返されるだろう。そして、確実に僕は言い返せず、圧に負けて帰るだろう。

「こちら、冒険者証になります。お受け取り下さい」

 帰って来た受付嬢が、硬い紙のような……プレート? を僕に渡してきた。その白いプレートには、僕の記入した情報が書き込まれており、左上には左上に輝く小さな石がはめ込まれていた。

「そちらの石に触れて頂ければ、魔力が流し込まれて登録が完了となります」

 言われるがままに指先を触れると、石に魔力が流れ込んで宿った。なるほど、これで本人証明になるって訳だ。

「それと、冒険者になったばかりの方でしたらどこかのパーティに入って活動することを強くお勧め致します。勿論、レティシア様と共に活動されるというのも問題ございません」

「いや、レティシアと一緒に活動するって訳じゃないですが……その、パーティっていうのはどうやって探したら良いですかね?」

 僕が尋ねると、女は冷たい表情のまま答える。

「仲間を募集しているパーティを紹介することも出来ますし、こちらから斡旋することも出来ますよ。また、自分で探したいというのであれば自ら声をかけるか、クランに所属してその中でパーティに入れて貰うということも可能ですね」

 お、おぉ……なんかよく分かんないね。

「あー、じゃあ、斡旋して貰えたら、嬉しいです……あ、でも明日でも大丈夫ですか?」

「えぇ、勿論です。それでは、明日の何時ごろにギルドに来られますか?」

「ん、正午くらいには行きます」

「了解致しました。もしかすれば、その時間までにパーティが見つからない可能性もありますので、事前にご了承下さい」

 僕はこくりと頷き、冒険者証を手にカウンターを去った。ギルド内を照らす照明に翳すと、輝石が光を浴びてキラキラと輝く。

「治、それはおもちゃじゃないのよ。遊んで無くしたり壊したりしたら、再発行にまたお金がかかるからね」

「おっけー、分かったよ。登録料と、入門料は今度返すね」

「別に、安定するまでは返さなくて良いわよ。でも、返す時は利子を付けて返しなさいね?」

 にやりと笑ったレティシアに、僕も同じように笑みを返して頷いた。
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