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全知全能と聖域
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案内された部屋の中に入った僕は、女の子……リリアちゃんから鍵を差し出されたので、それを受け取った。
「ごゆっくり、どうぞ」
「あ、どうも」
閉まって行く扉の向こうで、リリアちゃんがぺこりと頭を下げていた。艶のある黒い髪が見えなくなったところで、僕は息を吐いて扉の方へ歩き、そっと鍵を閉めた。
「ふぅ……疲れたぁ」
僕はベッドに座り込んだ。そして、そのまま布団代わりであろう動物の毛皮を被って横になっていた。
「なんか……チクチクする……」
このベッド凄いチクチクするよ。意外と柔らかくはあるけど、これは……干し草が詰められてるのか。現代日本のベッドに慣れ切ってしまった僕には、ここで寝ることは難しいかも知れない。
「はぁ……」
何だか萎えて体を起こした僕はふと壁際を見て……そこを歩く虫に気付いた。
「ぎゃッ!?」
僕はベッドから転がり落ちて逃げ、全知全能の力によってその虫を外へと転移させた。
「……僕のサンクチュアリに入って来やがって」
僕はぞわぞわっと身震いし、それから再び全知全能の力を発動してこの部屋に存在する虫を全て転移で飛ばし、以後は遠ざけるようにした。
「まぁ、異世界だもんね……居るよね、虫くらいね」
現代日本にだって普通に居るのだ。何なら裏世界には殆ど海洋生物と虫くらいしか居ない。虫はそこまで苦手という程では無いのだが、自分のプライベートエリアに居られるのは無理だ。森の中で見つける分にはそんなに気にならないんだけどね。
「帰ろ」
僕は溜息を吐き、自分の世界へと……地球へと帰還した。
♦
自分の部屋に帰って来た僕はそのままベッドに座り込み、時計を見上げた。設定していた時間よりは三分だけ速かった。一応、時間経過で勝手に戻って来る設定にしてたんだけど……向こうの人の目の前で突然消えたらヤバいし、今度からは外した方が良いね。アラームくらいにしておこう。
しかし、異世界だから好き勝手やろうと最初は思ってたんだけど、気付いたらこっちと同じように仮面を被っちゃってたね。まぁでも、折角だから最初は普通に冒険者を謳歌してみよう。それに満足したら、好き勝手やってみても良いだろう。向こうの世界に迷惑がかかりすぎないくらいに。
……にしても、楽しかったなぁ。異世界。
こんなに楽しいなら、絵空に勧められた奴を読んでおけば良かった。いや、夕食に呼ばれるまで読んどこうかな。メッセージでお勧めの奴なんかも聞いておこう。もしかしたら、向こうで何か役に立つかも知れない。
こんこんと扉が叩かれて、僕はスマホから目線を離す。
「兄貴、ご飯出来たってよ~」
「はいはい」
僕はスマホをススッとスライドさせ、読んでいたページの残り僅かな文章まで速やかに読み切った後に部屋を出た。
階段を下りて、リビングに向かうと既にご飯が出来ていた。最後だった僕は急いで席に座り、手を合わせる。
「いただきます」
残念ながら今日もお父さんは居なかったが、皆一緒に手を合わせて食べ始めた。
「ん、美味しい」
久し振りのオムライスだった。オムライスは僕の好物である。母もそれを知っているので、にやりと笑ってこちらを見ていた。
「そういえば、兄貴……呼んでも返事なかったけど、寝てたの?」
「え、返事したよ?」
「いや、その一時間前くらいだけど」
「あー……寝てたね」
そうか。僕が居ない時間帯に呼ばれてたのか。それは返事が無いに決まってる。だけど、そうか。異世界に行ってる間は、僕の部屋に誰かが入ろうとしてきた時にアラームが鳴るようにしてるけど、声を掛けられても気付けるようにしたいね。
僕の代わりに返事をしてくれるようにするか……いや、異世界に居ても部屋にかけられた声が聞こえるようにして、僕が遠隔で返事を出来るようにしておこう。
それにしても、オムライス美味しいなぁ。向こうの料理なんかも、ちょっと気になってきた。明日は休みだし、冒険者として依頼を受けるのは勿論、レティシアに言われた美味しいご飯処なんかも行ってみよう。
あ、でも、依頼はあんまり良いのを取れるとは限らないんだっけ。普通に森で良い感じの魔物を狩って来て、ギルドで売るとかでも良いし……あれ、でも待てよ。魔物の死体とかはどうやって運ぶんだ?
「……ん」
いや、そうだ。あるじゃないか。空間収納。絵空も言っていたし、僕がさっき読んでた作品にも登場した。空間魔法的なノリで、何も無い所に物をしまえる的な……丁度、僕はウィザードを名乗ってるし、そういう魔術を習得しておこう。ただ、空間魔術は結構他の魔術より難易度が高いけど……まぁ、いっか。向こうは魔術のレベルも高いし、別に使える人は沢山居る筈だ。
良し、明日やるべきこともある程度固まったね。今日はオムライスを食べて、裏世界でも覗きつつ、適当に動画でも見て寝よう。
「ごゆっくり、どうぞ」
「あ、どうも」
閉まって行く扉の向こうで、リリアちゃんがぺこりと頭を下げていた。艶のある黒い髪が見えなくなったところで、僕は息を吐いて扉の方へ歩き、そっと鍵を閉めた。
「ふぅ……疲れたぁ」
僕はベッドに座り込んだ。そして、そのまま布団代わりであろう動物の毛皮を被って横になっていた。
「なんか……チクチクする……」
このベッド凄いチクチクするよ。意外と柔らかくはあるけど、これは……干し草が詰められてるのか。現代日本のベッドに慣れ切ってしまった僕には、ここで寝ることは難しいかも知れない。
「はぁ……」
何だか萎えて体を起こした僕はふと壁際を見て……そこを歩く虫に気付いた。
「ぎゃッ!?」
僕はベッドから転がり落ちて逃げ、全知全能の力によってその虫を外へと転移させた。
「……僕のサンクチュアリに入って来やがって」
僕はぞわぞわっと身震いし、それから再び全知全能の力を発動してこの部屋に存在する虫を全て転移で飛ばし、以後は遠ざけるようにした。
「まぁ、異世界だもんね……居るよね、虫くらいね」
現代日本にだって普通に居るのだ。何なら裏世界には殆ど海洋生物と虫くらいしか居ない。虫はそこまで苦手という程では無いのだが、自分のプライベートエリアに居られるのは無理だ。森の中で見つける分にはそんなに気にならないんだけどね。
「帰ろ」
僕は溜息を吐き、自分の世界へと……地球へと帰還した。
♦
自分の部屋に帰って来た僕はそのままベッドに座り込み、時計を見上げた。設定していた時間よりは三分だけ速かった。一応、時間経過で勝手に戻って来る設定にしてたんだけど……向こうの人の目の前で突然消えたらヤバいし、今度からは外した方が良いね。アラームくらいにしておこう。
しかし、異世界だから好き勝手やろうと最初は思ってたんだけど、気付いたらこっちと同じように仮面を被っちゃってたね。まぁでも、折角だから最初は普通に冒険者を謳歌してみよう。それに満足したら、好き勝手やってみても良いだろう。向こうの世界に迷惑がかかりすぎないくらいに。
……にしても、楽しかったなぁ。異世界。
こんなに楽しいなら、絵空に勧められた奴を読んでおけば良かった。いや、夕食に呼ばれるまで読んどこうかな。メッセージでお勧めの奴なんかも聞いておこう。もしかしたら、向こうで何か役に立つかも知れない。
こんこんと扉が叩かれて、僕はスマホから目線を離す。
「兄貴、ご飯出来たってよ~」
「はいはい」
僕はスマホをススッとスライドさせ、読んでいたページの残り僅かな文章まで速やかに読み切った後に部屋を出た。
階段を下りて、リビングに向かうと既にご飯が出来ていた。最後だった僕は急いで席に座り、手を合わせる。
「いただきます」
残念ながら今日もお父さんは居なかったが、皆一緒に手を合わせて食べ始めた。
「ん、美味しい」
久し振りのオムライスだった。オムライスは僕の好物である。母もそれを知っているので、にやりと笑ってこちらを見ていた。
「そういえば、兄貴……呼んでも返事なかったけど、寝てたの?」
「え、返事したよ?」
「いや、その一時間前くらいだけど」
「あー……寝てたね」
そうか。僕が居ない時間帯に呼ばれてたのか。それは返事が無いに決まってる。だけど、そうか。異世界に行ってる間は、僕の部屋に誰かが入ろうとしてきた時にアラームが鳴るようにしてるけど、声を掛けられても気付けるようにしたいね。
僕の代わりに返事をしてくれるようにするか……いや、異世界に居ても部屋にかけられた声が聞こえるようにして、僕が遠隔で返事を出来るようにしておこう。
それにしても、オムライス美味しいなぁ。向こうの料理なんかも、ちょっと気になってきた。明日は休みだし、冒険者として依頼を受けるのは勿論、レティシアに言われた美味しいご飯処なんかも行ってみよう。
あ、でも、依頼はあんまり良いのを取れるとは限らないんだっけ。普通に森で良い感じの魔物を狩って来て、ギルドで売るとかでも良いし……あれ、でも待てよ。魔物の死体とかはどうやって運ぶんだ?
「……ん」
いや、そうだ。あるじゃないか。空間収納。絵空も言っていたし、僕がさっき読んでた作品にも登場した。空間魔法的なノリで、何も無い所に物をしまえる的な……丁度、僕はウィザードを名乗ってるし、そういう魔術を習得しておこう。ただ、空間魔術は結構他の魔術より難易度が高いけど……まぁ、いっか。向こうは魔術のレベルも高いし、別に使える人は沢山居る筈だ。
良し、明日やるべきこともある程度固まったね。今日はオムライスを食べて、裏世界でも覗きつつ、適当に動画でも見て寝よう。
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