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全知全能と呪われた本
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僕は宙に浮く本を見上げつつ、先ずは話を聞いてみることにした。
「そもそも、君は何なのかな? なんか、呪われた本……?」
『あ? まさか、何も知らねぇで来たってのかよ?』
「うん。正確に言うと、この家の地下室が呪われてて、その原因の箱があるって話は聞いてたかな。解呪して地下室に入れるようにする為に、僕はここに来たよ」
『そりゃ、ご愁傷様だな。ちぃっとここで眠ってて貰うぜ。あんな一瞬でオレ様の呪いを浄化したってこたぁ、お前はそれなりの聖職者かも知れねえが……』
本から、ぶわっとさっきまでとは比べ物にならない程の呪力が溢れ出す。僕は咄嗟に遠隔で地下室の扉を閉めた。
『さっきまでのは、オレ様の力の一欠けらでしかねぇ。お前は、溢れてた分のオレ様の呪力を浄化しただけに過ぎねぇのさ』
「凄いね。別に僕は聖職者じゃないけど、襲って来るなら浄化してあげるよ」
『あ? ならメイジか? いや、にしては解呪に魔力を感じなかっ……待てよ、魔力も聖力も、感じなかったぞ』
本はぱたりと閉じ、その表紙に赤黒い大きな目をぎょろりと浮かべて僕を睨み付けた。
『なぁ』
赤黒い目は瞬きもせずに、じっと僕を見ている。
『何なんだよ、お前こそ』
「何なんだって、僕はただの人間で……冒険者、そしてウィザード」
僕はそう言い放つと、手を横にすらりと伸ばして魔力を高まらせた。
『自信満々だが、大した量には見えねぇな。ウィザードだって言い張るには、あと三倍は魔力が欲しい所だ。まさか、オレ様でも見抜けねぇ程の魔力擬装をしてるって可能性もあるが……』
「いや、魔力擬装は解除してるよ。これが僕の全開の魔力だ」
僕が答えると、呪いの本はスッと目を細めた。
『だったら、本当に何だってんだよ。聖職者じゃねぇ、ウィザードにも足りねぇ。何より、魔力も何も感じなかった。どんなやり方で、オレ様の呪力を浄化しやがった』
言いながら、本から溢れ出す呪力が強まった。不味い、これだと外に居るおじさんにまで影響が出る可能性がある。地下室を閉めたと言っても、箱からは抜け出してしまった今、呪力の封じ込めは出来ているとは言い難い状況だ。
「ちょっと、一旦ストップ」
僕は手を伸ばし、本から溢れる呪力の全てを消し去った。本は細めていた目を見開き、パサリと地面に落ちた。
『な、なな……ッ!』
「なな?」
本はふらふらと空中に浮き上がり、僕を睨み付ける。
『何なんだ!? 何を、どうしやがった!? オレ様の呪力はどこに……!?』
「消したよ。ぶっちゃけ言うと、僕は不思議パワーを使えるんだ。それで、君の呪力は今のところ綺麗サッパリ消えた」
『ふ、ふしぎぱわー……?』
「うん。それでさ、君の目的とか君が何なのかとか、そろそろ聞かせて欲しいんだ」
本は暫く固まった後に、その僕を睨み付ける視線を緩めた。
『……分かったよ、話してやる。オレ様に拒否権なんざ無さそうだしな』
腰を据えるように箱の上に乗った本は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
『オレ様は、元々は結構名のある悪魔だったのさ。だが、魔王軍によって召喚されたオレ様は、本に封じ込められちまった。所謂、呪いの本って奴にな』
「名のある悪魔なら、抵抗したり出来なかったの?」
『流石に無理だぜ。魔天衆なんかもあそこには居たからな。オレ様も消し去られるよりはと契約を受け入れたのさ。向こうは、呪われた魔術書に悪魔を封じ込めて使役すれば強大な魔道具として機能するかも知れないと考えたんだろうよ。実際、オレ様は結構な活躍をしたぜ?』
皮肉そうに言う本に、僕は言葉を返さなかった。
『だがよ、オレ様もそれなりの悪魔だ。呪力を接着剤にオレ様を封じていたつもりだろうが、呪力はオレ様の武器にもなっていた。オレ様は機を待ち続けた。そしてチャンスが来た時、下された命令を寧ろ利用してオレ様は呪力を全力で解放した。あの時の呪力は今よりもずっと強かったからな、何せ死ぬ程のニンゲンを殺したんだ。呪力も高まるに決まってる』
「それで、どうなったの?」
『オレ様の使い手だった奴も含めて、その場の殆どの奴らが死んだ。当然だ。殺す気で解放したんだからな。そうして、使い手を殺して自由を得たオレ様はそこから逃げ出して、この本からも解き放たれようとした訳だ。後は、オレ様と本を結び付ける接着剤になっている呪力を根こそぎ吐き出して、脆弱になった契約を破棄するだけで、オレ様は本の中からおさらば出来る。簡単な話だ』
「……僕の目には、まだ君は本のままに見えるけど」
僕が言うと、本はハッと笑った。
『そりゃ、お前の目が正常に機能してるってこった。良かったな。問題があったのは、オレ様の方さ。半年以上を本の身で過ごしたオレ様は、沢山の奴らに憎まれ、恐れられた。だからもう、手遅れだったんだよ。オレ様は、とっくにこの本と同じ……呪具になっちまってた訳だ』
僕は息を呑み、本の表紙に浮かぶ赤黒い目を見た。
「そもそも、君は何なのかな? なんか、呪われた本……?」
『あ? まさか、何も知らねぇで来たってのかよ?』
「うん。正確に言うと、この家の地下室が呪われてて、その原因の箱があるって話は聞いてたかな。解呪して地下室に入れるようにする為に、僕はここに来たよ」
『そりゃ、ご愁傷様だな。ちぃっとここで眠ってて貰うぜ。あんな一瞬でオレ様の呪いを浄化したってこたぁ、お前はそれなりの聖職者かも知れねえが……』
本から、ぶわっとさっきまでとは比べ物にならない程の呪力が溢れ出す。僕は咄嗟に遠隔で地下室の扉を閉めた。
『さっきまでのは、オレ様の力の一欠けらでしかねぇ。お前は、溢れてた分のオレ様の呪力を浄化しただけに過ぎねぇのさ』
「凄いね。別に僕は聖職者じゃないけど、襲って来るなら浄化してあげるよ」
『あ? ならメイジか? いや、にしては解呪に魔力を感じなかっ……待てよ、魔力も聖力も、感じなかったぞ』
本はぱたりと閉じ、その表紙に赤黒い大きな目をぎょろりと浮かべて僕を睨み付けた。
『なぁ』
赤黒い目は瞬きもせずに、じっと僕を見ている。
『何なんだよ、お前こそ』
「何なんだって、僕はただの人間で……冒険者、そしてウィザード」
僕はそう言い放つと、手を横にすらりと伸ばして魔力を高まらせた。
『自信満々だが、大した量には見えねぇな。ウィザードだって言い張るには、あと三倍は魔力が欲しい所だ。まさか、オレ様でも見抜けねぇ程の魔力擬装をしてるって可能性もあるが……』
「いや、魔力擬装は解除してるよ。これが僕の全開の魔力だ」
僕が答えると、呪いの本はスッと目を細めた。
『だったら、本当に何だってんだよ。聖職者じゃねぇ、ウィザードにも足りねぇ。何より、魔力も何も感じなかった。どんなやり方で、オレ様の呪力を浄化しやがった』
言いながら、本から溢れ出す呪力が強まった。不味い、これだと外に居るおじさんにまで影響が出る可能性がある。地下室を閉めたと言っても、箱からは抜け出してしまった今、呪力の封じ込めは出来ているとは言い難い状況だ。
「ちょっと、一旦ストップ」
僕は手を伸ばし、本から溢れる呪力の全てを消し去った。本は細めていた目を見開き、パサリと地面に落ちた。
『な、なな……ッ!』
「なな?」
本はふらふらと空中に浮き上がり、僕を睨み付ける。
『何なんだ!? 何を、どうしやがった!? オレ様の呪力はどこに……!?』
「消したよ。ぶっちゃけ言うと、僕は不思議パワーを使えるんだ。それで、君の呪力は今のところ綺麗サッパリ消えた」
『ふ、ふしぎぱわー……?』
「うん。それでさ、君の目的とか君が何なのかとか、そろそろ聞かせて欲しいんだ」
本は暫く固まった後に、その僕を睨み付ける視線を緩めた。
『……分かったよ、話してやる。オレ様に拒否権なんざ無さそうだしな』
腰を据えるように箱の上に乗った本は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
『オレ様は、元々は結構名のある悪魔だったのさ。だが、魔王軍によって召喚されたオレ様は、本に封じ込められちまった。所謂、呪いの本って奴にな』
「名のある悪魔なら、抵抗したり出来なかったの?」
『流石に無理だぜ。魔天衆なんかもあそこには居たからな。オレ様も消し去られるよりはと契約を受け入れたのさ。向こうは、呪われた魔術書に悪魔を封じ込めて使役すれば強大な魔道具として機能するかも知れないと考えたんだろうよ。実際、オレ様は結構な活躍をしたぜ?』
皮肉そうに言う本に、僕は言葉を返さなかった。
『だがよ、オレ様もそれなりの悪魔だ。呪力を接着剤にオレ様を封じていたつもりだろうが、呪力はオレ様の武器にもなっていた。オレ様は機を待ち続けた。そしてチャンスが来た時、下された命令を寧ろ利用してオレ様は呪力を全力で解放した。あの時の呪力は今よりもずっと強かったからな、何せ死ぬ程のニンゲンを殺したんだ。呪力も高まるに決まってる』
「それで、どうなったの?」
『オレ様の使い手だった奴も含めて、その場の殆どの奴らが死んだ。当然だ。殺す気で解放したんだからな。そうして、使い手を殺して自由を得たオレ様はそこから逃げ出して、この本からも解き放たれようとした訳だ。後は、オレ様と本を結び付ける接着剤になっている呪力を根こそぎ吐き出して、脆弱になった契約を破棄するだけで、オレ様は本の中からおさらば出来る。簡単な話だ』
「……僕の目には、まだ君は本のままに見えるけど」
僕が言うと、本はハッと笑った。
『そりゃ、お前の目が正常に機能してるってこった。良かったな。問題があったのは、オレ様の方さ。半年以上を本の身で過ごしたオレ様は、沢山の奴らに憎まれ、恐れられた。だからもう、手遅れだったんだよ。オレ様は、とっくにこの本と同じ……呪具になっちまってた訳だ』
僕は息を呑み、本の表紙に浮かぶ赤黒い目を見た。
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