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全知全能と求めるもの
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なるほど、大体の話は分かったよ。だけど、それはこの本の昔の話だ。
「それで、君は今どうしてここに封印されてるのかな?」
『そうだな……呪具になっちまったオレ様は、何とか元に戻る方法はねぇかと探し回った。その過程で、まぁ色々とやったんだよ。勝手に忍び込んだり、知ってそうな奴の記憶を覗いてみたりな』
「悪いなぁ」
『誰にもバレねぇように上手くやってたつもりだったんだが……根城にしてた使われてない地下室に、突然変な奴がやってきてな』
変な奴。
『法衣を身に纏った女だった。見てるだけで浄化されそうな雰囲気で、一周回って気持ち悪いくらいだったぜ』
「へぇ」
『聖王国から来た聖女だって言うんだが、どうやら周辺で悪さをしていたオレ様のことを見つけ出したらしくてな、良く分かんねぇ箱に封じられて、根城にしていた地下室にそのまま封印されちまったんだよ。暫くここで反省してろってな』
「なるほどね」
そのくらいのテンションだったんだ。その聖女様も大分適当って言うか、危機感が無い感じがするけど……まぁ、この本が自分から人を食ったりなんてことをしないと察していたのかも知れない。
『クソ、思い出しただけで腹が立って来たぜ! あのクソカス女、オレ様のことをオイタしたクソガキ程度に扱いやがって……! あんの偉そう似非聖女、いつか会ったらぜってぇ分からせてやる……!』
「……うん。まぁ、頑張って」
僕はそう言ったものの、どうするべきか悩んではいた。全知全能によると、ここまでの話に嘘は無いようだった。となると、消し去られるまでの謂われは無いし、かと言って放置するには危険すぎる気もする。
「君はこれから、どうする気なの?」
『あ? んなもん、何とかこの本から解き放たれる方法を探すに決まってんだろ? このままじゃ、何の飯も食えやしねぇよ』
食べるのが好きなんだね。
「なんか、本に目を出してたけどそんなノリで口は作れないの?」
『これは飽くまで魔術によって再現した器官だ。昔から何かを見ようとする魔術はあっても、味を確かめようとする魔術はねぇ。まぁ、どっかにゃあるかも知らんがオレ様は知らねぇよ。それにな、情報を解析して味を知ることくらいは出来るが、食事ってのは味を感じた後には腹に流し込まれなきゃいけねぇんだよ。お前らだって、何かを咀嚼するだけ咀嚼して吐き出したりはしねぇだろ? んなもんじゃ、食欲は満たされねぇからだよ』
「まぁ、そうだね」
一応、ガムとかはあるけど……まぁ、食事を吐き出すことはしないだろう。にしても、食に対する情熱が凄いね。
『だが、このオレ様の道を塞ごうってんなら……やっぱり、ちょっとおねんねして貰わなきゃいけねぇなぁ?』
「うん。流石にこのまま行かせるって訳には、行かないかなぁ……」
『ハッ、そうかよ。良いぜ、そんなにオレ様の力が見たけりゃ見せてやる』
本が箱の上から浮かび上がる。そして、今度は呪力ではなく魔力が高まり……
「ごめんだけど、人の家の地下室で戦う気は無いよ」
『ッ!!?』
その魔力は、何事も無く霧散した。箱の上に落ちた本は再び魔力を操ろうとしているようだが、その度に魔力は形とならず霧散していくだけだった。
『お前、何をした……いや、何者だよ。あの似非聖女もヤバかったが、お前はその比じゃねぇ。これだけのことをやってる癖に、まだお前からは力の欠片すら見えねぇ』
「言ったじゃん。不思議パワーだって」
『だから、その力を感じねぇって言ってんだよ。力ってのはな、オレ様が知る限り全て動きがある。高まればその圧力が、存在感が強まって、何を分からねぇ素人ですら寒気を覚えたりビビったりするもんだ』
「まぁ、かもね」
箱の上で起き上がった本は、赤黒い目をまたこちらに向けていた。
『だが、お前の力には……動きが無い。流れも無い。ただ、力を齎した結果だけがそこにあるみたいに、過程が見えないんだよ。そもそも、存在してないのかもな? まるで、神様の力みたいだ』
「……」
僕は何も答えず、黙った。
『なぁ、お前は何なんだ。そんで、何がしたいんだ。お前は、オレ様に何を求めてここに居る。オレ様は悪魔だ。契約がしたいってんなら、さっさと言ってみろよ』
「……契約か。確かに、丁度良いかもね」
僕は頷き、本に封じられた悪魔に求めることを考えた。
「僕は君がそんなに悪い奴だとは思えない。だけど、このまま放っておくのも怖い。君が誰かに危害を加えたなら、それは僕のせいでもあると思うから」
『……』
悪魔は黙って僕の話を聞いている。だから、僕も言葉を続けた。
「君はこれから、誰も傷付けないで。自分や自分にとって大切な誰かを守る時以外は、その力で誰かを傷付けたらダメだ。君なら、僕の今の言葉の意図は分かる筈だから、その意図を外れてると思ったことはしちゃダメだ。例えば、わざと相手を挑発して殴らせてから自分も殴り返すとかね」
『ハッ、これからずっと、か? 随分と重い契約だが……何を差し出すつもりだ?』
「君をその本の中から解き放ってあげるよ」
『ッ』
本に浮かんだ目が、僅かに反応したのを僕は見た。
『確かにな。このままじゃ、もしかしたら一生オレ様は本から抜け出せねぇかも知れねぇ』
だけど、いつかは抜け出せるかも知れない。そう言いたそうな本に次の台詞を言わせる前に、僕が口を開いた。
「それと、君に今まで食べたことないような料理を食べさせてあげるよ」
『は?』
「僕、実は異世界人なんだ」
『は??』
僕はにやりと笑みを浮かべ、更に続けた。
「この世界では決して食べられない異世界の料理……僕と契約したら、食べられるけど?」
『…………契約成立だ』
凄い。本当に釣れた。
「それで、君は今どうしてここに封印されてるのかな?」
『そうだな……呪具になっちまったオレ様は、何とか元に戻る方法はねぇかと探し回った。その過程で、まぁ色々とやったんだよ。勝手に忍び込んだり、知ってそうな奴の記憶を覗いてみたりな』
「悪いなぁ」
『誰にもバレねぇように上手くやってたつもりだったんだが……根城にしてた使われてない地下室に、突然変な奴がやってきてな』
変な奴。
『法衣を身に纏った女だった。見てるだけで浄化されそうな雰囲気で、一周回って気持ち悪いくらいだったぜ』
「へぇ」
『聖王国から来た聖女だって言うんだが、どうやら周辺で悪さをしていたオレ様のことを見つけ出したらしくてな、良く分かんねぇ箱に封じられて、根城にしていた地下室にそのまま封印されちまったんだよ。暫くここで反省してろってな』
「なるほどね」
そのくらいのテンションだったんだ。その聖女様も大分適当って言うか、危機感が無い感じがするけど……まぁ、この本が自分から人を食ったりなんてことをしないと察していたのかも知れない。
『クソ、思い出しただけで腹が立って来たぜ! あのクソカス女、オレ様のことをオイタしたクソガキ程度に扱いやがって……! あんの偉そう似非聖女、いつか会ったらぜってぇ分からせてやる……!』
「……うん。まぁ、頑張って」
僕はそう言ったものの、どうするべきか悩んではいた。全知全能によると、ここまでの話に嘘は無いようだった。となると、消し去られるまでの謂われは無いし、かと言って放置するには危険すぎる気もする。
「君はこれから、どうする気なの?」
『あ? んなもん、何とかこの本から解き放たれる方法を探すに決まってんだろ? このままじゃ、何の飯も食えやしねぇよ』
食べるのが好きなんだね。
「なんか、本に目を出してたけどそんなノリで口は作れないの?」
『これは飽くまで魔術によって再現した器官だ。昔から何かを見ようとする魔術はあっても、味を確かめようとする魔術はねぇ。まぁ、どっかにゃあるかも知らんがオレ様は知らねぇよ。それにな、情報を解析して味を知ることくらいは出来るが、食事ってのは味を感じた後には腹に流し込まれなきゃいけねぇんだよ。お前らだって、何かを咀嚼するだけ咀嚼して吐き出したりはしねぇだろ? んなもんじゃ、食欲は満たされねぇからだよ』
「まぁ、そうだね」
一応、ガムとかはあるけど……まぁ、食事を吐き出すことはしないだろう。にしても、食に対する情熱が凄いね。
『だが、このオレ様の道を塞ごうってんなら……やっぱり、ちょっとおねんねして貰わなきゃいけねぇなぁ?』
「うん。流石にこのまま行かせるって訳には、行かないかなぁ……」
『ハッ、そうかよ。良いぜ、そんなにオレ様の力が見たけりゃ見せてやる』
本が箱の上から浮かび上がる。そして、今度は呪力ではなく魔力が高まり……
「ごめんだけど、人の家の地下室で戦う気は無いよ」
『ッ!!?』
その魔力は、何事も無く霧散した。箱の上に落ちた本は再び魔力を操ろうとしているようだが、その度に魔力は形とならず霧散していくだけだった。
『お前、何をした……いや、何者だよ。あの似非聖女もヤバかったが、お前はその比じゃねぇ。これだけのことをやってる癖に、まだお前からは力の欠片すら見えねぇ』
「言ったじゃん。不思議パワーだって」
『だから、その力を感じねぇって言ってんだよ。力ってのはな、オレ様が知る限り全て動きがある。高まればその圧力が、存在感が強まって、何を分からねぇ素人ですら寒気を覚えたりビビったりするもんだ』
「まぁ、かもね」
箱の上で起き上がった本は、赤黒い目をまたこちらに向けていた。
『だが、お前の力には……動きが無い。流れも無い。ただ、力を齎した結果だけがそこにあるみたいに、過程が見えないんだよ。そもそも、存在してないのかもな? まるで、神様の力みたいだ』
「……」
僕は何も答えず、黙った。
『なぁ、お前は何なんだ。そんで、何がしたいんだ。お前は、オレ様に何を求めてここに居る。オレ様は悪魔だ。契約がしたいってんなら、さっさと言ってみろよ』
「……契約か。確かに、丁度良いかもね」
僕は頷き、本に封じられた悪魔に求めることを考えた。
「僕は君がそんなに悪い奴だとは思えない。だけど、このまま放っておくのも怖い。君が誰かに危害を加えたなら、それは僕のせいでもあると思うから」
『……』
悪魔は黙って僕の話を聞いている。だから、僕も言葉を続けた。
「君はこれから、誰も傷付けないで。自分や自分にとって大切な誰かを守る時以外は、その力で誰かを傷付けたらダメだ。君なら、僕の今の言葉の意図は分かる筈だから、その意図を外れてると思ったことはしちゃダメだ。例えば、わざと相手を挑発して殴らせてから自分も殴り返すとかね」
『ハッ、これからずっと、か? 随分と重い契約だが……何を差し出すつもりだ?』
「君をその本の中から解き放ってあげるよ」
『ッ』
本に浮かんだ目が、僅かに反応したのを僕は見た。
『確かにな。このままじゃ、もしかしたら一生オレ様は本から抜け出せねぇかも知れねぇ』
だけど、いつかは抜け出せるかも知れない。そう言いたそうな本に次の台詞を言わせる前に、僕が口を開いた。
「それと、君に今まで食べたことないような料理を食べさせてあげるよ」
『は?』
「僕、実は異世界人なんだ」
『は??』
僕はにやりと笑みを浮かべ、更に続けた。
「この世界では決して食べられない異世界の料理……僕と契約したら、食べられるけど?」
『…………契約成立だ』
凄い。本当に釣れた。
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