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全知全能と悪魔
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暗い赤髪の男が、路地裏からのそりと出て来て、周囲をちらりと見回す。そして、ターゲットを見つけたらしいその男は……ユモンは、路肩で座り込んでいる中年の男の方へと歩き出した。
「よぉ、大丈夫か? おっさん」
「何だよ、テメェは……俺のことを馬鹿にしにでも来たのか?」
「あ? んだよそれ。んなことで死にそうな顔して座ってたら心配の一つくらいすんだろ?」
「……金を落としたんだよ」
ぽつりと、男は呟くように言った。
「落とした? どこにだよ」
「分からねぇ……気づいたら、無くなってたんだよ! 街に来たばっかりで、ぐるぐる回ってたからどこだとか見当もつかねぇ。あ、いや北側ではある筈だな。最後に金を使ったのが、クスタ商店だったからよ」
「金はどんなのに入れてたんだ?」
「ボロい巾着だよ。上の方に三つくらい穴が開いてる。ベルトに吊るしてたんだが、なんかの拍子に外れちまったか……スラれたか、だな」
ユモンはにやりと笑い、指を一本立てた。
「良かったな、おっさん。オレ様は、ちっと占いじみたことが出来んだよ。アンタの金の行方、占ってやってもいい」
「ッ、本当かよ?」
「ヒヒッ、大マジだ。例えば……あぁ、アンタは別の街で商人だったんだな」
「な、何で分かった!? いや、そのくらいなら……推察できないこともない、か?」
一瞬信じかけた男だが、直ぐに表情を引き締める。
「だが、その街でやらかして……商会に迷惑をかけたから追い出されたんだな? お陰で、街で働く先を見つけることすら困難になっちまった、と」
「ッ!!?」
引き締められた表情が、一気に崩壊した。
「な、なな……なんで知ってやがる!?」
思わずユモンに掴みかかる男だが、ユモンはヘラっと笑って両手を上げた。
「おいおい、落ち着けよ。暴力沙汰なんざ起こしたら、ここでも商売出来なくなっちまうぜ?」
「ッ、わ、分かった……落ち着くから、教えてくれよ。なんで、俺のことをそんなに知ってんだ」
「だから、占いだよ。嘘じゃねぇぜ?」
「……分かった。信じるぜ」
男は手を離し、ユモンから一歩距離を離した。
「掴みかかって、悪かった」
「あぁ、良いんだよ別に。それで……オレ様の占いを信じたって言うなら、アンタの金がどこに落ちてんのかも、占ってやれるぜ? ま、スラれてんなら大変かも知れねぇけどな」
「……頼む」
「おうよ、任せとけ」
ユモンはニカッと笑いかけた後、目を瞑って集中し始めた。
「見えたぜ」
「ッ、本当か!?」
「おう。結構近くにある飯屋の脇辺りだな。雑草の中に紛れてるように見える」
「わ、分かった! 案内してくれねぇか? 礼は必ずする!」
ユモンの言葉に思わず離していた距離を再び詰める男。ユモンは男をやんわりと押して距離を離し、付いて来るようにジェスチャーで示した。
「別に、無理しなくても良いんだぜ? 飯を奢ってくれりゃ、それで良い」
「本当に良いのか……? 一応、家の方にはそれなりに金も無くはないが」
「面倒臭ぇからいい。それより、さっさと飯奢ってくれよ。オレ様、腹減ってんだァ」
「分かった分かった。好きなだけ食わせてやるよ」
「ヒヒヒッ、言ったなァ?」
男と共に去っていく途中で、ユモンはこちらに振り向き、にやりと笑みを見せて軽く手を上げた。
「……凄いじゃん」
占いとかも出来るんだ。流石は悪魔だね。知らんけど。まぁ、兎も角僕は宿屋に行っておこうか。ユモンなら、先に行ってても占いかなんかで場所が分かるだろう。
白い牡鹿。それが描かれた看板のかけられた宿屋に入ると、温かい空気と美味しそうな匂いが漂っていた。
「お、もう帰って来たのか」
「あ、いえ、ちょっとご飯食べたいなと思って……」
「ほう、何が食いたい。オススメは鹿肉のシチューだ」
「なら、それでお願いします。飲み物も、お酒以外なら何でも」
僕が言うと、店主はへっと笑った。
「そもそも、うちじゃ酒は売ってねぇよ。酔っ払いが居るとやかましいだろ? そういうのは居酒屋に任せてんだ」
「へぇ、そうなんですね」
「おう。だから大体は水だな。後は牛乳か、今ならリンゴのジュースか、一応、スープもあるな」
「じゃあ、水で良いですか?」
僕が聞くと、こくりと店主は頷き、裏に声をかけた。裏側には、前に僕を案内してくれた娘と、店主の奥さんらしき中年の女の人が調理をしていた。
「ん? 好きなとこに座ってて良いぞ」
「あ、はい」
ボーっとそれを見ていた僕は店主に言われて近くに人が少ない席を選び、木製の椅子に座り込んだ。
「……ふぅ」
僕は息を吐き、椅子にもたれる。天井からぶら下がっている照明は、温かみのある光を放っている。電球のようには見えないけど、アレはなんだろう。石っぽいかな。
しかし、疲れたね。ちょっとは歩いたし、色々あったし……この後のパーティのあれこれとか僕耐えられるんだろうか。
「まぁ、いけるか」
疲労回復の魔術すらも僕は習得しているのだ。まぁ、してなくても全知全能で疲労回復くらい出来るけどね。
「よぉ、大丈夫か? おっさん」
「何だよ、テメェは……俺のことを馬鹿にしにでも来たのか?」
「あ? んだよそれ。んなことで死にそうな顔して座ってたら心配の一つくらいすんだろ?」
「……金を落としたんだよ」
ぽつりと、男は呟くように言った。
「落とした? どこにだよ」
「分からねぇ……気づいたら、無くなってたんだよ! 街に来たばっかりで、ぐるぐる回ってたからどこだとか見当もつかねぇ。あ、いや北側ではある筈だな。最後に金を使ったのが、クスタ商店だったからよ」
「金はどんなのに入れてたんだ?」
「ボロい巾着だよ。上の方に三つくらい穴が開いてる。ベルトに吊るしてたんだが、なんかの拍子に外れちまったか……スラれたか、だな」
ユモンはにやりと笑い、指を一本立てた。
「良かったな、おっさん。オレ様は、ちっと占いじみたことが出来んだよ。アンタの金の行方、占ってやってもいい」
「ッ、本当かよ?」
「ヒヒッ、大マジだ。例えば……あぁ、アンタは別の街で商人だったんだな」
「な、何で分かった!? いや、そのくらいなら……推察できないこともない、か?」
一瞬信じかけた男だが、直ぐに表情を引き締める。
「だが、その街でやらかして……商会に迷惑をかけたから追い出されたんだな? お陰で、街で働く先を見つけることすら困難になっちまった、と」
「ッ!!?」
引き締められた表情が、一気に崩壊した。
「な、なな……なんで知ってやがる!?」
思わずユモンに掴みかかる男だが、ユモンはヘラっと笑って両手を上げた。
「おいおい、落ち着けよ。暴力沙汰なんざ起こしたら、ここでも商売出来なくなっちまうぜ?」
「ッ、わ、分かった……落ち着くから、教えてくれよ。なんで、俺のことをそんなに知ってんだ」
「だから、占いだよ。嘘じゃねぇぜ?」
「……分かった。信じるぜ」
男は手を離し、ユモンから一歩距離を離した。
「掴みかかって、悪かった」
「あぁ、良いんだよ別に。それで……オレ様の占いを信じたって言うなら、アンタの金がどこに落ちてんのかも、占ってやれるぜ? ま、スラれてんなら大変かも知れねぇけどな」
「……頼む」
「おうよ、任せとけ」
ユモンはニカッと笑いかけた後、目を瞑って集中し始めた。
「見えたぜ」
「ッ、本当か!?」
「おう。結構近くにある飯屋の脇辺りだな。雑草の中に紛れてるように見える」
「わ、分かった! 案内してくれねぇか? 礼は必ずする!」
ユモンの言葉に思わず離していた距離を再び詰める男。ユモンは男をやんわりと押して距離を離し、付いて来るようにジェスチャーで示した。
「別に、無理しなくても良いんだぜ? 飯を奢ってくれりゃ、それで良い」
「本当に良いのか……? 一応、家の方にはそれなりに金も無くはないが」
「面倒臭ぇからいい。それより、さっさと飯奢ってくれよ。オレ様、腹減ってんだァ」
「分かった分かった。好きなだけ食わせてやるよ」
「ヒヒヒッ、言ったなァ?」
男と共に去っていく途中で、ユモンはこちらに振り向き、にやりと笑みを見せて軽く手を上げた。
「……凄いじゃん」
占いとかも出来るんだ。流石は悪魔だね。知らんけど。まぁ、兎も角僕は宿屋に行っておこうか。ユモンなら、先に行ってても占いかなんかで場所が分かるだろう。
白い牡鹿。それが描かれた看板のかけられた宿屋に入ると、温かい空気と美味しそうな匂いが漂っていた。
「お、もう帰って来たのか」
「あ、いえ、ちょっとご飯食べたいなと思って……」
「ほう、何が食いたい。オススメは鹿肉のシチューだ」
「なら、それでお願いします。飲み物も、お酒以外なら何でも」
僕が言うと、店主はへっと笑った。
「そもそも、うちじゃ酒は売ってねぇよ。酔っ払いが居るとやかましいだろ? そういうのは居酒屋に任せてんだ」
「へぇ、そうなんですね」
「おう。だから大体は水だな。後は牛乳か、今ならリンゴのジュースか、一応、スープもあるな」
「じゃあ、水で良いですか?」
僕が聞くと、こくりと店主は頷き、裏に声をかけた。裏側には、前に僕を案内してくれた娘と、店主の奥さんらしき中年の女の人が調理をしていた。
「ん? 好きなとこに座ってて良いぞ」
「あ、はい」
ボーっとそれを見ていた僕は店主に言われて近くに人が少ない席を選び、木製の椅子に座り込んだ。
「……ふぅ」
僕は息を吐き、椅子にもたれる。天井からぶら下がっている照明は、温かみのある光を放っている。電球のようには見えないけど、アレはなんだろう。石っぽいかな。
しかし、疲れたね。ちょっとは歩いたし、色々あったし……この後のパーティのあれこれとか僕耐えられるんだろうか。
「まぁ、いけるか」
疲労回復の魔術すらも僕は習得しているのだ。まぁ、してなくても全知全能で疲労回復くらい出来るけどね。
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