ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と決まり

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 流石に狩りは十分と判断した僕たちは森からの撤退を決めた。

「いやぁ……まさか、ブランブルベアまであんなあっさり狩れちまうとはな!」

「さっきも言ってたけど、全然僕からすればあっさりじゃないけどねあんなの」

 普通にこってりだよ。胃もたれしそうだ。

「一度、襲われている冒険者を助けに入って狩ったこと自体はあるけど……かなり時間がかかったね。手負いの冒険者を守りながらというのもあったけど、やっぱりブランブルベアは皮膚が硬くて手古摺ったよ」

「な。しかも、茨で近付くのもだりぃしなぁ」

「……因みに、さっきの魔術は何?」

 さっきのって、熊の首を刎ね飛ばした奴かな。

「雷と風の複合魔術だね」

「……そんなのは、見たら分かる」

 ぶすっとした表情で言ったナーシャに、僕は仕方なく説明してあげることにした。

「風で空気を圧縮して、そこに高電圧を加えて電離してプラズマ化させてから刃を放って、そしたら対象との電位差でアーク放電が起きるから、それで触れた部分を溶融、脆化したところを風の力で押し裂いて行くって感じの魔術かな」

「……ごめん、何を言っているのか分からない」

 まぁ、だよね。僕も最初は良く分からなかった。というか、現代の魔術はこっちの魔術と比べて知識が必要なものが多い。何の知識かと言えば、科学的な知識だ。お陰で、僕は少し賢くなったような気がする。

「これでも、割と大雑把な説明なんだけどね」

 形成した風の刃の内部を持続的に導電するようにしたりとか、プラズマを収束させやすくする為に刃の周囲を冷却するとか、やらなきゃいけないことは色々ある。

「……私には、使えそうにない?」

「いや? 僕だって、知識が殆ど無い状態から使えるようになってるから、君にも出来るとは思うよ。その為には、勉強が必要だけどね」

 まぁ、僕の場合は全知全能さんに効率的に教わって出来るようになったから結構ズルいんだけど。でも、別にただ魔術を使うだけならそこら辺の知識を完璧に理解する必要までは無い。ある程度でも、使うだけは出来る。やっぱり、知識がちゃんと必要になるのは魔術を作る側の存在だろう。

「じゃあ……暇な時にでも、教えて欲しい」

「うん。暇な時にね」

 科学知識を教え込める程暇な時、来るかなぁ。まぁ、別に僕って結構暇か。

「なぁ、お前って意外と頭良いのか?」

「意外とって失礼だね。いや、別に頭良くは無いけどさ」

 この世界基準だと分からないけど、地球基準で言えば僕は全く頭が良い部類には入らないだろう。

「ただ、教育は……いや、何でもないや」

 何も知らない田舎者って設定があるのを忘れてた。学校でそれなりの教育を受けてるなんて話をしたら、不自然になってしまうだろう。

「幾らになっか、楽しみだなぁ……なぁ、後で飲もうぜ! 祝勝会だ!」

「それより先に、歓迎会じゃないかい? そうだ。そもそも、治はパーティに入るってことで良いのかな?」

「あ、うん。入れてくれるなら、喜んで入るよ」

「よっしゃ、なら祝勝会だな! あ、歓迎会だったか? ま、ひっくるめて飲もうぜ!」

 楽し気に叫ぶウィーに、僕は未成年であると言い出せなかった。

「ウィーって、幾つなの?」

「ん、おれ? 15だけど、どうした?」

 首を傾げると同時に、ぴょこりと獣のような耳が動く。ウィーって、何の獣人なんだろう。

「二人は?」

「16だ」

「15」

 年下ばっかりだった……まぁ、それは良いんだけどさ。

「みんなは、その歳でお酒呑めるんだね」

「そりゃ、酒なんていつでも飲めるだろ?」

 飲めはするかもだけど、そうじゃないよ。

「僕の故郷だと、未成年は……あー、20歳になるまではお酒は飲めない決まりなんだ」

「えー、何でだよ。勿体なくね?」

「健康に悪いからね」

「健康なんて気にして冒険者やってられっかよ!」

 まぁ、君はそうかも知れないけどさ。

「兎に角、僕はお酒は飲まないからね」

「えーっ!?」

 本当はウィーにも飲んでほしくないけど、僕の故郷のルールを押し付けるのは良くないだろう。

「飲もうぜぇ、治~っ!」

「ちょ、ちょっと……!」

 肩にもたれ掛かって来たウィーに、僕は童貞丸出しの反応を返してしまった。ウィーは結構露出が激しいから、ここまで近付かれると目に毒だ。

「飲まないったら、飲まないからねっ!」

「そう言わずによぉ、気分良いぜ~っ!?」

 にやりと笑みを浮かべながら表情を伺おうとしてくるウィーから僕は赤くなっている顔を逸らし、日の進む空を見上げた。
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