ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

文字の大きさ
94 / 189

全知全能と神樹より

しおりを挟む
 何故、言葉が通じているのか。彼らの問いに戻すならば、何故、彼らの言葉を知っているのか。

「僕が、この言葉を……言語を使えるのは、生まれ育った故郷の言葉だからだ」

「故郷? それは、さっき言っていた遠く離れた場所か?」

「そうだよ。ここからじゃ、普通なら辿り着けないところにあるんだ」

「……だというならば、お前はどうやってここまで来たのだ」

 男は槍を構えたまま、僕にそう問いかけた。

「僕は……そういう、特別な力を持ってるんだ。僕以外に、僕の故郷から来る人は居ないよ。僕が望まない限りは」

「ッ、お前は……何なんだ?」

 似て非なる姿の存在。その正体に興味を持ち、警戒するのは当然のことだろう。僕も、同じように彼らのことが気になっているからだ。

「僕は、人間だ。地球って星で生まれた人間。君達は、何なの?」

「我らはさっきも言った通りだ。神樹の使徒。神樹によって生まれ、神樹と共にある」

 神樹が彼らにとってとても重要な宗教的な象徴だと言うことは分かった。だけど、僕が聞きたかったのは既に知っている話じゃない。

「その……君達はどういう文化を持ってて、そういう知恵とか知識とか、言葉とかはどうやって身に着けたのかな?」

「我らは神樹様より生まれた時から知恵もまた授けられている。言葉も同じだ」

 ん……?

「それは、その、比喩的な話ではなく?」

「? そのままだ。我らはそもそも神樹様によって生み出された存在だからな」

「えーっと……?」

 神樹様が見守って下さるお陰で生きられてます、みたいな話じゃなくて……マジで神樹様から生まれてるの?

「この耳も神樹様の声を聞く為のものだ。お前は丸い耳をしているからな、それで我らとは違うと一目で分かったのだ」

「肌も葉一つ無いしな。ツルツルだ!」

「葉?」

 愉快気に口を挟んだ誰かの言葉に僕は眉を顰め、彼らの体を良く観察した。すると、葉と木の皮で作られていた服のように見えたそれは、服では無く彼らの体から直に生えているものであることが分かった。

「……木人」

 木の人間。単純にそれを縮めて、僕は彼らをそう呼んだ。今思えば、僅かに緑がかった白い肌も植物を思わせるものに見える。そうか。

「ほう、光栄な呼び名だな。神樹様の一部であることを感じられて素晴らしい」

 男が嬉しそうににやりと笑うのを見ながらも、僕は頭の中で思考を回していた。

「……良かったら、君達の神樹様のところまで案内してくれないかな?」

「ッ、やはり我らの神樹様を狙って……」

 男が笑みを消して再び警戒を強めるのを見て、僕は慌てて手を振った。

「違うって。心配なら、そうして槍を突き付けたままでも構わないからさ」

「……私では判断しかねる。神樹様に直接尋ねてくるから待っていろ」

「分かった。ありがとね」

 別に、無言で行ったって良いには良いんだけど、折角の人型種族と関係を悪くすると言うのもつまらない話だ。出来るなら、仲良くしておきたい。

 男が去った後、気まずい沈黙がその場を支配する。僕は周囲をきょろきょろと見て、一人ずつ木人を観察していく。

「動くなよ」

「はいはい、分かってるって」

 僕は動きを止めて、声を発した女の方をじっと見た。気の強そうな顔をしている。

「ッ、じろじろと見るなぁ!」

「だって、動けないからしょうがないじゃん」

「き、貴様なぁ……!」

 僕は遠慮なくじろじろと槍を持った女の木人を観察した。確かに、肌を木の皮が覆っていたり、葉っぱが生えていたりする。

「凄い、葉っぱってそんな感じで生えてるんだ」

「セクハラだぞッ!?」

 失礼だなぁ。僕は生物学的な知見を得る為に観察してるだけなのに。……ていうか、セクハラって言った今? 日本語以外も使えるってことか?


「――――なにー? なんか変なのが来たって聞いたんだけどー?」


 考え込んでいる僕の前に現れたのは、同じ木人の女だった。その緑色の髪はぼさついており、どこかガサツな印象を受けるが、彼らと違うのはその手に木製の杖を持っていることだった。

「賢者様ッ! 来て下さったのですかっ! お願いします、このセクハラ男をどうにかして下さいッ!」

「へぇ、それ? それが例、の……」

 気の強そうな女の言葉に、杖の女は僕の方を見る。が、その途中で言葉を紡げなくなり、一歩ずつ、ゆっくりと近付いて来た。

「あ、あな……っ、あなた、は……!」

「う、うん。なに?」

 杖の女は僕を見て、何かに気付いたように目を見開いていた。

「まさか、あなたは……ッ! 造物主様、ではございませんか?」

「ん……?」

 あれ、おかしいな。何でバレたんだろう。

「うーん……気のせいじゃないかな」

 誤魔化しの言葉を口にするも、杖の女の顔にはやはり確信が浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」 勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。 彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。 戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。 だが死の淵で、スキルは進化する。 《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。 そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、 《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。 仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。 努力の記録が奇跡を生み、やがて―― 勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

処理中です...