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全知全能と琥珀色
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スイは僕の言葉に硬直した後、難しそうな顔をした。
「……私達からの命令権は無い、ってことよね?」
「うん、命令権は無いね。ただ、魂は無いけど知能はあるから、合理的に判断することは出来るよ」
「そう。それなら良かったわ……智慧の神は、神樹様のように私達よりも上の存在でなければいけないわ。私達の使える道具になったら、きっと良くない未来になる」
「うん、僕もそうかも知れないって思って」
僕が考えた出した答えに、スイは直ぐに辿り着いた。やっぱり、人間というのは損知れない欲望を隠し持っているものだ。本人ですら気付かなくても、それに際限は無い。だから、僕のように最初から全てを手に入れているか……野望に辿り着く可能性を持たないことが、欲望に溺れない為に大事なことだ。
「君なら、任せても良いかもって思うけどね」
それでも、自制出来る人間というのはやっぱり居る筈だ。野望を見ても、欲望を抱いても、理性で抑え付けられる賢い人なら、大きな力を持っても大丈夫だと思う。
「いや、良いわよ。無駄に悩みたくないもの」
「そう? まぁ、そうかもね」
スイの言葉に、僕は賛同した。全知全能の力だってそうである。これは、僕の遊び道具にして悩みの種でもあるから。
「……イシは、この村? で一番偉いの? その、ソラを除いたら」
「里で一番偉いのは、一応は里長よ。だけど、状況によって一番偉い人間は変わるわ。里のことで一番偉いのは里長だし、狩りのことで一番偉いのは戦士長、魔術のことで一番偉いのは私……ってことになるけど、私が話を纏めることは多いわね」
「実質的にトップが居ないってこと? それって、何も問題が起きないの?」
「自分でも言ってたじゃない。一番偉いのは、神樹様よ。そして、私達は離れた所に居ても神樹様の声を聞ける耳を持ってるし……問題は無いわ」
そうか。ていうことは、こっちの世界の宗教みたいに神の声を聞ける人間が実質的な神のような指導者になるってことにもならないんだね。多分、ソラと一番密接に関わってるのはスイだけど、それで偉いってことにはならないんだろう。
「あ、料理が来たわね」
木製の皿に乗せられてやってきたそれは、シンプルにあの鳥を焼いて香草か何かを盛りつけたものだった。同時に、木のコップで琥珀色の液体が差し出される。
「どうぞ。枝食み焼きに、神樹様の雫です」
「おぉ……凄い、美味しそう」
シンプルに料理の品目を告げて言った木人さんに小さく礼をして、僕は琥珀色の美しい液体が並々と注がれた木のコップを手に取り、気付く。
「これ、どうやって加工してるの? 凄い、表面が滑らかだけど」
「魔術ね」
あ、はい。ですよね。
「じゃあ、その……いただきます」
喉が渇いていた僕は先ず神樹様の雫とかいう、明らかに樹液を使っているであろう飲み物に口を付けた。
「んッ!!?」
美味い。甘い。うまい、美味い? いや、それどころじゃない。これは、なんだこれ。いや、なんだこれ。
「な、な……」
ごくりと更に飲む。正に甘露。上質な甘みが口の中に広がり、しかしくどくは無く寧ろあっさりとしており、爽やかで意外とパンチの効いた味だ。飲み終えると、甘い香りが鼻からすーっと抜けていった。
「美味しい……!」
「ふふっ、でしょう? 治の世界の飲み物よりも美味しいんじゃない?」
確かに、ここまでの感動は無いかも知れない。僕が動揺混じりに感動していると、胸が熱くなるような感覚が込み上げて来た。それに、少しだけ頭がくらっとするような感じがする。どちらも嫌な感じではなく、寧ろ心地良かったが、僕は少し不安になった。
「これは……」
――――神樹の樹液を発酵させて酒とし、果実酒と混ぜたものです。アルコール度数は33%。身体に悪影響を及ぼす可能性は高いですが……
「酒じゃんか!?」
僕はコップを机に置き、何食わぬ顔で揺れている琥珀色の液体を睨み付けた。
「大丈夫よ。酔っちゃたら、私が後で抜いてあげるから」
「あ、アルコールをだよね……?」
ていうか、それで肉体に悪影響とか無いのかな? 大丈夫なのかな? お酒は飲まないって固く誓ってたのに……いや、でもここで飲めませんって断るのも気まずいし、それにこんなに美味しい飲み物、飲まずに帰ったらユモンに気絶するまで殴られそうだ。
「……よし」
僕はコップを手に取り、ごくりと飲み込んだ。それと同時に、喉元を過ぎ去る中でアルコールは消え失せていく。ミッション完了だ。これなら、一応は合法的にお酒を呑める。少なくとも、僕の中では。
「あ、あれ……?」
だけど、さっきと似たような感覚が体に広がって行った。さっきとは少し違うって言うか、マシになってるって言うか、そんな気はするけど……いや、違う。そうか、これは。
「ふふ、気付いた? 治にどれくらい意味があるのか分からないけれど、飲むと魔力が増えるのよ。その様子だと、ちゃんと意味はありそうね」
神樹の樹液、永続バフアイテムだった……!?
「そういや、そっか。神樹を食べた奴は強くなるみたいな話だったもんね」
「そうよ。流石に、枝や根を食べた時ほどは力も得られないけどね。それに、飲みやすくする為に色々してるから、樹液をそのまま飲むよりも効果は落ちてるし」
まぁ、気持ち魔力が増えるかなって感じかな? 魔力がそのまま増えるって言うよりは、チャクラに好影響が及んでるって感じがするけど。
「ていうか、こっちも食べなさいよ」
「あ、ごめん。そうだったね」
僕は頷き、枝食みの肉を食べた。こっちは別に普通だった。
「……私達からの命令権は無い、ってことよね?」
「うん、命令権は無いね。ただ、魂は無いけど知能はあるから、合理的に判断することは出来るよ」
「そう。それなら良かったわ……智慧の神は、神樹様のように私達よりも上の存在でなければいけないわ。私達の使える道具になったら、きっと良くない未来になる」
「うん、僕もそうかも知れないって思って」
僕が考えた出した答えに、スイは直ぐに辿り着いた。やっぱり、人間というのは損知れない欲望を隠し持っているものだ。本人ですら気付かなくても、それに際限は無い。だから、僕のように最初から全てを手に入れているか……野望に辿り着く可能性を持たないことが、欲望に溺れない為に大事なことだ。
「君なら、任せても良いかもって思うけどね」
それでも、自制出来る人間というのはやっぱり居る筈だ。野望を見ても、欲望を抱いても、理性で抑え付けられる賢い人なら、大きな力を持っても大丈夫だと思う。
「いや、良いわよ。無駄に悩みたくないもの」
「そう? まぁ、そうかもね」
スイの言葉に、僕は賛同した。全知全能の力だってそうである。これは、僕の遊び道具にして悩みの種でもあるから。
「……イシは、この村? で一番偉いの? その、ソラを除いたら」
「里で一番偉いのは、一応は里長よ。だけど、状況によって一番偉い人間は変わるわ。里のことで一番偉いのは里長だし、狩りのことで一番偉いのは戦士長、魔術のことで一番偉いのは私……ってことになるけど、私が話を纏めることは多いわね」
「実質的にトップが居ないってこと? それって、何も問題が起きないの?」
「自分でも言ってたじゃない。一番偉いのは、神樹様よ。そして、私達は離れた所に居ても神樹様の声を聞ける耳を持ってるし……問題は無いわ」
そうか。ていうことは、こっちの世界の宗教みたいに神の声を聞ける人間が実質的な神のような指導者になるってことにもならないんだね。多分、ソラと一番密接に関わってるのはスイだけど、それで偉いってことにはならないんだろう。
「あ、料理が来たわね」
木製の皿に乗せられてやってきたそれは、シンプルにあの鳥を焼いて香草か何かを盛りつけたものだった。同時に、木のコップで琥珀色の液体が差し出される。
「どうぞ。枝食み焼きに、神樹様の雫です」
「おぉ……凄い、美味しそう」
シンプルに料理の品目を告げて言った木人さんに小さく礼をして、僕は琥珀色の美しい液体が並々と注がれた木のコップを手に取り、気付く。
「これ、どうやって加工してるの? 凄い、表面が滑らかだけど」
「魔術ね」
あ、はい。ですよね。
「じゃあ、その……いただきます」
喉が渇いていた僕は先ず神樹様の雫とかいう、明らかに樹液を使っているであろう飲み物に口を付けた。
「んッ!!?」
美味い。甘い。うまい、美味い? いや、それどころじゃない。これは、なんだこれ。いや、なんだこれ。
「な、な……」
ごくりと更に飲む。正に甘露。上質な甘みが口の中に広がり、しかしくどくは無く寧ろあっさりとしており、爽やかで意外とパンチの効いた味だ。飲み終えると、甘い香りが鼻からすーっと抜けていった。
「美味しい……!」
「ふふっ、でしょう? 治の世界の飲み物よりも美味しいんじゃない?」
確かに、ここまでの感動は無いかも知れない。僕が動揺混じりに感動していると、胸が熱くなるような感覚が込み上げて来た。それに、少しだけ頭がくらっとするような感じがする。どちらも嫌な感じではなく、寧ろ心地良かったが、僕は少し不安になった。
「これは……」
――――神樹の樹液を発酵させて酒とし、果実酒と混ぜたものです。アルコール度数は33%。身体に悪影響を及ぼす可能性は高いですが……
「酒じゃんか!?」
僕はコップを机に置き、何食わぬ顔で揺れている琥珀色の液体を睨み付けた。
「大丈夫よ。酔っちゃたら、私が後で抜いてあげるから」
「あ、アルコールをだよね……?」
ていうか、それで肉体に悪影響とか無いのかな? 大丈夫なのかな? お酒は飲まないって固く誓ってたのに……いや、でもここで飲めませんって断るのも気まずいし、それにこんなに美味しい飲み物、飲まずに帰ったらユモンに気絶するまで殴られそうだ。
「……よし」
僕はコップを手に取り、ごくりと飲み込んだ。それと同時に、喉元を過ぎ去る中でアルコールは消え失せていく。ミッション完了だ。これなら、一応は合法的にお酒を呑める。少なくとも、僕の中では。
「あ、あれ……?」
だけど、さっきと似たような感覚が体に広がって行った。さっきとは少し違うって言うか、マシになってるって言うか、そんな気はするけど……いや、違う。そうか、これは。
「ふふ、気付いた? 治にどれくらい意味があるのか分からないけれど、飲むと魔力が増えるのよ。その様子だと、ちゃんと意味はありそうね」
神樹の樹液、永続バフアイテムだった……!?
「そういや、そっか。神樹を食べた奴は強くなるみたいな話だったもんね」
「そうよ。流石に、枝や根を食べた時ほどは力も得られないけどね。それに、飲みやすくする為に色々してるから、樹液をそのまま飲むよりも効果は落ちてるし」
まぁ、気持ち魔力が増えるかなって感じかな? 魔力がそのまま増えるって言うよりは、チャクラに好影響が及んでるって感じがするけど。
「ていうか、こっちも食べなさいよ」
「あ、ごめん。そうだったね」
僕は頷き、枝食みの肉を食べた。こっちは別に普通だった。
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