ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と尊きモノ

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 一通りの説明を終えた御岳さんに、僕らはただ義憤のようなものを抱いていた。そのクソみたいな親父さんが憎らしくて、その犠牲者である光ちゃんが可哀想で仕方ない。きっと、僕らが助けないといけない。そんな思いで心が一杯だった。

「……気持ちは凄く嬉しいです。だけど、実は……その、私は、ずるい体質なんです」

「ずるい体質、って?」

 光ちゃんは身を小さくして、その身から僅かに光を溢れ出させた。御岳さんは目を細め、少し視線を逸らした。

「この、光の妖精の……というか、妖精の性質なんです。妖精を見ると、その言葉を聞くと、生き物は妖精を尊重してしまうんです。無意識に、ですけど」

「尊重してしまうって……」

「自分の意思だと勘違いしたまま、妖精の言うことを聞いてしまったり、妖精の為に行動してしまうんです。私は半妖精というか、人と混ざっているので本当の妖精くらいの力がある訳じゃないんですけど……それでも、ちょっとはあるので」

「……なるほど」

 敵を味方に出来るくらい強力じゃないって訳だね。だから、あそこの廃工場で戦っていたのも止められやしなかったんだろう。

「自分のことを考えて、自分の意思を強く持ってくれたら……その、妖精の力の影響からは外れると思います」

 それを聞いた僕は、自分の中で意思を強く持とうと考えてみたけど、それが自分の考えなのか、光ちゃんを尊重している考えなのかは判断が付かない。結構、恐ろしい力な気がする。

「やっぱり、良く考えてもその父親は許せないし、絶対に貴方のことは助けるわ! 貴方を尊重するとかじゃなくて、私の心がそう思ってるから」

 そう、内心で混乱していた僕を前に紫苑ちゃんは毅然と言い放った。

「まぁ、そもそも意志が強い奴には効かねェしな。あんまり気にしなくても良いと思うぜ」

「それは茜の意志が強いからだよ……私は慣れるまで結構かかったもん」

「そうか? そこのガキも多分初めから効いてなかったと思うぜ」

 茜さんの言葉に、やっぱり僕には効いてたんだろうと直感した。だけど、話の内容の酷さからして、どっちにしても助けるという結論は変わらなかっただろうと思う。

「……」

 全知全能に頼って効かないようにしようかとも思ったけど、それじゃ自分の意思の弱さを認めて、諦めているのと同じだ。僕自身の成長の為を考えるなら、他ならない僕の意思で彼女を乗り越えるべきな筈だ。

「僕も、助けたいと思う」

 きっと、これは本心な筈だ。

「良し、決まりね。イカダチも来てくれるわよね!?」

「来るっつーか、まぁ、治が行くならオレ様も行くぜ」

「ていうか、君は食らってないの? その、妖精の力」

「食らう訳ねェだろ、オメェ」

 目を細めて言うユモンに、僕は納得したように頷いた。まぁ、悪魔だもんね。それに、自我も強いもんね。食らう訳無いよね。

「あの、ちょっと良いですか? そちらの二人は多分紫苑ちゃんの執事さんだと思うんですけど、そちらの方って、どういう方なんですか?」

 瑞樹さんがユモンの方を見て言うと、ユモンは僕の方を見た。

「まぁ、僕の用心棒みたいなもんですね」

「要らねぇだろテメェ」

 答えた僕に、茜さんがノータイムで突っ込んだ。何でだよ、要るでしょ。

「取り敢えず、信頼は出来るから心配はしなくても良いよ」

「分かりました。すみません、一応、聞いておきたくて……」

「全然大丈夫ですよ。不安になる気持ちも分かりますので」

「治、お前そんな気持ち悪い敬語使えるんだな」

 おい、ユモン。気持ち悪い敬語ってなんだよ。ていうか、君の前でも敬語自体は結構使って……るよね。うん、そこそこは使ってる筈だ。

「……その、私の為に……すみません。それと、ありがとうございます……」

「あはは、大丈夫だよ。僕と紫苑ちゃんに任せといてよ」

 僕が言うと、紫苑ちゃんも力強く頷いてくれた。

「そうよ、任せときなさい。ま、貴方に何が出来るのか私は良く知らないんだけど?」

「……イカダチを使える」

「おい、テメェ。使えるって何だよ。オレ様はお前の従者じゃねェんだぞ」

「私、貴方に出来ることを聞いたつもりだったんだけど?」

 仕方ないでしょ。言えないじゃん、本当のことなんてさ。

「まぁ、アレだよ。そこそこ魔術が使えるよ。紫苑ちゃん程じゃないと思うし、茜さんみたいに戦闘慣れもしてないけど。ただ、割と色んな術を覚えてるかな」

 特に趣向を決めずに、その時に使いたくなった魔術を覚えてるから結構バリエーションに富んでる筈だ。僕の魔術のラインナップはね。

「さて、話が纏まったところで……そろそろ、敵の話とでも行くか」

 御岳さんの言葉に僕達は頷いた。助けるということは決まった。後は、敵の具体的な戦力だとか、やり方を知る時間だろう。
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